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御伽噺に導かれ異世界へ  作者: ペンギン一号
夏の最後の思い出に
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地獄と日常 二重奏

日常 ギルド 回






冒険者ギルドが隔離されてから数日、紡達は変わらない日常を過ごしていた。

当然未だに冒険者ギルドは解放されてはいない。

ギルド前には困り果てた冒険者達や、商人などがどうにか入れないものかと、諦め悪く試し続けていた。

成功した者はいないが…


一方で魔法士ギルドでは連日連夜の大盛況。

商業ギルドの協力により、大量の素材を持っていることが伝わり、それを求める商人がギルド員を超えるほどの列をなしていた。

この並ぶ者達の殆どは冒険者ギルドが封鎖されたことにより素材の入手が困難となった者達。

そんな者達が商業ギルドの通達を聞いたことにより、砂糖に群がる蟻の如く魔法士ギルドへと集まる光景を作り出していた。


サブマスターのテッドなど跳ね上がった収益に連日小躍りを踊るほど舞い上がり、ギルドマスターのフーパは多大な仕事量に放心状態、そんな光景が日常とすらなり始める頃、こんな現状を作り出した者は…



「ほれ、こうやるんだ」


「成る程…これは初めて見たな」



宿屋の厨房でディーンと共に料理を作っていた。


「完成だ」


俺の大好物の一つ、我が家特製の巨大和風ハンバーグ。

ドンっと机に置かれた皿の上。そこには見事な和風ハンバーグが乗っていた。


「早く食うぞ!」


見たことの無い料理の味が気になるのか、ソワソワと忙しないディーン。


「少しは落ち着け」


ふっ、慌てなくてもハンバーグは逃げねぇよ。

子供の様に見たことも無い料理へと目を輝かせる姿に紡は苦笑が漏れる。


それにしても、俺が料理を教える日が来るなんてな。

日常でも自炊してるし嫌いではないんだが、やっぱりピーと比べると数段階落ちるんだよな…


「美味い!!」


「それは良かった」


「これは凄いぞ…味もさる事ながら、この料理の発想が素晴らしい。

肉をすり潰すという暴挙、それを一つの塊とする機転、それにより肉は柔らかく肉じるも染み出す様に作られている。

そして何よりも素晴らしいのはこのソース。

俺は此処まであっさりとしながらも濃厚な味わいを感じたのは初めてだ」


お、おう。そんなにゴリラ顔を近づけなくても聞こえるから…

だが、まさかそこまで感情的になるとは思わなかったぞ。

この程度でそんな状態になるなんて、ピーの料理食ったらその場でドラミングを始めるんじゃないか?


「でも良かったのか?こんなに美味いものを教えて」


「あー、いいんじゃね?この宿は俺気に入ってるし」


フォルお気に入りのマリーちゃんもいるからな。折角なら美味しいものを食べられた方がいいだろう。


「…ありがとな」


「気にすんな。…それよりも」


作り始めて少し経ったあたりから、複数の視線を感じるんだよな…

多分あのカウンターに隠れてるのはマリーちゃんかな?

