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御伽噺に導かれ異世界へ  作者: ペンギン一号
夏の最後の思い出に
72/75

双子と一緒にギルドへと

再度魔法士ギルド回





Side 魔法士ギルド






「ギルドマスター、ついに動きました!」


室内へと駆け込み、いつもとは違う様子を見せるテッド。

取り乱したその姿に、事態の緊急性を感じさせる。


「ついにきたんだね…」


深く椅子に腰掛け、これから起こるであろう騒ぎに遠くを見つめるフーパ。

また仕事が増える。ただそれだけが頭に浮かぶ。


二人は、冒険者ギルドの現場からいつか紡と騒動になると予想していた。

それに向け、事前に準備も計画し、順調に進んでいた…筈だった。


「本日会った様子では騒動はまだ先になると思いましたが…こんなに早いとは」


だが、二人の想像など軽く超え、まさかの当日にそれが起こってしまう。

準備していた二人をあざ笑うかの様に。


「それで、冒険者ギルドはどうなったんだい?

僕の予想じゃ更地なんだけど」


そう語りながら漏れる掠れた笑い声。

どうやらこの事態にフーパも困惑している様だ。


「それならば、話は早かったですよ…」


疲労感の浮き出た表情を浮かべるテッド。

その姿に心臓が締め付けられる感覚と共に嫌な予感が襲いくる。


「残念ながら、更地にはならなかったですよ。

現在、冒険者ギルドのあった場所、そこに得体の知れない巨大な白い物体が置かれています」


「は?」


呆然と口を開き、困惑を露わにする。


「はぁ…私は見たままを言っているだけですよ。

一体どんな魔法特性を使えばあんな現象を起こせるのか…」


「そんなに凄いのかい…?」


「…外で冒険者達が壊そうと躍起になっていますが、魔法は全て反射し、叩きつけた剣は全て刃こぼれ状態。

私ならば早々に諦めてますよ」


「それはまた…冒険者ギルドにはご愁傷様としか言えないね」


話して楽になったのか、ようやく二人に笑顔が戻り始める。


「ギルドマスターには感謝しかないですね。あの時私を止めて頂かなければ、あの現象は此処、魔法士ギルドで起きていたでしょう」


「僕自身も英断だったと思う。

本当に良かった。あの時の判断に心から感謝しているよ」


連絡が来たのだろうか、ザワザワと騒がしくなっていくギルド。

だが、この部屋の二人は喧騒とは真逆、心から安堵していた。

騒動を起こした原因を知っているからか、余計に。





―――コンコン…


「ギルマス、宜しいですか?」


「ん、ディアナちゃんどうしたんだい」


「ちゃん付けはやめてください…商業ギルドサブマスターが緊急の要件で訪れています。

どの様にしますか?」


「あー、あの子か。

テッド君、相手をお願いするよ。どうもあの子は苦手だからね」


苦笑いを浮かべてテッドへと頼み込む。


「まぁ、よく値切られてますからね。分かりました、私が行きます」


ディアナに連れられ、テッドは室内を後にしていく。

室内に残ったのは、静寂と精神的な疲労感だけ。



「さてはて、ここからどうなっていくのかな」



遠い目をしたフーパの呟きは外から響く喧騒の中に埋もれていった。






―――――――――――――――――






「よし、それじゃあ魔法士ギルドに行こうか」


「行くー!」


「早く…」


双子は嬉しそうに紡の手を引っ張り、先を急ぐ。


「え、あれはいいのか?」


こんな状況を生み出しながらも、あっさりとこの場所から去ろうとする紡にカインは困惑する。


「あー、冒険者ギルドには何をしたか今伝えてるから、気にしないでいいぞ」


それだけ告げると双子に引かれるまま、先へと連れて行かれた。


「俺はあんな人物を強制連行しようとしたんだな…」


じっとりと感じる背中の汗に寒気を感じながら、カインは紡の後を駆け足で追っていった。







魔法士ギルド、そこでは当然冒険者ギルドの話題で盛り上がり、少しでも情報を手に入れようと、かなりのギルド員が押しかけていた。

