2-D100-29 タカマツによる報告書5
報告書です。
その五。
親愛なる宰相閣下へ 忠実なる部下より
僕らがマグヘイレンの郊外にある旧王宮に辿り着いたのは、午後になってからです。
汀の変化した龍に乗り、ロンドール候の後をついて行ったはいいのですが、目的地の旧王宮は、正にあのマグファイブが守る鉄壁の城でした。
僕はある程度離れた場所から、閣下から頂いた望遠魔カメラをかまえつつ、推移を見守りました。
その時間、城を守っていたのは堅実誠実な性格で知られるマググリーンでした。
惜しい事に、余り人気は無いのですよね。
おっちょこちょいなのだとか。
確かに、真面目な間抜けとは一緒に仕事をしたくありませんよね。
初めは、ロンドール候が高空から城の結界に向けてダイブし、結界をたわませることに成功しました。
とは言え、流石マグヘイレンの重要施設に設置されている防御結界は素晴らしい。
ロンドール候は押し返されたのです。
しかし、直後に結界は崩壊しました。
良く見えませんでしたが、何か火属性系の攻撃手段と思われます。
そしてロンドール候とマググリーンは空中に於いて一対一で向かい合いました。
ここの写真は自信作です。
しかし、何でしょうね、幾ら元の世界の戦隊モノを模しているとはいえ、戦闘の前にお互い名乗りあう必要などないでしょうに。
あ、閣下はそう言う様式美を愛していらっしゃるのでしたね……。失礼いたしました。
残念ながら、第一ラウンドはマググリーンの完敗です。
素直に普通の魔法を使っておけばいいのに、わざわざ銃器の形をした魔法道具に頼るからです。
空中でバラバラにされてしまいました。
ここの決定的瞬間も収めました。
僕の写真の腕は相当な物なんです。
ロンドール候は暫くの時間、城にある塔の上に居ました。
恐らく、そこにユキ王女がいたのでしょう。
少しすると、マグブルーとイエローが飛んできました。
彼らは王城の守備をしていて、こちらの急を聞いてきたのかもしれません。
再び戦闘が始まりました。
グリーンも直ぐに復活です。
天使族の不気味な再生力は、特に集団戦で発揮されることは閣下もご存知でしょう。
正にその効果が現れました。
流石の鬼神も、苦戦でした。
そこにユキ王女がいる事により、爆発的な攻撃が封じられているせいかもしれません。
マグファイブの3人は、何度もバラバラになり、内臓を宙にまき散らしながらも、食らいつきました。
ロンドール候はあきらめが早かったです。
理由は分かりません。
ユキ王女はそのままに、3人を一息に刻んだと思ったら、南の方へと去りました。
さて、マグファイブの3人は見事防衛を果たしました。
所がそれでは終わりませんでした。
ロンドール候が去り、マグファイブが城に戻ったその時です。
閣下、驚かないでください。
城の中に、空母が出現したのです。
な……何を言っているのかわからねーと思いますが、僕も何が起こったのかわかりませんでした……。
空母です。
我ら転生者にとって懐かしの、空母。
全長三百メートル以上、幅数十メートル以上の鉄の巨体が、城の中に突然瞬間移動してきたのです。
そして、城や城壁を完全破壊し、数秒後に消えました。
訳が分かりません。
驚き過ぎでピンボケしてますが、何とか写真には収めました。
城内の者達は全員避難できたのでしょうか?
塔の上に居たユキ王女は?
汀によると、戦闘の最中から、微かですが水属性の力が城を覆っていたとの事ですので、何かがあったのは間違いないでしょう。
引き続き、情報を収集いたします。
マグファイブの雄姿など、全て写真に収め、魔メモリに記憶してお送りいたします。
ご査収くださいませ。
――――
フォルカーサ帝都メリッサの郊外。
「宰相殿」の私邸にて。
その宰相殿がタカマツからの報告書を手に叫んだ。
「ねえ、ピンクちゃんの写真は? タカマツ君分かってないよね?? グリーンの空飛ぶ内臓なんて見たくないんですけど???」
写真に付されていたメモ書き。
「ほら、この膵臓の色つや、食べたくなる位に最高ですよね!」




