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御伽噺に導かれ異世界へ  作者: ペンギン一号
夏の最後の思い出に
70/75

強制収容ギルド内

ギルド内について






Side 冒険者ギルド





時刻は17時頃。

ここ、冒険者ギルドでは続々と依頼を終わらせた冒険者達が報告を行う為に戻りだし始め、徐々に騒がしくも似つかわしい雰囲気へと変わりだす。

カウンターでは、毎度お馴染みの受付嬢と冒険者による素材の値段交渉や、美人揃いの受付嬢にナンパをする者などが至る所に目につく。


隣の酒場では、今回の報酬が良かったのだろう、冒険者の面々が酒を片手に乾杯を繰り返している。

そんな楽しげに騒ぐ冒険者ギルドの二階。上から見下ろす様にその姿を眺めている者達がいた。


ウェルドの街、冒険者ギルドにおいてSSランクパーティでもあるその面々はその光景を楽しそうに見つめる。


「冒険者は減ったが活気がなくなった訳じゃねぇ」


「そうだな。上が何隠してるのかは知らないがこのギルドは無くならない」


ギルド側から何も通達が無く毎日減っていく冒険者(仲間)達、それはこの街のギルドに所属する者として、多大なる不安となっていた。

段々と寂れていく冒険者ギルドへと希望を捨てない様に、各々が語りかける。


「それにしても、ギルドマスターが探してる奴ってのは一体何をしたんだ。

そいつのせいでこんな状況になっているって話だったが」


最近冒険者達の間で話題となっている人物。ギルドマスターと領主が直々に捜索依頼を出し、魔法士ギルドが庇い、商業ギルドが背後に着いたと噂されているその人物について、皆が噂していた。

領主に至っては金貨100枚という多大な報酬を用意してまで捜しているその者は未だ見つからず、情報すらほぼ上がらなかった為に噂が噂を呼び、現在では血に飢えた吸血鬼だったり、傍若無人の老婆だったり、狂った狂人だったりとかなり間違った方向へと想像がなされていた。

