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31.朝食は王族と一緒にラウンジで  



 温まるからと侍女の用意したワイン入りホットミルクが良かったのか、アレクサンドルの「おまじない」が効いたのか、疲れていたのか、船の揺れがよかったのか。

 システィアーナは朝までぐっすり眠った。


「うふふ、シスの寝顔を見られるなんて、今日はいいことありそうよ」


 珍しく先に起きたユーフェミアの機嫌が良さそうである。


 朝食は、船内ラウンジでのビュッフェスタイルだった。


 一般招待客は大食堂で食べるようだが、朝食は静かに摂りたいとのアレクサンドルの希望で、客室に運ぶか、特別ラウンジで他の客と同じ物をとるかを訊ねられ、この船を堪能するためのイベントなので、ラウンジでのビュッフェとなったのだ。


 朝食用のコース料理が暖めたトレーや鍋に用意されていて、食べられる量を順にとって、ソファセットに寛いで食べるのである。


 高級客船と謳うだけあって、ダンスや観劇の出来るホールがあり、ここはその劇場への招待客の待機用ラウンジである。

 沈み過ぎず、ほどよい硬さのソファと品のよいテーブル。


 アレクサンドル、フレック夫妻、デュバルディオとユーフェミア、エルネストとシスティアーナが、それぞれ好きな位置で食事を摂っていた。



 招待した訳ではないが一応賓客扱いのマリアンナ。今日は朝から不機嫌であった。


 イライラしてよく眠れなかったのもある。


 アレクサンドルの隣の特別室に泊まったのは悪くない。

 が、どことなく壁を感じるこの空気と、昨夜見たもの。


 こちらの顔色を見て気遣うカルルもアレクサンドルでない以上、美形を侍らせるのは気分がよかったが、気遣われていると意識するとなんとなく神経を逆なでする時があった。


 あの侯爵令嬢は、どこまでも邪魔な存在で気に入らないし、胸の奥に熱く渦を巻く昏い感情を湧きたたせるのだ。


 月明かりの(もと)で穏やかに話すアレクサンドルとシスティアーナ。

 マントを共有して暖をとり、ユーフェミアと同列の扱いで、就寝の挨拶と額に口づけを受けていたのを見た時には、殺気にも似た激昂する感情を抑えるのに必死だった。


 今すぐ飛び出して、お前なんかがアレクサンドル様の隣に立つなと罵り、髪や服を引いて振り回したくなるのを、アレクサンドルの前ではダメだ、ここは人目がある、と自分に言い聞かせていた。



「シスは、お肉やお魚よりお野菜を多く摂るのね」

「ええ。先にお野菜を多く摂っておけば、胃にもいいですし、お野菜はお肌をよくしますわ。それに、コースの順番にはちゃんと意味がありますのよ」


 王女と同じ歳で学友として招聘されたのだとか、アナファリテ第二王子妃とも知己だと言うが、所詮は侯爵令嬢ではないか。

 この国では、王族でなければ公爵位を賜れないのは知っている。

 高位貴族でも、王家に連なる血筋の者ではないではないか。


 マリアンナは、益々、システィアーナに対して悪感情を募らせていった。




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