表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/260

14.ハーブティーとガヴァネスのように 


 そっと近寄ると、ソファで項垂れているのは、アレクサンドルだと解る。


(何かお悩みなのかしら?)


 システィアーナから見て奥の方から、ファヴィアンが現れて、アレクサンドルに何か言うが、頭を振るだけで、顔を上げる風はない。


 見てはいけないものを見たような気がして、そっと離れようとしたけれど、ガラス張りのサンルームからは、当然遮る物のない屋上に立っているシスティアーナは丸見えである。


「システィアーナ?」


 アレクサンドルが気づいて呼び止めると、ファヴィアンが素早くガラス戸を開けて、中へと視線で促す。


 こうなると、知らぬ振りも出来ず、お邪魔しますのひと言で、中に入るしかない。


 ファヴィアンは、探していたという割に何も話さない。

 或いは、個人的な内容で、王太子の前で話しにくい内容なのかもしれない。


 一人掛けソファに座り直し、深く息を吐き出し沈み込むアレクサンドル。


「あの、お加減が良くないのですか?」

「ああ、心配ないよ。少し、寝不足なだけだから」

「心配しますわ。寝不足は、あらゆる不調を呼び起こしますもの。お忙しいのですか?」


 茶の用意をしようとしていたファヴィアンを制し、システィアーナが用意を始める。


「忙しいと言えば忙しいけど、まあ、いつもの通りだよ。それよりも、横になるまで資料を読み込むからかな、頭がどこか冴えて眠れなくてね」

「それは良くないですわ」


 カモミールとりんごの皮のドライフルーツにレモンバームをブレンドし、お湯を注いでカップには蜂蜜と共に淹れる。

 お茶に直接ではなく、テーブルに添えられた水差しの下のペーパークロスに、ラベンダーの香料を数滴落として香りを立たせる。


「さあ、これを飲んだら、少し休んでください」


 まるで、聞き分けのない子供に諭す女家庭教師(ガヴァネス)のように、目力をこめて王太子アレクサンドルに命じるシスティアーナは、いつもより強気だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