35.一言氷温
結局、さっさと帰りたい特使達とまだまだこの国に居たいマリアンナ、両者の意見を折半したのか、勝手に城を抜け出して公務を全うしなかった不良王女のために、数日だけ滞在を延ばす、という事に落ち着いたらしい。
使節団特使達は、申し訳なさそうに伝えに来たものである。
「僭越とは思いつつ、助言させていただいても?
次に王女殿下が使節団に参加する時は、上位貴族や王族の代表者(マリアンナ王女殿下を御せる者)を同行させてはいかがかしら?」
「他国の人事に口を出すのは越権行為だとは解っているけれど、君たちも大変だろう? マリアンナの従弟からの助言だと思って、国に帰ったら、上に提言してみて?」
ユーフェミアとデュバルディオが苦笑しながら、報告に来た特使に進言した。
「そうは言われましても、姫様を抑えられるのは、陛下か、父君王太子殿下と妃殿下、兄君のムンカイフェル殿下とユーンフェイル殿下くらいのものですよ」
「他の王子王女(叔父叔母)達や従兄弟君などの王族でもなかなか⋯⋯」
やはり、自国でもやりたい放題のようである。
「苦労するね。でもまあ、一応は奏上してみてもいいんじゃないの? 少なくとも、王太子一家を除くたいていの王族や上位貴族達も、時には持て余してるようだから、陛下に後押ししてくれるかもしれないよ?」
デュバルディオは、王太子の妹姫である母と共に、王に孫を見せに里帰りと称してリングバルド王国には時折行くので、ある程度はリングバルド王室の力関係を把握して居るのだろう。
「それと、訊いてみたかったんだけど、さすがに面と向かっては訊けなくてさぁ? 君達も、匂わせ程度でいいから訊かせてくれない?」
何をか。特使は身構える。
「マリアンナは僕より年上なのに、そろそろどこかに輿入れの話とかないの?」
アルメルティアがマリアンナを世話する間設えられた、公務用特設書斎の空気が凍る瞬間だった。




