第39話 追跡
第39話 追跡
お茶を一口飲んだ蒼井は、
「追いかけるぞ!」
と、仲間に強く呼びかけた。
2体のオーガを逃すつもりは無い。このまま、巣穴の戦力を割いておきたいからだ。
オーガの足はそれほど速くない。
ビリーが、1体のオーガに追い付いた。
そして、グルカナイフでオーガの右膝裏を切り裂いた。
なんと、ビリーのメインウェポンは、グルカナイフ、つまりククリだった。
さらに、アキレス腱に向かって、投擲したククリはビリーの手元に戻って来た。
どうやら、ここからでは、見えないが、ククリには紐を付けているようだ。
ビリーはオーガに、つかず離れず上手い攻撃をしている。
素早さで体格の無さを補っている感じだ。
同じ小柄でも、アニーがパワー不足を魔法で補っているのを、ビリーは素早さで補っている。
こいつは、将来、大物になるのではないか?
さて、話は変わり、グルカナイフことククリを貴殿は、ご存知だろうか?
ネパールの戦士、グルカ族の持つ武器がククリだ!
ネパール語では、“ククリー”と発音する。
見た目の特徴は、「く」の字に曲がった形で、内側に曲がっている刃物というわけだ。
使い方は、白兵戦でも投擲でも使いやすく、刃の部分は「チョー」と呼ばれている。
このネパールの戦士の武器が、全世界に知られるようになったのは、セポイの乱(1857年から1858年)の際、イギリス軍がグルカ兵と戦い、グルカ兵の強さを本国に知らせたところに始まる。
それ以降、イギリス軍はネパールから傭兵を雇用し、現在に至っている。
なお、今日もネパールの傭兵産業は盛んだ。
例:イギリス陸軍 グルカ旅団など
ちなみに、ネパールにグルカ族という部族はいない。ネパールの山岳地方の部族のあだ名のようなものだ。
「ナイスだ! ビリー」
足を引きづるオーガは、遅れだしたが、前を行くオーガは、素知らぬ顔で走り去った。
それに、苛立ったのだろうか?
「グオオォーー」
と、残されたオーガが叫んだ。
しかし、負傷したとはいえ、ビリーがオーガを仕留めるには、力不足だ。
『オレが行くしかあるまい』と、蒼井が心に決めた時、そこに大型の矢が、吠えるオーガのこめかみを貫いた。
毒堀のヘッドショットだ!
町の護衛をしていた毒堀達、後発隊が到着したのだ。
「しかし、毒堀は弓手なのか? 以外だな」
ずんぐりしているので、てっきりタンクだと思っていた蒼井だった。
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