表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/260

12.ソニアリーナ



「お姉さま? 今日は随分とお早いお戻りですね」



 廊下を自室へ進むシスティアーナに、まだ10歳の妹ソニアリーナが駆け寄って来た。


 ──今日は随分とお早いお戻りですね


 勿論、嫌味ではない。それは理解している。

 いつもなら、夜会に参加した日は、まだ10歳のソニアリーナが眠った後の、日付が変わる頃の深夜に帰宅するのである。


 だが、オルギュストに恥をかかされたと神経が尖っていたので、多少イラッと来た。が、悪気はないのはわかっているので、堪える。



「ええ。ちょっと気分が優れなくてね。先にエルネストお兄さまに送っていただいたのよ」


「エル兄さまが!? どちらに?」


「もう夜だし、お父さまがいらっしゃらないので、女ばかりの邸には上がれないと、お帰りになられたわ」


「ええ~」



 おしゃまなソニアリーナは、キラキラ笑顔で優しく紳士的なエルネストが大好きなのである。憧れのお兄様と言うやつだ。


 ので、あからさまにガッカリした顔をする。



「家人が未婚の女性しかいないお家に、若い男性が上がり込むのは、礼儀としていけないことなのよ。それでも、一応、送っていただいた礼も兼ねて、お茶には誘ったのよ? サロンでメイドや執事がいる状態で、お茶を一杯くらいなら、親戚ですもの、くだらない噂にもならないかと思ったのだけれど、やはりエルネストお兄さまは(わきま)えてらっしゃるわ」

「クダラナイ噂?」

「⋯⋯⋯⋯」



 まだ10歳のソニアリーナに、なんと説明しようか、少し迷って、誤魔化さずちゃんと解くことにした。



「わたくしには婚約者がいるわ」


「⋯⋯オー? オーギュ、スト様ね?」


「そうよ。彼がそばに居ないのに、別の男性と仲良くしたら、悪い噂を立てられるのよ」


「どーして? エルお兄さまは、悪い人じゃないわ」

「そうね。でも、例えばよ? お父さまがお仕事でいない日に、別の男性がやって来て、お母さまのお部屋に来てお話をしたら、ど⋯⋯」

「ダメ! お母さまはお父さまとしか仲良くしちゃダメなの」


 小さな手で拳を作り、振り回して声を上げる小さな妹に苦笑して、頭を撫でる。


「ね? お母さまはただお話を聞いているだけで悪い事をしてなくても、周りの人は、ダメな事をしていると思うでしょう?」

「解った! 悪いのは、勝手に押しかけてきた男の人よ!」


「お父さまがいらっしゃらない今、エルネストお兄さまが(やしき)に入って、もう夜なのに私達とお茶をしたら、悪い事をしていると言われるのよ」

「エルお兄さまは悪くないわ! ⋯⋯夜で、お父さまがいないから、だめなのね?」

「そうよ。わかったら、もうお休みの時間でしょう」

「うん。もう寝ます。おやすみなさい、お姉さま」

「おやすみなさい、ソニア」



 可愛い妹の額に口付けて、後ろで見守っていたソニアリーナ付きの侍女に後を任せる。


 




 深夜に、ハルヴェルヴィア侯爵夫妻が帰宅した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