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プロローグ1

流石和樹(ながれかずき)くん、君はクビだ」

「へっ!?」


 ここ最近平和な日が続いているなー。

 なんて呑気な気分でいたら、会社の上司にいきなりクビを宣告された。


 この禿上司、今なんて言いやがった!?


「クビ、ですか?」

「そうだ、明日から我が社に来なくていいぞ」

「そ、そんなー」



 もうすぐ40手前の俺。

 こんな年で会社をクビにされたら、これからの人生割とマジでピンチだ。


「またまた、そんなこと言って、冗談ですよね?」

「生憎、冗談でない。君みたいなトラブルメイカーにいられては、我が社が物理的に消えてしまう」

「物理的に消えるとか、いくら何でも物騒すぎでしょう」

「それは冗談のつもりかね?」


 この禿上司、言うに事欠いて俺を地震や津波みたいな天災と勘違いしていないか?



 とはいえ、ここはクールにいこう。

 焦ってはダメだ。


 俺は禿上司の言葉を聞いて、ここ3年以内にあったちょっとしたハプニングのことを思い出してみた。


 あったことといえば会社の出張でアメリカのラスベガスに行った際、海外旅行気分で仕事の合間にカジノに入り浸って大金を稼いだら、なぜか翌日黒服を着たマフィアの集団に追い掛けられる羽目になった。

 街中でカーチェイスをし、派手な銃撃から逃げなければならなかった。


 あの時はレンタルした車がマフィアの銃弾のせいでボロボロにされ、弁償のためにカジノで稼いだ金が丸まる全部吹き飛んでしまった。


「こんなところ2度と来るかー!」と叫んだな。

 ベガスで荒稼ぎすると、ああいうことがあるので、もう2度と行きたくねぇ。




 んで、次にあったことを思い出してみる。


 会社の出張でロシアに行くことになったのだが、なぜかシベリア上空で乗っていた飛行機がテロリストにハイジャックされ、そこから脱出するために高度5000メートル以上の高さからパラシュートでダイビングするはめになった。


