18.王家の白薔薇
システィアーナの横に跪いていたデュバルディオは、柔らかく微笑んで立ち上がり、ジュストコールの内の隠しから王家の白薔薇の蕾を出して、システィアーナの右耳の後ろから髪に挿す。
「うん。僕の知る限り、シスほど女王の白薔薇が似合う人はいないね。兄上は見る目があるよ」
まだ硬い蕾は、濃いピンク色で、咲き開くとどんどん色は淡くなっていく。愛らしい多辯カップ咲きの白薔薇は、システィアーナによく合っていた。
約束を(一方的に)取り付けたディオは、
「今年最初の園遊会、楽しんで行って」
と微笑みかけ、白薔薇を差した右の、頰に軽く触れるか触れないかの口づけをして離れる。
兄上に交代するよと小さく囁き、すれ違いざまにアレクサンドルの肩を叩いてから、数歩離れた場所からこちらを見ている。
あんな事を見せられた後で、アレクサンドルでなくとも、やりづらいに違いない。
コホン
咳払いをして場の空気を変えてから軽く腰を折り、片腕を後ろ手に拳で腰に溜め、片腕を差し出して胸に添え、挨拶を始める。
「普段から親しくしているとは言え、レディに対し衆目の前で弟が失礼しました。本日は王家がホスト役ですから、何かあれば遠慮なくお申し付けください」
ディオと同じように、胸元に飾っていた七分咲きの女王の白薔薇を抜き取り、システィアーナの左側の髪に挿す。
「女王ブランカも、夜会に出る時や、異国の客人を迎える時は、こうして彼女のために生み出された白薔薇を飾ったそうだよ。君の、薄紅にも淡い黄金色にも艶めく髪に挿しても、薔薇も君も見劣りしないし、よく似合ってる。父上も君のために手折る事は構わないと言っていただいているから、今後も遠慮しないで受け取って欲しい」
──システィアーナのためになら、王家秘匿の薔薇を手折ってもいい
エルネストやユーヴェルフィオは、何か、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気になった。




