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御伽噺に導かれ異世界へ  作者: ペンギン一号
夏の最後の思い出に
64/75

双子と散策街中を

散策回?の筈です。





Side ジェイド




領主館、執務室。そこでは、いつもと変わらず。領主による執務作業が淡々と行われていた。

襲撃騒動から数日が経ったことにより、領主としての執務は一息つき、漸く訪れた日常をまったりと過ごしていた。


「よし、これで最後か」


「はい、今日の分は以上になります」


隣に座る文官の言葉に、ジェイドは長い執務で凝り固まった体をほぐすように大きく背伸びをする。


「それでは、失礼いたします」

処理済みの書類の束を持ち上げ、執務室から文官が去っていく。

静まり返る中、ジェイドは一人考え事をしていた。


漸くここまで落ち着いたか。街も日常を取り返しつつある。このまま順調に進めばいいんだがな。

窓から見える街並みを眺めながら、思い馳せていく。




―――コンコンっ


「失礼致します」


室内へと入ってきたのは、一人のメイド。


「何かあったのか?」


「魔法士ギルドサブマスターがお一人でいらっしゃいまして、どうやら緊急のお話のようでしたのでお連れ致しました」


テッドか。緊急で訪れるなど珍しい。何かしらがあったのか?

メイドの背後から、件の者がグラッドの前へと進んで来る。


「事前連絡もなく、申し訳ありません。緊急の要件だったもので」


「緊急ならば、仕方ない。それよりも、その要件とやらを聞かせてもらおうか」


思い当たる節がない。最近では、魔法士ギルドも急激に回復していると報告を受けている。

何かしら問題が起こるとも思えないのだがな。

そんな事を思うグラッドを見据えながら、叩きつけるように言葉を告げる。




「ツムグ オトギが、戻ってまいりました」


「やっとか!!」


この数日間はとても長かった…早く、カインの件を謝らなければ。

敵対する前に…


「それで、今どこに」


「申し訳ありません。魔法士ギルドとしましても、あの者に強制させるわけにもいかず、現在は街中を散策しているかと思われます」


「それは、しょうがない。私であっても、あの者に強制は出来ないのだ。街に来た事を、報告に来てくれただけでも、とてもありがたい」


待ちに待った情報。街にいると知れた今、後は見つけるだけとなったのだ。後はどうやって出会うかだが…


「お待ちください。報告はまだあります」


「まだだと?」


「はい。どちらかと言えば、此方を伝えることが今回ここへ出向いた目的になります」


これ以上の目的だと…。グラッドは薄ら寒い何かが背中を這うのを感じる。


「魔法士ギルドで会ったあの者に言われたのです。『もし、強制しようものなら、更地に変える』と」


テッドの発言に、グラッドの時が止まる。『更地』という単語が、頭の中で何度も反芻されていき、繰り返すごとに徐々に意識がはっきりしていく。


「…更地とは何処をするとかは?」


「言っていません」


「そうか」


元は、強制連行しようとした私達の所為なのだろうが…あの者をかなり怒らせてしまったようだ。

どうしたものか…我々は、未だに新たなオトギの者についての情報なども殆ど無い。


「和解も難しいだろうな…」


グラッドはこれから訪れるであろう現実に対して、悲しげな呟きが、無意識に口から漏れていた。


「それでは、私はこれで」


「有難う。この礼はいずれ」


「いえ、それよりも、この街に住む者として。そして、魔法士ギルドサブマスターとして、お願い致します。

選択は間違うことのないように」


それだけを残してテッドは去っていった。


後に残ったのは、一人残されたグラッドだけの重苦しい空気の漂う執務室。

だが、このまま動かずに諦めるわけにもいかない。

頭を切り替え、行動を開始していく。






――――――――――――







「お兄ちゃん!!」


紡が街中をぶらり散策していると、見慣れた少女から声がかかる。


