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28.法界悋気   



 ──また、あの立場を(わきま)えない侯爵令嬢なのか


 気がつけばアレクサンドル殿下の側にいる、図々しいあの侯爵令嬢は何なのか。


 実際にはアレクサンドルの側に居るのではなく、ユーフェミアの公務に伴っているだけなのだが、マリアンナにとっては、いつアレクサンドルを見ても側にいる邪魔者であった。

 マリアンナの世話係と称して王宮との窓口になり、ユーフェミアと共に毎日顔を見せるのは、仕方のない事だ。

 マリアンナがアレクサンドルを見る事ができる時にはたいてい、ユーフェミアも公務でアレクサンドルの側にいる。

 必然、システィアーナも側にいる訳なのだが、マリアンナにとっては、友好国リングバルドの王太子息女である自分でさえ中々声をかけられず、思うように会えないのに、気がつけば側に当たり前のように立っている侯爵令嬢が気に食わなかった。


 アルカイックスマイルが基本でクールビューティーと謳われるアレクサンドルが、月明かりの(もと)穏やかな表情であの侯爵令嬢と話している。


 マリアンナは、薔薇色の唇が切れるほど噛み締め、爪で繊細なレース製の手袋の先に傷がつくほどきつく拳を握り締めた。


「姫さま、お風邪を召されます」


 侍女がラパンファー襟のマントを肩にかけるがその事に労いの言葉もなく、ただ甲板の二人を睨むように見つめていた。



「ティア。今日は大変だっただろう? もう休んだ方がいい。部屋まで送るよ」


 アレクサンドルが、冷えたシスティアーナの肩に自分のマントと温もりを分け、自然な流れで腰を引き寄せるようにして歩き出した。


 パーティーホールで踊ったばかりだからか特に意識することもなく、アレクサンドルに促されるまま、マントの礼を述べながら歩き出すシスティアーナ。


 自分でも理由は理解できなかったが見ていることを知られたくないマリアンナは、二人が船内に入る前にさっと会場への曲がり角まで下がる。


 王族として他人に見られる事に慣れているからか、気づいても知らぬふりをしているのか、アレクサンドルは角から半身で様子を覗うマリアンナを振り返ることもなく、システィアーナをマントの内側に隠すように、或いは何かから守るように、身を寄せたまま廊下を進んでいった。





法界悋気(りんき) ⋯⋯ 友達や同僚などの第三者、自分の憧れている有名人や芸能人が、誰かと恋愛中だったり結婚を発表したりした時に、漠然とジェラシーの心を抱くことを意味します

 ちょっと可哀想なタイトルですかね(^ ^;)

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