そんな状況の魔法士ギルドへと、双子に引かれながら平然と入って行く。


「此処が魔法士ギルドだ。一応俺が所属している場所だな」


「思ったよりちっちゃいね!」


辛辣なコアの感想が室内に響く。


「残念…弱そうなのしかいない…」


チコも酷評を呟く。


「そこは我慢してくれ、俺にもどうしようもならないからな」


「「分かったー!」」


入って早々何をしてるんだ。

カインは背後から呆れながら苦笑いを浮かべる。


「それでは、私は帰らせてもらう」


これ以上騒動に巻き込まれる訳にはいかないと、カインは早々と紡達へ別れを告げる。


「そうか、まぁなんだ、一応護衛ありがとな」


「ふっ…いや護衛らしいことは何も出来なかったよ」


軽く笑いながら、あっさりとカインは去って行く。


「おじちゃんバイバイ!」


「また登らせてね…」


二人ともおっさんを気に入ったみたいだな。

そんな去りゆく背後へと、可愛らしい声が飛んでいた。

ほのぼのとした一幕の中だったのだが…当然周囲のギルド員は、


「へぇ、言ってくれるね」


先ほどの暴言に対し近寄ってくる。

いきなり子供を引き連れ入って来たかと思ったら、魔法士ギルドを貶し、ギルド員達を雑魚と言い切る。

そんな事をしたならば周囲の者達が絡んでくるのも当然の結果であった。



「ん、あんたは?」


「僕を知らないのかい、一応有名だと自負しているんだが」


「誰だよ、知らんぞ」


こんな自分を有名なんて言ってる様な痛い奴、見たこともない。

紡の前に立ちはだかる人物。自身を有名人だと話す痛い人物は、ショートカットの艶のある白髪をした、ボーイッシュな女性であった。

頭に三角帽子、背にはなびく様にローブを付け、杖を腰に下げているその姿はまさにザ魔術師。

痛すぎる言動と相まって中二病感すらする女性を、紡は可哀想に見つめていた。


まさか本当に知らなかった事が恥ずかしいのか、女性は顔を真っ赤に染め上げながら告げる。


「そ、そう…私は魔法士ギルドSSランク、『残酷天使』のラスクよ」


痛たたた!やばい、こいつすごい痛いぞ。

自分で天使って名乗るとか正気か…

多分日常でも、闇の炎に焼かれて消えろ…とか、封印されし右腕が解放される…とかやってるんだろうな。


「お、おうそうか天使かーカッコいいな、頑張れよー」


ダメだな、此奴を相手にしてたら中二病が二人にうつる。

それだけは阻止しなければ!

双子の情操教育の為、紡は適当に相槌を打ちながらもその場を後にしていく。

背後から「待ちなさい!」と聞こえていたが振り返らずに。


「お兄ちゃん…あの人呼んでるよ…」


「チコ…あれは関わっちゃいけない人種だ。覚えておく様に」


「ん、覚える…」






周囲からの視線を全身に浴びながら紡は目的を果たす為、カウンターへと近づいて行く。

そこでは、今まで見た事がないほどの人数がごった返し、長蛇の列を作っていた。

依頼の報告から、素材の売却に至るまで、側から見てもかなり繁盛している印象を受ける。


「へぇ、もっと廃れてるかと思ったが結構いるんだな」


素直な感想を口にしていたその時、


「ツムグさんではないですか、何かご用ですか?」


丁度一階に降りてきていたテッドから声が掛けられる。

隣には小さな女の子を引き連れ、近くその姿はまるで親子の様に見える。

隣に並ぶ少女はテッドが呼んだその名に、驚く様に目を丸くし、まざまざと紡を見つめて固まっていた。


「あー、テッドさんか、丁度良かった。ギルドマスターに会いたいんだが大丈夫か」


「問題ないですよ、貴方が来たと伝えればすぐにお会いになるはずです。

…冒険者ギルドの事についても聞きたいでしょうし」




「へぇ…なんだ、もう知ってるのか」


魔法士ギルドも中々耳が早いんだな。


「最重要事項ですので」


「気にし過ぎだ。それで、さっきから俺を見つめてる少女はテッドさんの娘かなんかか?」


そんな見つめられても困るんだが。俺はロリコンじゃないし。


「あ、いえ此方は商業ギルドサブマスターであるミーニャさんです」


うわ、こんなチミっ子がサブマスターしてるのか…商業ギルド大丈夫か?

露骨に心配そうな表情を浮かべる紡。


「ふふっ…そんな心配しなくても大丈夫ですよ。ミーニャさんは私とそれほど年齢は変わりませんので」


「え、マジで…」


「はい事実です」


これが凍夜の言っていたロリババアって奴か。なんだろう…人体の神秘を感じるな。


「テッド君、酷いよ!女性の年齢を話すなんて!」


「いや、貴方はもうそんな事を気にする年齢では…」


「これはもうお詫びとして卸の値引きをしてもらわないといかないね!!」


女性に問い詰められるおっさんとか、とんでもない光景だな。


「はぁ…もう、テッド君はしょうがないね。

君はツムグ君で良かったかな」


「ああ、ツムグ オトギだ」


「へぇ、そっか…私はミーニャ、宜しくね!」


眩いほどに輝かしく塗り繕った笑顔をミーニャは浮かべる。


「ミーニャちゃん…私チコ…」


珍しいな、チコが人物に興味を示すなんて。

紡の手を握り、足の背後に隠れながら、チコはミーニャへと挨拶をする。

だが、何故かコアの方は一向にミーニャへと興味を示さずに、並ぶギルド員達を見つめながら、ガッカリだぜと首を左右に振っていた。


「可愛らしいですね。ツムグさんのご兄弟ですか?」


「そうだ、弟と妹だな。この子達の可愛さが分かるとはテッドさんも中々やるじゃん」


二人が褒められて上機嫌な紡は、嬉しそうにテッドを褒める。

そんな二人の足元では、側から見たら可愛らしい会話が開催されていた。


「宜しくねチコちゃん!」


紡に取り入るために、ミーニャは必至にチコにすら媚を売ろうと笑顔を向ける。

今までかなりの人物を落として来た自慢の笑顔その力を遺憾なく発揮して…






「ミーニャちゃん…笑顔気持ち悪い…」



ばっさり切り捨てられる。



「えっ…」



紡の意思を引き継いだチコによる歯に絹着せぬ物言いにより、ミーニャの笑顔に軽く亀裂が走ってしまう。

だが、ミーニャもこれまで商人として幾多の人と接して来たプロ。

この程度で折れてなるものかとすぐに立て直し…


「ミーニャちゃんには…お兄ちゃんに近づいて欲しくない…」


何故か何もしていないのにかなり嫌われた様だ。

チコの一言により、笑顔の仮面はすでに崩れ去り、今は笑顔と言うよりも、ただ引きつっているだけ。


「な、何でかな?」


そんな中でも何とか解決の糸口を見つけていく。

商業ギルドとしても、此処で『ツムグ オトギ』と繋がりを持つことが出来れば多大なプラスとなるはずだ。

そう信じてミーニャは問いかける。

だが、嫌いと決定付けたチコは鉄壁。解決の糸口など微塵もなかった。


「お兄ちゃんに擦り寄ってる姿…気持ち悪いから…」


小さくても女性。チコはミーニャの本性をどうやら気づいてしまった様だ。

その容姿を用いて相手に取り入るミーニャの戦い方を。


「…」


年端もいかない少女にあっさりと見破られ、完全に滅多打ちにあった状態。精神的にもやられ、これ以上口を開けば悪化するかもしれないとただ黙って待つ事しか出来なくなっていた。




ミーニャがチコにボコボコにやられ、紡達の会話がひと段落した頃。


「申し訳ないのですが、私達はこれから解体場へと向かいますので…」


仕事の最中だったのだろう、テッドは此方へと告げ、


「解体場!!」


そのテッドの言葉にコアが笑顔で反応する。

まるで好きなアニメの次回予告を見た少年のようにワクワクと目を輝かせるコア。


「もしかして、行きたいのか?」


「うん!」


「そうか…チコも行っていいか?」


紡が問いかけるとチコはちらりと横目でミーニャを見つめながら返す。


「…いいよ」


「と言うわけなんだが、悪いがテッドさん、俺達も解体場に寄っていいか」


「勿論です。では、私達とご一緒に行きましょうか」


テッドに連れられ、紡達は解体場へと向かっていく。

その間、チコはツムグへとミーニャが近付かないように牽制していた。










こんばんは、ペンギン一号です。


今回チコが活躍しましたねー。

小さいながらにズバズバ切り捨てる姿。

そんなチコに今後も活躍して欲しいです。


さて次回は、魔法士ギルド見学回。

解体場に、ギルドマスターの部屋など双子の赴くままに見学をしていく。

そんな中、狂人の意思を継ぐ二人に振り回される大人達。

是非お楽しみ下さい。





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