表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/260

2.お迎え   



 さあ、大慌てである。システィアーナではなく、使用人達が。


 王家の人間を迎える準備と、システィアーナを王子と共に外に出すに相応しい身なりにさせるためだ。


 風呂を用意するのは間に合わない。せめて香油で拭い、下着からすべて着替えさせ、髪を整える。


 茶会や夜会ではなく街歩きをするのが目的なので、ドレスではなく、ミモレ丈のワンピースに編み上げブーツ、白い肌が日に焼けて傷まないないよう鐔のある帽子。

 手首までしかない柔らかく薄い手袋に、まだ風は冷たいので風よけのウールストール。


 装飾品はイヤリングと左手首にローズクォーツを繋げた華奢なブレスレッド。ブローチはなくストール止めもローズクォーツ。ストールを羽織るので、首飾りはなし。

 特徴的な、僅かに橙色が混じったピンク色──パパラチアサファイアの瞳は、システィアーナだと誰が見ても判るので、薄紅の髪を隠す髪型はしなかったし、それだけでも、宝飾品を飾るより華やかだった。




「僕とのお出かけに、そんなに可愛くしてくれて嬉しいよ。今日一日、幸せな気分でいられそうだ」


 艶のあるレモンイエローの髪をサラリと揺らして、デュバルディオが微笑む。

 システィアーナの指先を手に取り、跪いて口づける。


「デュ、デュオ。そんな⋯⋯あの」


 システィアーナを、薄紅の姫君だとか美しいと称賛する声はよく聞かれるが、それは父ロイエルドや祖父への忖度もあると思っているし、何より可愛いと言われたのは、幼少の頃を除いて、殆どない。

 可愛いと言われることに免疫がなく、動揺してしまう。


(カルルデュワ様に同じ挨拶をされた時は手を引き戻したくなったのに、デュオは平気だわ)


 それが、特に意識してないからなのか、デュオだからなのかはわからない。


「今日は、僕に任せてね」


 馬車に乗るのもデュオの手を借り、侍女メリアも同様に乗り込むと、デュオは玄関ホールへ向き直り、


「それでは、お姫さまはお預かりします。初めてだし、疲れさせちゃうのもなんだから、ちゃんと陽が落ちる前に無事にお返ししますのでご安心ください。侯爵夫人(レディ)エルティーネ」


慇懃に礼をとり、自身も馬車に乗り込む。


 流されて隣に座ってしまったエルネストとは違い、ちゃんと進行方向とは逆の、システィアーナの向かいに着席しているし、足や手が触れたりもしない。


「王都の城下町を歩くのは初めて?」

「ええ。ミアの視察に付き合うことはあるけれど、目的地まで馬車で往復するだけだったの」

「そう。じゃ、楽しみだね」


 言って微笑むデュオには、裏があるようにはみえず、腹をくくって、楽しむことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