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4.薄紅の姫君と港町



 温暖な気候で、人々も明るく活気のある市場には、異国の特産品が多く扱われ、歩く人々も多様な人種がみられる。


 王宮にいるときのような豪奢なドレスではなく、大店の商家の娘のようなワンピースに身を包み、市場を見て歩く。


 生地も仕立てもよいものだが、これ見よがしな宝飾品は身につけていないので、下級貴族のお忍びか資産家のご令嬢くらいに見えているだろう。と、システィアーナは思っている。


 が、あまり見られないピンクゴールドの特徴のあるブロンドに、橙の混じった濃いピンクのパパラチアサファイアの瞳は目立つし、この町の貿易を盛り立て港を大きくした大恩ある公爵が、幼い頃から連れていた特徴のある美少女に、町の大人の殆どは気づいていて、敢えて知らない顔をしているのである。


 ハルヴァルヴィア侯爵領、ドゥウェルヴィア公爵領に次ぐ、システィアーナにとって安全な町でもある。


 異国の人間も多く歩いているが、彼女に危険を近寄らせないよう見守る目が、町中の至るところにあるのだ。

 護衛を連れていなくても、住民が護衛のようなもの。


 システィアーナはその事に気づいていないが、ユーフェミアやカルルは識っている。

 だから、護衛騎士も安心して距離を置いていられ、一応つかないという訳にはいかないが、咄嗟に対応できる距離を保って離れている。


「なるほどね」

「え? ディオさま?」


 町娘に扮しての視察なので、殿下をつけずに訊き返す。


「フレック兄上が、今回の視察に護衛騎士は必要最低限で足りると仰った意味が解ったよ」


 町までの道中には、デュバルディオの護衛騎士も、侯爵家の私設騎士も多くいたが、いざ市場に出る時には、ユーフェミア付きの女性騎士が数人と、男性騎士がふたり、距離を置いて警護しているのみなのだ。


「昔から、ここの人達は気がよくて、親切にしてくださるの。お祖父さまの事を覚えていらっしゃるのかもしれないわね」


 システィアーナは冗談半分だが事実である。



「お嬢さん、ルビーローズジャムのジュエルドリンクはいかがですか? この町の名物なんですよ」


 システィアーナの目の前に、透き通った濃いローズカラーの液体に、一口サイズの果物がたくさん浮かべられたガラスの器が差し出される。


「まあ、綺麗。名前の通り、宝石みた⋯⋯い?」


 ジュエルドリンクを受けとって、差出人と顔を合わせると、悲鳴が上がりそうになるのを必死で堪える。


「アレ⋯⋯クサンドルさま、どうしてここに?」


「あれ? 聞いてないかい? 明日、隣町の造船所で大きな客船の進水式があるんだよ。そのままこの港に停泊して、食料や備品を積んだら、数日後には客を乗せてクラフタス共和国の島々を遊覧していくんだ」


 その進水式に、国王の名代としてアレクサンドルが参加するのだという。





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