第28話 決着
第28話 決着
ジムの左手首は内出血を起こしていた。
何が、起こったのか? ジムもよく分かっていなかったが、離れて観戦しているものは、蒼井がジムのナイフを持つ左手を蹴ったのが、見えていた。
つまり、ジムが左上から蒼井の頸動脈を目掛け、振り下ろそうとしたとき、蒼井は左上段回し蹴りをナイフを持つ左手首目掛け、蹴り放った。
「折れてないのか? 運のいい奴め」
「な、なにを……」
ジムは焦った。
折れてはいないが、こんな短時間で内出血で左手首は、パンパンに腫れ、大きな瘤が出来ていた。ジムの経験上、腫れるのが早すぎる。
左手が使えない、あれをやるしかない!
右手のナイフを両手で持ち、右の腰にナイフを腰だめに構える。刑事ドラマやヤクザ映画でよく見るやつだ。
その木製のナイフは、強く刺せば、中に仕込んだ鉄の刃物が飛び出す仕組みになっている。
それでも、トドメをさせない場合は、マントの影で見えないように、カランビットナイフでトドメを刺すつもりだ。
そして、ギルド職員が後は、事故として処理をする。
ジムは腰だめの構えから、蒼井目掛けて、踏み込んだ。
よく突っ込んでくる相手に、「横へかわせないものか?」などいう人がいる。スペインの闘牛士の様に。
だか、大抵の場合は、まず無理だ!?
腰だめからの刃物は、突き刺すのではなく、体当たり。相撲の立会いのようなもの。
立会いを交わしたり、いなしたりする場合も見ることがあるが、プロの大相撲の力士がたまにしかしない難度の技を、しかも命を張った場面で使うのは、難しいのだ。
それよりも、蒼井はもっと簡単な技を選択した。
「左下足底、鎖骨割り」
空手にそんな名称の技があるわけでない。
腰だめで、突っ込んでくる相手の後ろ側の鎖骨目掛けて、左足の踵で蹴り飛ばしたのだ。
しかし、この技は絶対な効果があった!
ジムの右鎖骨は、木っ端微塵に砕けたのだ。ジムの右手はダラリと垂れ下がり、仕込みナイフは地に落ちた。
もうジムは、両手が使えないのだから、マントに隠しているカランビットナイフも使えない。
そこに、蒼井の目突きが炸裂、その後は、ひと呼吸で、顔面に3発の正拳突きが炸裂した。
ジムの顔からは鼻血とヨダレは垂れ、大きく口を開けて、地面に大の字に倒れていた。
例のギルド職員の「そこまで!」という声が響いた。
ギルド職員はジムに近づいき様子を見て、「ジムの勝ちだ。蒼井は反則を行った」と判定を下した。
見学者は唖然とし、しばらくしてからは、ブーイングが起こった。




