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17.いざ、出発



 進水式組のアレクサンドル、フレック夫妻、マリアンナ王女とお供のカルルは、多くの騎士と従者を連れて隣町へ向かった。


 シーファーク視察組は、件の客船が到着するまで昨日練り歩いた海際の商店街ではなく、山裾付近の農場や牧場、農協などを視察に出ることにした。



「シス。目立たないために、護衛騎士はある程度離れて数人にしていると聞いた。フレック殿下の命で、今日は傍についていろと⋯⋯」

「まあ、エル従兄(にい)さまがご一緒してくださるなら、心強いですわ」


 商家の娘風のワンピースに身を包んだシスティアーナに、騎士見習いの隊服から徽章や武具を外した姿のエルネストが肘を差し出す。


 夜会などでエルネストのエスコートに慣れているシスティアーナは、自然に手を添えた。


「それじゃ、行こうか」


「待ってよ、エルネスト」


 歩き出したふたりに、背後から待ったをかける声。デュバルディオである。


「お前とシスは又従兄妹(またいとこ)だし、ちょっといいとこのお嬢さんとお付きの護衛兼従者に見えるからいいよ。

 でも、僕とミアでは、いかにも貴族のお忍び感が出過ぎて目立つ上に、気にして見たらすぐにバレるよ」


 だから、パートナーを交換しろという。


 久し振りにシスティアーナと話せると浮き立っていたが、ディオの言うことも解るし、王子の言葉には特別な理由もなしには逆らいづらい。


 顔には出さずに、パートナーを交換する。が、エルネストを知る者には明らかにがっかりした表情(かお)であった。


「それじゃ、行こう」


 昨日と同じく、ディオがシスティアーナの手を柔らかくしかし離さないようにしっかりと握り込んで、意気揚々歩き出した。


 夜会で、代理エスコートやダンスで手を添えることはあっても、ああして握った事など、システィアーナが他の令嬢よりも早めの社交デビューをして以来、淑女として扱わねばならず何年もない。


 羨ましいものを見る視線をふたりの後ろ姿にやるが気を取り直し、エルネストは柔和な目をユーフェミアに向けた。


「では、不肖ながら私めが本日のお相手をつとめさせていただきます。手をお取りくださいますか、姫君」

「喜んで。よろしくお願いしますわ、エルネスト」


 艶やかな金髪と光の加減で複雑に何色もの輝きを見せる神秘的な虹色の瞳(アースアイ)が、ユーフェミアの笑顔をより眩しく見せる。


(王家の姫君らしく堂々としていて、磨き込まれた宝石のようにとても綺麗な子だな)


 改めてそう思うが、内面から滲み出るシスティアーナの人の良さが、エルネストにとってはより美しく感じる。


 馬車を使わず、丘の中腹の山荘から林道を歩くのは、木漏れ日と木々を抜けてくる風が、とても心地よかった。




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