2-D100-16 タカマツによる報告書2
報告書です。
その2です。
親愛なる宰相閣下へ 忠実なる部下より
報告書が細切れになってしまい、大変申し訳ございません。
ご命令の通りに二千字以上を書くと言う事は……大変難しいのです。
いえ、僕に文才が無いと言う訳ではないのです。
状況が刻一刻と変わり、ゆっくり書く暇が無いのです。
時には歩きながら書いています。
是非、ご理解くださいませ。
要請させていただいた伝書魔獣をたくさん送ってくださり、感謝しております。
前回は……そうでした。
ロンドール候が僕の話に乗った所まででした。
計画ではこうでした。
内城は結界で覆われております。
侵入者、特に魔物の類に対しては鉄壁を誇ります。
これは帝国の技術ではなく、マグヘイレンからもたらされた魔道技術です。
この結界についての報告は、二か月前にお送りしました。
お読みになりましたでしょうか?
結界は鉄壁ですが、しかし、内側から開けると中に入れる場所もあるのです。
防衛上と言うよりは、利便上の理由によります。
ヘルザーツは最近マグヘイレンの傘の下に居るせいか、色々規律が緩んでおりますので。
僕は内部の協力者である衛兵の一人に、ある時間になったら開けるように伝えました。
それをロンドール候に教えたのです。
僕がしたのはそれだけでした。
あとは彼がどう動くかでしたが……。
所で、ヘルザーツの王族たちは、我が帝国の老害貴族の習慣をまねております。
例えば、あの、一族で誕生日を迎えた者の為に開くパーティで、魔獣などの肉を振る舞うという退廃した習慣です。
お察しがついたでしょうが、肉とはこの場合、人魚の子の肉です。
僕からすれば吐き気を催すのですが、彼らは西の大陸でも数少ない、先祖の野蛮な習慣を残すヘルザーツの人狼族。
人間ですら食料の一部なんですから。
しかし、我らと同じ転生者であるロンドール候が、その「養殖場」や「パーティ会場」に足を踏み入れた時、一体何が起こるのか。
もし閣下がこの場にいらっしゃった場合、どう判断なされたでしょうか?
僕は少し後悔しています。
何故なら……。
おっと、誰か来たようです。
――――
フォルカーサ帝都メリッサの郊外。
「宰相殿」の私邸にて。
その宰相殿がタカマツからの報告書を手に叫んだ。
「おい! 誰か来たって、誰だよ!! ここで文章切るんじゃねえよ!!!」