 真冬でないとはいえ、すでに秋になっていたシベリア。

 北海道よりさらに北にあるため、寒さで睫毛が凍りだすという、トンデモ環境だった。


「うう、サビィ。おっ、こんなシベリアの奥地でも車が通ってるんだな。おーい、近くの町まで連れて行ってくれー」


 捨てる神あれば拾う神あり。

 たまたま近くを通りかかったジープに手を振って助けを求めたが、なぜかジープから出てきたのは、マシンガンにバズーカまで装備した、現代版山賊の連中だった。


 平和な日本では考えられないことだが、いまだにシベリアの奥地では現代版山賊がいるようだ。


「金を出せ!」

「ガアアアッ、どうしてこうなるんだー!」


 テロリストの次は山賊かよ。

 俺は叫び声をあげ、マシンガンをいきなりぶっ放してきた山賊から逃げる……ことなく、そのまま弾丸を回避しながら走って接近。


「な、なんだ奴の動きは。まさか忍者、忍者なのかー!」


 ――チュドーン


 慌てた山賊が迫る俺に向かって、バズーカまでぶっ放してくる始末だ。


 もっとも爆発の範囲なんてたかが知れているので、余裕で回避。

 そのまま山賊どもを蹴りと拳で沈め、気絶させておいた。


 五人乗りのジープに乗った山賊程度、体一つで簡単に制圧できるな。


「たく、いきなり人を見て殺しにかかるとか、とんでもない奴らだ。いつから日本はこんな世紀末に……あ、ここロシアだったか」


 いれない、いけない。

 シベリアの奥地だから、こんなことがあっても仕方ないよなー。

 ハッハッハッ。


 てな感じで、ちょっとしたトラブルがあったものの、山賊の乗っていたジープが手に入った。

 このままジープで町までいこう。

 大した苦労もなく事なきを得てラッキーだな。


 とはいえ俺だからいいけど、一般人だと身ぐるみはがされて殺されてるよなー。




 んで、そんなシベリア奥地での事件から数か月たったある日、またまた会社の海外出張で、ブラジルに飛ばされたことがある。


 その時は本社にいる禿上司が、「君みたいな危険人物は日本に帰ってくるな。地球の裏側に隔離してくれる!」とかなんとか叫んでた。


 で、出張という名目でブラジルに飛ばされた俺だけど、飛行機に乗ってたらなぜかアマゾンの上空でまたしてもテロリストが出現。

 前回と同じパターンで、パラシュートで地上への脱出となってしまった。


「またこのバターンかよ」

 2度あることは3度あるなんて諺もある。


 パラシュート脱出をまたすることになったら面倒くせぇなと思いつつ、俺はアマゾンの大地へパラシュートで降り立った。


 ごめん、嘘だ。


 途中でパラシュートがアマゾンの大木に引っ掛かってしまい、足場のない空中に吊り下げられる羽目になった。


 もっともその状態から脱出するのは簡単だったけど。



 たださ、俺が降り立ったのはアマゾンの奥地。

 どっちに行けばいいか方向が全く分からず、木が高すぎるせいで視界が遮られ、目印になるものなし。


 助けを待つにしても、飛行機が墜落したならともかく、パラシュートでの単身脱出だったから望み薄だ。


「うげぇー、ロシアの時はジープがあったから近くの町まで3日でついたけど、さすがにここだと車なんてないぞ」


 これは本格的な遭難だ。

 といっても過去に無人島に放り出され、そこで3年だったか5年ほど生活した経験があるので、いまさらアマゾン程度で死ぬつもりなどない。


「あの禿上司の顔も見飽きてるし、のんびり町まで歩いていくことにするか」


 歩いていく方角なんてさっぱりわからないが、それでも歩き続ければ、いつかアマゾンを抜けられる。


「なーに、アマゾンには魔物(モンスター)(ドラゴン)も魔王だっていないんだ。平和なもんだよなー」

 なんて感じで、ハイキング気分でアマゾン散策だ。



 ――ガルルルルーッ


 途中密林の中から出てきたクロヒョウに会ったりもした。

 といっても、飛びかかってきたクロヒョウを軽くいなして地面に転ばしてやれば、キャンキャン吠えて負け犬のように逃げ出していった。



「アマゾンってメチャクチャ平和だなー」

 もう鼻歌交じりに歩いてるだけでよかったぞ。



 ただ、鼻歌歌いつつ散歩気分で2か月ほどアマゾンを歩いてたら、途中でロボットを見つけた。

 それもドローンとか、大手企業が試験的に作っている二足歩行ロボットなんてちゃっちなものじゃない。


 天空に浮かんでいる城から落ちてきたようなロボットだ。

 目から破壊光線を出して、要塞の壁を溶岩に変えてしまうトンデモ兵器を搭載してそうな天空ロボットが、苔まみれになった状態でアマゾンの中に落ちていた。


 それも見た範囲で、1体どころか100体くらい転がってる。


「おいおい、ここは地球だぞ。21世紀だぞ。人工衛星が飛んでインターネットが駆け巡ってる時代に、人類未発見の文明の遺産とかじゃねぇだろうな!」


 飛行機で脱出した際にポケットに突っ込んでいたスマホで写真を撮ろうかと思ったが、生憎バッテリーが切れていたのでできなかった。

 なおスマホがあるなら、飛行機から脱出した時点で助けを呼べ、と言われるかもしれないが、残念ながらアマゾンはひどく深い森だ。


 電波が届かなくて、電話もメールも使えなかった。



 それはともかく。


「……よし、何も見なかったことにしよう」

 君子危うきに近寄らず。


 後日この場にとある大佐殿がやってきて、「私は天空王になる」「天空城の雷を見るがいい」「ハハハハハ、人がゴミのようだ」なんて言い出すかもしれないが、何も見なかったことにして、その場を後にした。


 そのあとはアマゾン生活が長くなったせいで、コシミノいっちょで「アー、アアー」とか叫んでターザン状態になったりもしたが、3か月もしたら人間の文明がある街にたどり着いた。


「や、やべぇ、もう少しで文明人だったことを忘れるところだった」


 恐るべしアマゾン。

 3か月も森の中を放浪していたせいで、もう少しで原始人になってしまうところだった。



 とはいえ、大自然での3か月の旅は楽しかった。

 仕事のことを考えず、遊びながら森の中を歩いていたので、童心に帰れて超楽しかった。


 ただし天空ロボットのことなど、俺は何も知らんぞ!




 てな感じで、俺はここ3年以内にあったちょっとしたトラブルについて振り返ってみた。

 どれもこれも大したことでなく、ごくごく平和な出来事ばかりだ。


「俺、何かやりましたっけ?」

「2度とうちの社に顔を出すなー!」


 俺が不思議な顔をしながら問いかければ、なぜか禿上司に怒鳴られてしまった。


「この禿野郎。手前が大事にしている最後の一本を引き抜いてやる」

「ギャアアアアー!」


 今まで温厚にしていた俺だが、つい頭にきてしまった。

 禿上司……いや、今では何の関係もなくなったただの禿野郎の頭頂部に唯一残っていた、波平さんスタイルの髪を引っこ抜いてやった。




 チクセウ、40手前でクビとか、これからどうしよう。


「アフリカの奥地にでも行って、誰もいない場所で小さな独立国でも建てるか?」

 俺はそんなことを呟いて、解雇された会社を後にした。


 これからの人生、マジでどうしよう。

 とはいえ地球は平和だから、生きてくだけならそれほど苦労しないだろう。


あとがき


 気が付けば前回書いてた話から1年半ぶりの執筆だったり~

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