自身は隠れたつもりだろうけど、カウンターの上から、フォルと目が合ってるし。

多分頭の上を計算してなかったんだろうな。

んで、その隣はコアとチコか。

隠れてるつもりだろうが、アホ毛がこちらに向いているぞ。


「はぁ…お前達も食べるか?」


「「「食べる!!」」」


反応早っ!押し寄せる子供達が波の様だ。

なぜかマリーちゃんまでもが子供とは思えない動きでハンバーグ狙ってるし…



「「「おいしー!!」」」


「ふっ、そいつは何よりだ」


此処まで喜んでくれると作った甲斐があるな。

今度は材料持ってきてカレーでも作ってやるか。


笑顔で騒ぐちびっ子達を暖かく眺める紡達。

騒動により疲れた心が癒されていく様に感じる。

なんだかんだ言っても、精神的に疲労感が募っていた紡からすれば、気分転換にもなったのかすっきりとした顔をしていた。






――――――――――――――――






side 冒険者ギルド




あれから数日が経ち、室内に閉じ込められた者達は既に時間の感覚が狂い始め、精神的疲労からか異常行動を始める者も現れ始めていた。


「グガァァア!?」


「おい、また暴れ始めたぞ!誰か止めろ!」


暴力的に周囲を破壊する者。

壁のシミを一点に見つめボソボソと呟き続ける者。

力尽きた様に床に寝そべったまま一切動かない者など、室内は狂気に染まり、正常な者の方が少ない様であった。


「…いつになったら出られるのか」


「先を考えるな。心が折れる」


現在冒険者ギルド内の残り少ない正常者であるカレナとテールは折れるわけにはいかないと互いに軽口を叩く。


「たが、そろそろ食料も尽きるぞ…もしこんな状況で食料も無くなったとすれば…下手すると殺し合いにすらなり兼ねない」


「はぁ…くそっ、此処から出る目処も立たず食料は尽きかけ、最悪じゃねぇか…」


「私があんな事をしなければ…」


何度目だろうか。

カレナによる後悔の懺悔。

周囲の放つ絶望に呑まれたからだろうか、ここ数日カレナは呟き続け、既に口癖とすらなっていた。


「後悔は無事に出てからしてくれ。それよりも今は食料についてだ」


当然の議題。

食料が無くなれば、待っているのは破滅。

それを回避する為、二人は必死に頭を回す。

ギルド員には、これ以上狂人を出さないように食料が尽きかけているとも言えず、二人だけで考える。

だが、当然浮かぶことも無く、只々生産性の無い時間を過ごしていた。


「はぁ…今は耐えるしか無い。解決の目処も立たないんだ」


「そうだな…いつまで持つかわからないが…」


二人の間に漂うお通夜の様な雰囲気。

永遠と先の見えない耐久地獄レースにエルフであるカレナですら老け始めている様であった。


「まぁ、危険なものは隔離済みだ。後は待つだけなのだからゆっくりとしよう」


冒険者達は既に半数が狂い、暴行を働き始めたものは隔離済みの為、後は解放までの時間を只々大人しく待つだけだと二人は考えていた。

当然人数が減った上、精神的疲労により冒険者達も既に暴れる気力などなく、暴れたとしてもすぐさま取り押さえることができる様に動いている。

隔離された当初、ギルド内での殺し合いが行われた場合の被害を考え、少しでもギルド員が助かる様にとカレナが動いた結果であった。


だからだろうか、冒険者達からの被害はもう無いと決めつけ…









「ギルドマスター…少しいいですか…」







それ以外のことが頭から抜け落ちていた。



「ん?ああ、ミーシェか。一体どうした?」


そこに居たのは受付嬢であるミーシェ。

何時も元気に受付を担当し、その幼くも可愛らしい容姿により冒険者達の中にもファンの多い少女。

残酷にも、冒険者ギルドが隔離された際に受付業務を行っていたことにより巻き込まれた、現在のこのギルドで数少ない非戦闘員である。


カレナから問われたミーシェは口を開くことも無くフラフラと近寄っていく。

目は虚、何時もの可愛らしい雰囲気などは既に無く、ボサボサの髪をそのままに歩く姿は小さい山姥の様。


そのままゆっくりと近寄っていき、




―――ザクッ…



ナイフを腹へと突き立てる。

非戦闘員の少女という事もあり気を抜いていたカレナは回避もままならずズブズブと体内にナイフが進んでいく。

床にはポタポタと血液が滴り落ち、あたりには錆びた鉄の匂いが充満していく。


「な…なんで…」


刺されながら、哀しげに少女へと問いかけるカレナ。

いきなりの暴挙にテールも驚愕を浮かべながらミーシェを見つめる。


「なんで…ですか。そんなものは一つです。

こんな事態を生み出した貴方を殺して何が悪いんですか?」


冒険者ギルドからギルド員が減っていった際に対応していたのは受付嬢。

カレナが、紡捜索の依頼を出した際に処理したのは受付嬢。


そう、受付嬢であるミーシェはこの現状が誰のせいで生み出されたのか、そしてこの状態を作り出した化け物の正体まで全ての事柄を理解していた。


「そうか…」


それだけ言い残し、全てをぶちまける様に床に倒れふすカレナ。

床にはゆっくりとだが着実に血液が流れ出ており、着々と命を蝕んでいく。


「おい!しっかりしろ!!」


信じていたギルド職員から裏切られた為か心が折れ、手にも力が入っていないカレナをテールがそっと支える。


「きゃははははっ!やったわ!私が元凶を倒したの!私が勇者よー!」


その場で両手を広げながらクルクルと回るミーシェ。

自身を褒め称える様にその場で踊るその姿は…間違いなく、壊れていた。






未だ地獄の冒険者ギルド。

続く地獄の先の先。其処には狂気が待っていた。






こんばんは、ペンギン一号です。


今回新キャラを出すつもりでしたが、いつのまにかギルドマスターが刺されていました…

次回こそは出せればいいな。


また、最近投稿が不定期になり申し訳ないです。


次回は、やっとこさ新キャラ!

出せたらいいなぁ…


是非お楽しみ下さい。


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