「おー、久しぶりだな」


「うん!今日はうちに泊まっていくの?」


「ああ、その予定だ」


「やったー!」


毎度の事ながら、元気だな。

はしゃぐマリーをツムグは暖かい目で見つめる。


「はい!」


「ん?どうした?」


「お兄ちゃん、すぐ何処かいくから、手を繋いどくの」


「ふふっ…そうか、ならよろしく頼むな」


「うん!」


マリーと手を繋ぎながら、紡は『守護者の休息』へと、向かっていった。



「ただいまー!お父さん、お兄ちゃん来たよー!」


「そ、そうか…漸く…よかった」


うお…安心するゴリラなんて珍しいな。

宿屋に着き、マリーが告げると、軽く窶れており、露骨に安心した様子を見せるディーンがいた。


「何かあったのか?」


「い、いや何もない!それよりも、今日は泊まりか?」


「ああ、一応そのつもりだ。今回は3日ほど頼む」


ディーンへと、銀貨2枚を差し出しながら、紡は告げる。


「ほら、釣りだ」


「確かに」


「私お母さんに伝えてくるね!!」


マリーは奥に走り去っていった。

その背後を、二人で見つめていると、急にディーンが告げる。


「ツムグ…こんな事を、俺がいうのもなんだが…出来ればでいいんだ。次は帰る時にマリーにも顔を見せてあげてくれ…」


「…もしかして」


「ああ、呼ばなかった俺にめちゃくちゃキレていた。ここ数日言葉すら交わしてくれない程に…」


そんなにもマリーちゃん怒っていたのか…想像出来ないな。


「悪かった」


紡は、娘に悩む、頑張るお父さんへと、無意識に謝罪していた。





「「ついたー!」」


「遅かったわね」


「悪いな。ちょっと魔法士ギルドへと寄っていて遅れてしまった」


「いえ、いいのよ。それよりも、私はマリーちゃんの所に行ってくるわ」


何よりも一目散に、フォルは室内を後にしていく。


「あいつもにゃん吉みたいだな」


その姿に、紡は笑みが漏れていた。


「お兄ちゃん…外行きたい…」


「僕もー!」


「そうだな。まだ時間はかなりあるし、散策でもしに行くか」


現在時刻は大体2時ほど。

見て回るだけなら、問題ない時間だろう。


再度、双子を連れ、紡は下へと降りて行った。


「あら?何処かに行くの?」


「街を散策にな」


そこには、頭にフォルをジョイントしたマリーちゃんがいた。


「フォルちゃん…行っちゃうの…」


「大丈夫よ。私は今日、マリーちゃんとずっと居るから。いいわよね?」


「いいが、マリーちゃんの邪魔にならないならだが」


「邪魔になんかならないよ!!」


「そうか」


遠くで、ゴリラが親指立ててるし、大丈夫なんだろう。


「それじゃあ、悪いがフォルの事を頼むな」


「やったー!フォルちゃん、いっぱいお喋りしよー!」


「ふふっ…ええいいわよ」


この二人もなんか姉妹みたいだな。

嬉しかったのか、二人は、楽しげに抱き合っていた。







――――――――――――――――







「あっち行くー!」

「ダメ…こっち…」


「時間はいっぱいあるんだし、喧嘩はするんじゃないぞ」


双子に引っ張られ、紡は街中を探索して行く。

紡自体、屋台巡りぐらいしかしていなかった為に、なかなか面白く、有意義な時間を過ごしていた。


「わぁ!ここ大きい!」


「行ってみよう…」


色んな物に興味を示す双子が、次に指定した場所。

そこは…



「二人とも、悪いがここはやめてくれ」


「「なんでー?」」


だって此処。冒険者ギルドじゃん。

冒険者ギルドへと入りたがる双子を必死になだめる。


「ここはな、冒険者ギルドって言って、危険なエルフや、トチ狂ったエルフがいる立入禁止の場所なんだ」


「兄ちゃんが敵対してるあの?」


「そうだ。だから、あまり近寄らないように…」


面倒に巻き込まれないようにと紡が早く離れようと動くが…それは叶わない。


血が繋がっていなくとも、目の前に立つ可愛らしい二人は紡の弟と妹である。狂った戦闘狂のだ。

