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14.夢見る美少女



 両親の言うには、グリニッズィア侯爵夫妻は、システィアーナを咎めたり不快に思うどころか、気遣い、心配していたという。



 オルギュストが公の場でシスティアーナを(ないがし)ろにしていたのは周知の事実であったし、彼女が13歳で諦めるまで、歩み寄る努力をしていたのも、高位貴族の多くが知っている事だ。


 冷たくあしらうオルギュストに必死に話しかけようとして努力していたのも、ちょっと見ればわかる事だし、オルギュストの好みに合わせようと、仕草や装いが迷走していたのも、よく知られていた。



 薄紅の姫君と呼ばれるようになる前は、小柄でとても愛らしい美少女であったから、珍しい色合いもあって、多くの貴族に注目されていたのだ。


 愛らしい少女が、剣術も馬術も得意なスラッとした美丈夫に冷たくあしらわれても後をついて歩き、機嫌をとろうと必死な姿は、憐れでもあり、懸命な姿に可愛らしさが際立って目を引いた。



 今の高位貴族の跡取り令嬢然とした、凛と背筋を伸ばしたシスティアーナが出来上がったのは、オルギュストに気に入られようと必死に努力して、学び、磨き、やがて諦めた結果なのだ。



 初めて会った時は、金に(けぶ)る髪と(はしばみ)の眼は、剣と馬で鍛えた身体にとても合っていて、絵本で見る王子様のように映った。


 恋心に成長する前に、淡い憧れのような気持ちは砕け散ったが、それでも、初めて会った時は、自分だけの王子様になってくれる人なのだと、父や母のように、睦まじい夫婦になれるのだと、夢見ていた。



 それを知る、学友として集められた歳の近い高位貴族の子女は、夢見る美少女の愛らしさを失わせた咎人として、オルギュストに好意を持てないでいる。


 


 高位貴族や王族に嫌悪されて、オルギュストの未来は明るくないものとなっているのに、当の本人は気がついていないのだろうか。


 それとも、承知の上で、それでもシスティアーナに添えないのだろうか。



 システィアーナは、グリニッズィア侯爵夫妻の不興を買わずに済んだと聞かされ、少しホッとした。





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