そして最終的に行き着いたその者の呼び名、それは…


「何をしたかはギルドが一向に話さないから分からんが、どうやら今日街中で見つかったらしいぞ」


「え!?『歩く金貨』見つかったのか!」


そう、『歩く金貨』。


捕まえるだけで多大なる報酬を得られる事から、最終的にそう呼ばれる様になった。


「ああ、街中を普通に歩いていたそうだ。勿体無かったな、俺達も早めに戻っていれば捕獲に向かえたんだが」


「あー、くそ!折角の金づるがー!」


逃した魚を後悔して、人の少ない二階で一階と変わらずワイワイと騒ぐ面々。

そんな一団へとかなり歳のいった初老の男性が近寄っていく。


「おう、お前ら久しぶりだな」


「テールさん!戻ったんですね!」


「丁度ついさっきな。それにしても、どうしたんだ、お前達がそこまで騒ぐなんて」


「あー、テールさんは出てたから知らないんでしたね」


一団はテールへと、現状を説明する。

飛び交う偽情報も含めて面白おかしく。

当然それは笑い話となると思っていた一団だが、テールは一向に笑わない。



「それではなんだ、その『歩く金貨』とやらは未だここに連れてこられてないんだな」


「そ、そうです」


真剣な顔でそう語るテールに冒険者達は困惑しながら返答する。

そんな面々の表情すら気にすることもなく、テールは深いため息をつく。


「はぁ…最悪だ…例のあの事を思い出す」


「例のあの事?」


「あー、悪い気にしないでくれ」


誤魔化す様に苦笑いを浮かべるテール。

だが、頭の中では、昔のトラウマが巡り、動揺を隠せないでいた。

小さな声で、『閉じ込め…逃げられない…』と呟くテール。

その姿に、不安を感じた冒険者達は、気分替えにと話を続ける。


「そういえば、『歩く金貨』の名前ってなんだった?」


「あー、皆が『歩く金貨』って呼んでたからな。

えっと確か『ツミキ』…いや、『ツモリ』…」


「いやいや、確か『ツムグ』だったはずだぞ」


よかった、モリコでは無かったと、冒険者のその一言にテールは安堵の息を吐く。

だが、そんな安堵すら軽く消し去る言葉が語られる。


「あー、そうだそうだ。確か『ツムグ オトギ』だったな」


「お、『オトギ』……」


それだけ呟くと、テールは自身を守る様に両腕で力強く体を抱きしめる。

必死に抑えようとも、体は無意識に震え、瞳には涙がたまり、立つ事すらままならなくなってしまったのか、ズルズルと地面へへたり込んでいく。

長年居る冒険者として皆の表に立って動いていた姿など、今のテールには既になく。

お化けを怖がる子供の様に、逃げられない恐怖から、必死に自身を守ろうと耐える矮小な姿を見せていた。


テールにとって、『オトギ』の名はそれ程のトラウマであり、踏んではならない地雷。

だが、そんな事を知らない冒険者達は震えるテールに気づかずに続けていく。


「今も誰かが強制連行に行ってるだろうし、時期にここに連れてこられるだろ」


「確か、『黄金女帝』が賞金目当てで張り切ってたって噂になってたぞ」


「うわ、まじか。SSSランクに目をつけられたらもうどうしようもないだろ。

俺達は素直に諦めようぜ」


気楽にそんな事を笑いながら語る冒険者達。

だが、その場で一人、ただ事ではない表情をした者が居た。


「き、強制連行だと…!ふざけるな!誰でもいい、今すぐ力ずくで止めてこい!」


血走った目で訴えかける様にそう話すテール。口から泡を飛ばし、力強く語るその姿は、何時もの冷静さなど無く、ただ生き残るための必死さだけが浮き彫りとなっている。


「いや、どうしたんですかテールさん。多分もうそろそろ連れてこられるだろうからそんな慌てなくても「分かってねぇ!!!」」


半笑いで軽く語る一人にテールは強く反論する。


「またあの地獄を繰り返したいのか!!お前らは知らないかもしれないが『オトギ』だけには何が何でも手を出しちゃならないはずだ!!」


この街で昔起こった残酷な光景を思い出し、テールは盛大にキレながら話す。

それも当然。この男は昔、冒険者ギルドに取り残されはしなかったが、外で結界を破壊しようとしていた1人。

所謂、『ばあちゃんの被害者』の1人だった。


「ふざけるな馬鹿野郎!誰一人この自体を止めなかったのか!

ラークやサラスはどうした!彼奴らが居たら間違いなく止めていただろうが!!」


「…テールさん、2人は少し前にギルドを去りました」


そう、以前から冒険者ギルドへと居り、昔の光景を知る者達は、遠くへと出ていたテールを残し、『オトギ』の名が冒険者ギルドから発表された当日に、ウェルドの街から姿を消した。

冒険者ギルドに直訴するでもなく、周りに注意を及ぼすでもない。

只々静かに、見つからない様にこの街から出て行ったのだ。

それは、自分たちは『オトギ』には関わりたくないと如実に物語って居る様に。


「くっ…俺ももう少し早く戻っていれば…」


後悔先に立たず。

後悔を嘆き、不運を呪いながらもテールは指示を飛ばす。


「お前ら、このギルドを潰したくなければよく聞け!まず、強制連行をしに行った奴ら、すぐに止めてこい。

そして、もし最中だったのならば真摯に頭を下げろ。

恥とかプライドなんか捨てて謝れ!

もし、少しでも横暴な態度などとってみろ…あとで地獄以上の苦しみとなって自身に返ってくるからな…」


「「「「わ、分かりました」」」」


その返答と共に冒険者達は駆け出していく。

テールのその姿はそれ程までに冒険者達へと緊急事態だと訴えかけることができていた。

また、普段のテールが嘘を吐く事の無い、真摯な性格が相まって、ただ事では無いと冒険者達は行動を始める。

冒険者ギルドの知らない、冒険者達の戦い。

それが、ここに始まり…








「おい!ドアが開かねぇぞ!!」




すぐに終わった。


ドアが開かない。

その事実はテールを簡単に絶望へと陥れる。

まるで昔の再現が行われているように、騒ぐ冒険者達。

だが、今回テールにとって違うのは…


「…こ、今回は中か」


室内に入っているという事。

昔見た、室内から解放された冒険者達の発狂した姿。

それが、テールの頭の中で何度も繰り返し映し出される。

更なる絶望へと引きづり落としたいのか、当時と変わらないより鮮明な記憶が何度も。


顔は既に血の気が引き、足も手も震え続け、止める気力すら湧かないテールが見つめる先。

その虚空へと何の偶然か、急に変化が訪れる。

宙に音もなく、いつのまにかふわっと現れ、全てを見下ろすように見つめる少年らしき狐面の人物がそこにいた。

その狐面は、軽く周囲を見渡すと、最後にテール止めが合う。

まるでニヤリと微笑んだようなその仕草にテールの心臓が鼓動を早めていく。


『冒険者ギルドの皆、こんにちは。

俺はツムグ オトギ。あんたらが探している者だ。

いい加減、追っ手がしつこいので身勝手だがこのギルドを隔離させてもらった』


「ま、間違いない。『モリコ オトギ』の関係者だ…」


傍若無人なその姿に、テールは恐怖と絶望を混ぜ合わせた視線を向ける。


だが、その存在を知っている者は、現在テールのみ。

いきなり閉じ込められ、上から目線で話す不審者が現れたとなれば、当然冒険者達から…


「ふざけんな!早く出せ!」


「降りてこい、ぶっ殺してやるからよ!」


「頭おかしいんじゃないのこいつ」


当然のように暴言が飛び交う。


『ピーチクパーチクと煩いな。雛鳥かっての。

まぁ、いいか。いうこと言ったら俺には用はない。

閉じ込めたのだが、出たけりゃ自由に出て構わないからな。

出れるのであればの話だが』


「ああ、出れないんだろうな…」


確信したようにテールは呟く。


『それと、ばあちゃんの二番煎じは嫌だったんでな。しつこいお前らに、俺からのプレゼントだ有り難く受け取ってくれ』


遊んでいるような、楽しげな口調でそれだけを呟き、狐面はふわりと宙から消え去る。

まるでそれは白昼夢。

夢の世界のような現実に、冒険者は皆、去っても動けずにいた。


―――カサカサ…カサ…


だが、静まり返る冒険者ギルドの中、誰しもが固まり続ける中で、唯一動き出すものがいた。

それは、人でもなく、生き物でも無い。

それでも、自我を持った物体。

狐面が、楽しげに残していったプレゼントがひとりでに花開く。







此処は、閉じ込められた冒険者ギルド。

地獄はまだ始まったばかり。







こんばんは、ペンギン一号です。

今回は冒険者ギルド回。

せっかくなのでギルドマスターは出さずに書いてみました!

楽しんでいただければ幸いです。


次回は、各ギルドマスター回。

冒険者ギルドの事態に、各ギルドの取る選択は…


是非お楽しみ下さい。

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