第49話 横綱
第49話 横綱
出発の日、ギルドでは大勢の職員が見送ってくれた。
「毒堀! 前から聞きたいことがあるんだが」
「何じゃ、儂か?」
「何で、毒堀なんだ?」
……
「何でというのは、ドワーフが漢字で“毒堀”という名前は付けないのではと思って……」
「おぉ、そのことか! 実は儂の名前は“ドク・ホリデー”というのじゃ。それを漢字にして“毒堀出井”じゃ」
いやいや、漢字にする意味あんのかね?と思っていると、毒堀から説明してくれた。
「儂は、純粋なドワーフでは無いのじゃな。ばぁーさんが、異世界のポーランドという国から来たようで、日本好きだった」
またまた、わからんことを言っている。確かにポーランドには、剣道や合気道の道場が多いらしいが。
どうやら、こういうことらしい。
毒堀の祖母が、子供の頃に隣国がファシズム化したらしい。そこで、祖母の国は東西の隣国から攻められ、消滅した。
捕虜となった人々は、酷寒の地に送られたようだ。
その後、祖母の国は独立を回復するも、酷寒の地に見捨てられた国民を呼び戻す力は無かった。
そこで政府は各国に「子供だけでも、受け入れて欲しい」と、救援要請するも、見向きする国は無かったのだ。
だが、奇跡は起きた。17日後、東洋の島国が、それに応じた。
子供達は、東洋の島国を始めてみた。茶碗に箸、浴衣に帯。それら全て初めて見るものだった。
子供達は、興奮した。熱狂的に喜んだ。
そして、彼らは、しばらくの滞在の後、祖国へと帰っていくのだった。
別れの時、祖母達は、島国の国歌を歌い船に乗ったという。泣きじゃくって、別れを拒んだ子供もいたという。
「儂も、ばぁーさんから、その国歌を習ったもんじゃ」
異世界で、『君が代』を聞くとは思わなかったが、毒堀が歌う『君が代』は、歌詞も音程も微妙なものであった。
そして毒堀曰く「蒼井が、日本人なので期待をしていたのじゃ。ばぁーさんが『日本人は優しく、公明正大だ』と言っておったしの」
蒼井は、こんなに早く審査試験を受験出来たのは、毒堀のお陰だと悟った。
正に、“情けは人の為にあらず”、先人たちに感謝だ。
さて、蒼井達は、隣町までの馬車で出発し、馬車を乗り継いで行く。
道中、長距離馬車もあるが、隣町までの馬車は、日本で言えば通勤列車みたいなもの
で、木のロングシートになる。
尻にも腰にも、堪えそうだ。
一方、長距離馬車は、進行方向を向いたクロスシートで、椅子もフカフカだ。観光バスに近い。
中には、新幹線のグランクラス並のお金持ち使用の馬車もある。
ギルドも気を使い、長距離馬車のある区間は使っても良いと言ってくれた。
また、道中はギルド御用達の宿やギルド宿舎に泊まる予定だ。
これで、10日の旅になる。
午前9時の隣町行きの馬車が、ギルドのある中央広場から出発する。
それまでギルドの食堂にいるつもりだったが、ギルド前にウルフがやった来た。
ウルフは、いつも物静かだ。それがまた、知性が高そうに感じる。
また、ある程度、人語も理解しているように思える。
だから、今から、我々が、どこに行くのか理解しているように思える。
だからウルフの言いたいことは、わかったいる。「連れていけ!」だろう。
しかし、今回は依頼だからなぁ。
それに、馬車に乗って良いのか?
ウルフと目が合う……
「わかったよ!ギルドマスターに聞いてみる」
マスターが言うには、「蒼井の従魔として、連れて行くのは問題無い」とのことだった。
そのことを、ビリーとアニーに伝えると、ビリーが、「これから、一緒に行くなら名前をきめよう」ということになった。
まあ、確かに、ウルフではおかしいとは思う。
では何が良い?
アニーは、あまり関心が無い様で、「セバスチャン!」とラフに答えた。
それは、何だか、立場が正反対のような気がするぞ!
ウルフも納得していない感じだ。
「なんか、ウルフらしく、強そうな名前にしようよ!」と、ビリーの言葉に納得しているウルフ!
ウルフらしく強い名前ねぇ……
ウルフ、ウルフ。。。
ウルフといえば千代の富士! 千代の富士といば横綱!
「横綱でどうだ?!」
「「横綱???」」
「そうさ! 故郷に相撲という格技があって、グランドチャンピオンのことを横綱って、言うんだよ!」
グランドチャンピオンという言葉に、ビリーは興奮気味だ。
ウルフの方を見ると、『満更でも無い』という顔をしていた。
では、横綱だ!?
今から、お前は横綱だ!
蒼井は、ビリーと横綱、スロープシティで審査受験をするアニーとともに、隣町行きの馬車に乗り込んだ。
第ニ章 完
取りあえず、ここで終わらせて頂きます。
第三章は機会があれば書きたいですね。
第三章の『山賊女王の街』は、また、機会があれば書きます。
取りあえず、このお話は、ここまで!




