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24.襲撃者たちの要求  



 漁夫達が武装していたのは、誰でもいいからこの町の有権者と近しい貴族令嬢を人質に、賠償や生活の補償請求と交渉権のためで、恨みを晴らそうと傷つけるためではなかった。


 左腕を失った男は、生活が立ち行かなくなった頃に運悪く子供を病で亡くし、偶々(たまたま)ドゥウェルヴィア公爵の孫娘であると知ったために、急激に怒りがこみ上げてきて豹変してしまったものである。

 ユーフェミアの護衛騎士が応急手当をしているが、出血多量や腕を失った大きな負担から、町まで保たないかもしれなかった。


「公爵や領主に交渉すると言っても、何を請求してどう収めるつもりだったんだい?」


 デュオの言葉に、男の一人がぽつりぽつりと話すが、気を失った者を含め多くは口を閉ざした。


 聞いてはみるが、たいした具体案は持っておらず、食べていけない状況をどうにかして欲しい事、魚が島に戻ってくるよう、大型客船や貨物船の航路を、島の近くを避けて変更して欲しい事。

 そして、借金すら出来ない貧しさをどうにかして欲しい事など、ただ望みを挙げるだけなのだ。


「それで、お姫さまを人質にしたとして、この要求が通ると思ってたの?」


「⋯⋯やってみなくばわかるまい? 俺たちにはもう後がナインダ」

「王族が勝手にやって来トェ、シーファークを開港したためにィ、俺達島の民は生活が出来ないンダ、王を名乗るナラ、民を、民の生活を守れよ」


 言いたいことは解らないでもないが、襲撃計画も将来展望も杜撰(ずさん)過ぎる。

 行き当たりばったりのようにも見えた。


「彼女が何者かは判ってなかったんだろう?」

「港の商工会議所に会頭と一緒に出入りし、高台一の別荘を持つ、農園や牧場にも縁のある上位貴族の娘なら、人質としての価値は高いと思った」

「まさか、(かたき)の孫だとは思わなかったがな」


 行き当たりばったりでも、誰を人質に捕るかはちゃんと見ていたらしい。


「⋯⋯まあ、確かに、ぐうぜんだけど一番効果的な人選ではあるだろうが、計画に無理があるね」


 町としてはそう大きくないが、海外からの観光客も多く、貿易の拠点として発展しつつあるシーファークには、駐留の王国軍がおり、その一部は隣町の進水式とこの町の港の新大型客船披露パーティーの警護にかり出されている。

 その更に一部を引き連れて護衛騎士が戻ってきた。


 男達は鉄格子の填まった馬車に乗せられ、連行されていった。


 紋章を外しただけの立派な王家の馬車に乗り込み、ユーフェミア達とシスティアーナも、予定通り港へと向かう。


 今夜は、船上パーティーの後、そのまま船泊の予定である。



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