19.王子達の労いと誘い
ユーヴェルフィオとエルネストが、目を合わせ不安を感じているのを置き去りに、アレクサンドルやデュバルディオの話は続いていく。
「いつも、ミアやメルティを助けてくれてありがとう。システィアーナ嬢がいるから、僕達も安心して妹達に公務も任せられるし、システィアーナ嬢という負けられない存在があるから、ユーフェミアも王女として頑張れるところはあると思う」
「そうそう。同じ歳の侯爵令嬢があそこまで頑張れるのに、王女の自分が、ってね」
「姉妹のように育ち、学友でもありながら、好敵手のような存在でもあるんだろう。これからも、ユーフェミア達の力になってあげてくれると僕達も嬉しいし、何より父上が感謝しているんだ」
「そんな、勿体ないお言葉ですわ」
システィアーナの前にアレクサンドルが跪き、ディオと逆の手の指を掬い取り軽く唇で触れる。
「陛下の御言葉だよ。
『ハルヴァルヴィア侯爵令嬢でありドゥウェルヴィア公爵名代でもあるシスティアーナ嬢。昨年は色々とあったし大変だっただろうが、そろそろ気持ちの整理はついただろうか? 今年は卿にとってもよき年になって欲しいと思っている。まだまだ16歳の細身に重い役目を追わせて申し訳なく思っているが、既に卿なくしては回らない事業もあるほど。国政に深く関わる卿を従堂妹に持てて誇りに思う』
今日はゆっくり過ごして行って欲しい。よければ、晩餐にも付き合って貰えると嬉しいな。勿論、ファヴィアン、ユーヴェルフィオ、エルネストも。(年功順)
ロイエルド、タバルフィオ、セルディオには事前に許可は取ってあるよ」
王家からの誘い──しかも当主に事前に外泊許可を取る根回し済みとあっては、断れないだろう。
ファヴィアン、ユーヴェルフィオは黙って頷き、システィアーナは立ち上がってドレスを摘まんでカーテシーで応える。
「謹んで、お受けいたします」
エルネストも立ち上がり、同じ答えを返した。
カロラインは感心してシスティアーナを見ていた。
同年代の青年少女とは思えないやりとりに、すっかり王太子や第三王子への挨拶を忘れている。
幼少期から祖父と共に王宮へ出入りし、成長期に王女と共に学び、デビュタント以降、異国の客人に応対するようにもなった、言ってみれば王家慣れしているシスティアーナと、一介の侯爵令嬢の違いだ。
その後、ファヴィアンやエルネストにも側近としての働きに労いの言葉をかけ、ユーヴェルフィオに早く王宮勤めをする覚悟を持つように促しておいて、アレクサンドルとデュバルディオは別のテーブルへと移動していった。