そんな二人の前に、敵対している者達の本拠地が見えたのならば―――選択は一つだけ。





「あれ…壊さなきゃ…」

「更地にしてくるー!」





双子もきちんと、紡の意思を受け継いでるようだ。

破壊をしようと走り出して行く。


「まてまて!そんな事をしたらダメだ!」


「「なんで?」」


はぁ…そんな可愛らしく首を傾げられてもな…

誰だよ。この二人にこんな教育を施した奴は。


「ダメなものはダメだぞ。敵対はしているが、これは放置していていい。

こういうのは、関わらないのが一番なんだよ。

わかったな」


「「はーい!」」


ふぅ…危なかった。もし破壊していたら、また拠点に逆戻りだったな。

聞き分けの良い双子の頭を撫でながら。紡は安堵する。

問題が起こらなくてよかった…


「冒険者ギルド前で堂々とそんな事を言う奴が居るとは」


別の問題が浮上した。

冒険者ギルドの目の前で、そんなやり取りをしていたのだ。当然そこには多くの冒険者が居る。

気づかないうちに、三人は冒険者達に囲まれていた。


「なんだお前ら」


「冒険者ギルド前で、調子に乗った事をほざいているバカなガキがいたから俺たちが教育してやろうと思ってな」


集団のリーダーだろうか。そいつが告げた途端、周囲からは下卑た笑い声が多数聞こえてくる。


「一応、きちんと詫びを入れて、有り金全て置いていけば許してやるよ」


冒険者ギルドはいつのまにかチンピラ集団になっていたようだな。


「断る。俺は今忙しいんだ。お前らの相手をしている暇などない」


「そうか、それならば教育決定だ」


冒険者達が紡へと剣を抜き、襲いかかる。


面倒だ。これだから早く去りたかったんだがな。


「兄ちゃん、僕がやっていい?」


「ダメ…私もやりたい」


「いや、時間の無駄だから俺がやる。二人は、目を瞑っとくようにな」


迫り来る剣を軽々とかわしつつ、紡は全ての者達の体に触って行く。


「どうやら、避けるのは得意みたいだな」


「そりゃどうも。それより、最終通告なんだが、お前ら、ここで引く気は無いか?」


「冒険者ギルドをコケにしたんだ!俺達が引くわけが「そうか、分かった」」



―――パチン…


紡が指を弾く共に、冒険者達に変化が生まれる。

身につけていたもの全て。剣から、装備。道具袋に至るまで、全てが地面へと落ちていく。

それは落ちると粉々に砕け散り、元の形など分からないほどにあたりへと散らばる。



『きゃーー!!』



同時に周囲に広がる女性達の叫び声。

それも当然。そこに居たのは全裸の男達。

通りすがりで、露出狂に出会った女性達は顔を真っ赤に走り去っていく。


「さあ、変態共。まだやるか?」


「てめぇ!何しやがった!」


「何って…変態の量産?」


危険人物である此奴らを変態へと貶める慈善作業だな。


「俺達にこんな事してどうなるか分かっているのか…お前はこれから、冒険者に狙われ続ける事に…」


「そんなのは今更だ」


今も既に探してるらしいしな。


「っ…」


平然とした紡の姿に、冒険者達は言葉が詰まる。

そこに訪れる乱入者。


「お前ら動くな!」


次は何だよ…

その場に訪れたのは、騎士の格好をした者達。言わずもがな、憲兵だ。

先の女性達から、通報が有ったのだろう。数人を引き連れて、すぐに犯罪者と分かる全裸の男達はすぐに捕らえられていく。

最初は喚いていた者達も居たが、自身の姿を鑑みたのだろう。最後は素直に連れられていった。


「何だこの状況は…そこのお前、説明してくれ」


近くにいた、一般人らしき者から、事情を聞いていく。


「それでは、そこの少年がこの状況を作ったのだな」


うわー、こっちをめっちゃ見てるわ。


「そこのお前。詰所に来てもらうぞ」


「断る」


そんな面倒なとこに誰がいくか。


「…それでは、強制になるがいいのか?」


「さらに変態を増やしたければするといい。俺は憲兵でも構わずにやるぞ」


「…それは御免被りたい。はぁ…それでは、一応名前を聞いてもいいか?」


