襲撃 ガッカリ 街中で
一階へと降りていくとディーンさんとローサさんが何者かと話している。
「そんな奴はここにはいない帰ってくれ」
それはどうやら冒険者の様だ。
「わかった、もし見つけたらギルドへと報告してくれ」
その言葉だけを残し帰っていった。
「あら、おはよう」
「おはよう、かなりぐっすり眠ってたみたいだな」
「ああ、この宿が心地よくて寝すぎた」
それが嬉しかったのかディーンは喜ぶ。
ゴリラが喜ぶ顔は中々の迫力があった。
「あ、洋服ありがとな」
換えがなかったから有り難かった。
「いや、それくらいいいさ。サイズは問題ないか?」
「ああ、大丈夫だ」
そんなやり取りをしているとローサさんが真剣な目でこちらを向く。
「紡、この宿を、私たちを、この街を守ってくれてありがとう」
それはとても気持ちのこもったお礼だった。
真剣な目で言われとても気恥ずかしくなり、
「俺は自分がしたい様にしただけだ、礼はいらない」
そっぽを向きながら答える。
ローサさんは「そう…」と呟き紡を優しい目で見つめていた。
「それじゃあこれで、もう行くから」
恥ずかしさに耐えきれずそそくさと出て行く。
後ろからは「また来てくださいね」という声が聞こえていた。
――――――――――――――――
街中を歩いて行く。今回頭にはフォルを乗せ、他の面々は魔導書へと入ってもらった。
勝利の祝いか、街中ではお祭りの様な騒ぎが起こり、たくさんの人々が酒を片手に馬鹿騒ぎをしており大いに賑わっている。
道は大渋滞、避難から戻って来たであろう馬車が列を成し直線が出来ている。
少しずつしか進まない馬車がカタツムリみたいに感じながら横をすり抜けて行く。
街の広場では屋台もフル稼働しており串肉のおっちゃんも忙しく汗を流し客をさばいている。
勝利の余韻に浸る人々は皆笑顔で戦い前の街中とは一変しており、賑やかな町並みを取り戻していた。
さて、先ずは情報だな。
紡は情報を得るため魔法士ギルドへと向かって行く。
進まない人混みを避け裏道を通って行く。
そこは大通りからの騒がしい賑わいのみが聞こえる道であり、脇にはゴミなどが捨てられ荒れた道であった。
そこをすいすいと進んで行くと魔法士ギルド近くへとたどり着く。
さてと、大通りにでるか。
紡は大通りへと出る道を探す。
色々と探し、面倒になって空を飛んで行こうかと考えていると…
後ろから急に気配を感じる。
「おぉい、やっど見つけだぞぉ」
そこにいたのは真っ赤な剣から禍々しい魔力を吹き出しながら佇む男がいた。
目の焦点は合ってなく、ただ虚ろに此方を見ながらニヤニヤと笑っている。
まともに喋る事も出来ないそいつは剣の影響かその男には血の気が無く、青白い肌が屍人を思わせる。
サイコパスの様な雰囲気を醸し出すその男と、禍々しく輝く赤い剣が異様な雰囲気を作り出していた。
「誰だこいつ?」
見覚えのない襲撃者に疑問を覚える。
こんな奴に身に覚えはない。通り魔か?
こんな屍人みたいな知り合いなんていないはずなんだがな。
「おれはまげでないんだぁ!」
意味不明な言葉を放ちながら此方へと向かってくる。
まぁ、敵には違いないし去勢しとこ。
迷いもなく股間へ木刀を向ける。
「縮地」
その場から紡が消える。
「どごいっだぁ!」
その場から煙の様に消えた紡をそいつはキョロキョロと見回す。
「はぁ…なんだ、雑魚か」
紡がいたのは足元だった。
回し蹴りで足を払い男を転けさせる。
背中から倒れた男は衝撃に動けない。
「あーあ、襲撃に来たからどんだけ強いのかと思ったが期待はずれか」
その一言を残し、男の股間へと木刀を突き下ろした。
ブツン…
今ここに一人の男の二つの果実がもぎ取られた。
泡を吹き倒れる男を片目に、木刀を仕舞いながら言う。
「フォル、こいつの運全部吸い取っちまえ」
この男死体蹴りも忘れない。
「え…いくらなんでも可哀想じゃない?」
フォルですらすこし引いている。
「敵対した時点で容赦するつもりはないからなぁ…」
悩んだが納得してフォルは運を全て吸い取った。
「吸い取ったけどこの運はどうしようかしら」
あー…そういや与える事もできたな。
「好きにしていいぞ。なんならマリーちゃんにでもあげればいい」
「いいわねそれ!そうするわ!」
どうやらこの男の運の行き先は決まったようだ。
問題はこいつの使っていた剣だが…
「この魔力狼のやつとそっくりなんだよなぁ」
禍々しく黒く光る魔力、それは戦場で見たカースフェンリルのあの力と酷似していた。
でも俺だけじゃ分からないなぁ…
んー、専門家に聞いた方が早いな。
「「どうしたのー?」」
俺はコアとチコを召喚した。
「いやな、そこで伸びてる奴がそこの剣を使っててな、多分なんだがこの魔力狼と似ている気がするんだよ」
「んーちょっとみてみるねー」
二人で剣の周りをくるくる回りながら色々な方向から確認して行く。
「…じゃない…?」
「…だねー!」
「「うんわかったよー!」」
どうやら見当がついたようだ。
「これはあの狼の魔力と同じだねー」
「でも…魔力って言うより…呪力って言った方が…いいと思う」
ほう、やはり一緒だったか、ところで…
「呪力ってなんだ?」
「呪力って言うのはね、強い負の感情が混ざった魔力であり、色々な物へと変化を与える危険な力だよ!」
「普通は魔力って純粋な物なの…それに強い負の感情が混ざり込む事で…危険なものに変わるの…基本いい変化は見込めないから…お兄ちゃんは近づいちゃダメなの…」
まぁ、あの男を見る限り危険なものとは思っていたがそこまで危ないものとはな…
この剣も出しっ放しだと危ないだろ。
どう処理したものか…
俺は一つ案が浮かぶ。
「やってみるか」
そっと手を剣へと被せる。
さて、実験だ。俺は魔法を発動する。
すぐに剣は白い塊に包まれ周りに振りまいていた呪力は一切漏れて来ていない。
その姿は白い枕の様であった。
よし、成功した。
俺はニヤリと微笑む。
「何をしたのかしら?」
「ああ、コアとチコの話を聞く限りこの剣は危険みたいだったから封印させてもらった」
【お菓子魔法流 封印術 マシュマロ封印】
中に呪力耐性のマシュマロを作成し外側を硬質マシュマロで包み込む。咄嗟に思いついた封印魔法だ。
説明すると、フォルと共にコアとチコも驚いている。
「フォルはわかるけど、お菓子魔法が使えるコアとチコもなんで驚いているんだ?」
「兄ちゃん僕達もそんな使い方した事ないよ…」
「お兄ちゃん…ビックリ人間…」
チコよキラキラした目でそんな事を言わないでくれ。
でもマジか、こんな便利魔法を持っていながら使い方を限定していたのか…俺はかなり驚いていた。
「コアとチコ、ご主人は今後もとんでもない事を仕出かすだろうから今のうちに慣れておく様にしておきなさい」
「「はーい!」」
隣ではフォル先生による授業が繰り広げられていた。




