表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/260

25.謝罪   



 陽を背に、逆光に立つ国王エスタヴィオ。


 まだ冷たい風に靡く髪は黄金色(こがねいろ)

 淡い緑味が差すヘーゼルの瞳は、感情を見せず、ただこちらを睥睨する。


 振り返り、すぐに草地に膝がつくギリギリまで腰を落としたカーテシーのまま、頭を下げ続けるシスティアーナ。

 その側で、片手を胸に、利き腕を地に拳をついて上半身を支え(ひざまず)くエルネスト。


 トレーを持ったまま蒼白になっている王宮奥殿の女官。

 地べたに座り込み、カタカタ震えているリングバルドの侍女。


 最後に、ドレスに赤茶の染みを広げて真っ赤な顔で柳眉を逆立てるマリアンナ。



 エスタヴィオはある程度の流れは想像がついた。


「陛下⋯⋯」


 味方が現れたと思ったのか、頰を染めて嬉しげに一歩踏み出すマリアンナ。


 マリアンナの声を耳にした途端、リングバルドの侍女は地に額をこすりつけて謝罪を始めた。


「も、ももも、申し訳ありません。私めの失態でこのようなことに⋯⋯!!」


 血の気の失せた、今にも倒れそうな顔色で、ベラベラと喋り始める。


 実際、侍女は、生きた心地がしなかった。

 マリアンナの指示通りに事を運べなかった上に、マリアンナ本人に茶をかけてしまった。

 わざとではないが、それで笑って許すマリアンナではない。


 どうしてこうなってしまったのか⋯⋯


「決して、決して計ってのことではなく、偶然といいますが、不幸な事故と言いますか⋯⋯」

「発言を許したか?」

「は?」


 この国において一番身分の高い国王の前で、許可なく、当国の貴族籍でもない侍女が国王に直接言葉をかける。

 不敬であった。


「何をしているのか、とは、そこの我が国の侯爵令嬢と、リングバルドの王女に問うたのだ」


 侍女であるお前ではない──とは発せられなかったが、隣国であろうとも王族に仕える侍女だ。己の失態に気がついて、いっそ気を失えたらいいのにと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