身分確認のために、兵士はその場で状況聴取を行なって…





「ツムグ オトギだ」





その返答に場は静まり返る。

冒険者ギルドから名前の通告が有ったために兵士、冒険者の中に今やその名を知らぬ者などいない。

ほぼ全てのギルドが気にかけ、領主すらも探している者の名前。

それが、目の前の少年から発されたのだ。

懸賞金すらかけられている、ツチノコのような存在が急に目の前に現れた。

その事実が、そこに居た者達の思考を奪い去っていく。

対話していたからか、その場でいち早く復活を果たした憲兵の隊長は続ける。


「何か証明出来るものは?」


「ほら、魔法士ギルドカードだ」


紡が差し出したカードに映る名前。間違いようもなく『ツムグ オトギ』という名前が目に入る。



「おい!お前、早く領主館に報告してこい!!!」



隊長の怒号とも思われる叫びで、事態は急変していく。


「もういいか?そろそろ二人を連れて散策に戻りたいんだが」


なんか、注目されてるし早く去りたい。


「も、申し訳ない!もう少しだけお待ち下さい!」


先程までの態度と違い、隊長は丁寧に頭を下げる。

隊長は気づいていた。このまま目の前の少年を見逃してしまったら、更に捜索に時間がかかってしまう、下手をしたら見つからないのではないかと。

ここ数日、この街の様々な勢力が、捜索を行いそれでも手掛かりすら見つからなかった紡に、そう思うことも、相違無い事であった。


「はぁ…俺は襲われただけって事じゃダメなのか?」


「い、いや、そういう事ではなくてだな…」


この事件を解決する事から、領主様の元へと連れていかなければならないと、目標が変わってしまった隊長は必至に引き止めにかかる。


「面倒になってきたな。いっそのこと…逃げるか」


「お願いします。其れだけはご勘弁ください」


その様なやり取りを繰り返していると、先に走った兵士が戻ってくる。

その背後には…



「うわ、何でおっさんが…」



騎士団長が私服姿でついて来ていた。

あのおっさん、しつこいから嫌いなんだがな。


「き、騎士団長!よかった…」


「待たせて悪かった。もう大丈夫だ」


隊長は安心からか地面に崩れ落ちる。其れほどまでに紡の相手をすることは精神的にきていたようだ。


「久しぶりだな」


「俺は会いたくなかった」


騎士団長へと平然とそう告げる少年にその場にいた皆の息がつまる。


「そう言わないでくれ。あの時は悪かった」


「はぁ…まあいい、それで今回も強制連行か?」


だとすれば即刻逃げるんだが。


「いや、今回は君にお願いに来たんだよ。

以前あの様な事をした私がいうのも何だが、領主様へと一度会ってはもらえないだろうか」


そんな深々と頭を下げられてもなぁ。


「そうだな…二つ条件がある」


「我々が出来る事ならいいが…」


「簡単な話だ。先ずは、俺の捜索を解除させろ」


これ以上付きまとわれても嫌だ。


「ああ、問題ない」


「そして、もう一つ。俺は今、そこの二人と街中を散策していたんだよ。

だから、何でもいい。二人を楽しませる様なものを見せてやってくれ」


さっきからずっと待たせてしまっているからな。


「そうか…それも承知した」


予想だにしなかった要求に、騎士団長は笑顔で了承する。

これにより、紡達は周囲を数人に囲まれ、まるで凶悪犯の様な厳重体制の中、騎士団長と共に領主館へと向かって行くのであった。




こんばんは、ペンギン一号です。

漸く領主と出会いそうですね。

折角なので、此処から面白く持っていければいいのですが…

そういえば、最近1日のpvが1000を超えていて泣きそうになりました。

始めたばかりの拙い文章ですが、沢山の方に読んでいただけると有難いものですね。

今後も、頑張っていきますので是非宜しくお願い致します。


次回は、漸く出会う領主回。

さてはて、どうなることか。

是非お楽しみ下さい。

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