手伝い お使い 戦場で
side チコ
お兄ちゃんに言われ、よく分からない女の子を持ちながら飛んでいく。
時折、顔の怖いおじちゃん達がこっちを見つめてくる。
怖いけど、お兄ちゃんのお使いをきちんとするためだもんね、頑張らなきゃ!
怖がりながらも真っ直ぐ飛んでいった。
「「カティナ!!」」
奥から必死な形相の男の人と泣きながら走る女の人、二人の人間が此方へと近づいてくる。
あの人たちに渡せばいいのかな?
よく分からず地面へと下ろした。
二人はカティナと呼ばれた少女を拾い上げる。
お付きの人が状態を確認する。
体はボロボロだが、命には別状がなかったことを知り深いため息を吐いていた。
んー…届けたしもういっちゃってもいいのかな??
ふわりと宙に浮き上がると、お兄ちゃんの所に戻ろうとする。
だか、そうはいかなかった。此方に気づいた男の人が話しかけてきた。
「誠に申し訳ない。私はこの街の領主をしているグラッド ウェルドという者だ。先程は娘の命を助けて頂き誠に感謝している」
このひと、さっきのカティナちゃんのおとーさんなんだ。
「大丈夫…だよ…。私は…お兄ちゃんのお願いを…聞いただけだから…」
「そうか、お兄ちゃんっていうのは今あの狼と戦っている狐面の方なのか?」
「うん…お兄ちゃん…とっても優しいの…」
にゃん吉ちゃんと一緒に撫で撫でしてくれたお兄ちゃん。あったかい手に撫で撫でされてとても心地よかったの…。
「そうか、ならば早く彼の方に応援を出さなければいけないな」
グラッドは支援すべく支持を飛ばそうとする。
大変…!
急いで袖を握り支援をやめさせる。
「なんで止めるんだ、急いで助けないといけないだろ」
動きを止められたからか、グラッドはチコを軽く睨む。
「ひっ…」このおじちゃん怖い人だ。チコの中で確定した。
そんな中、「スパンッ」とグラッドの頭を叩く者がいた。
「貴方、こんな女の子を睨みつけるなんて何を考えているのかしら?」
そこには般若が立っていた。
「だが…」
「言い訳する前にこの子に謝りなさい」
「あ…ああ、すまなかった」
怖いおじちゃんを一蹴…このおねーちゃんカッコいい…!此方も確定したようだ。
「ごめんなさいね、私はこの人の妻のカリナですわ」
「私はチコなの…」
「チコちゃんよろしくね。それでなんでお兄ちゃんへの支援を止めたのかしら」
お兄ちゃんからの伝言しっかり伝えるの!
「お兄ちゃんが…狼と一人で戦いたいから…誰も来させないようにって言ってた…」
話を聞いた二人はとても驚いていた。遠目からでもわかる、誰が見てもあの狼は一人で敵対してはダメなものだと。
「でもお兄ちゃん危ないんじゃないかしら?」
「問題ないの…!お兄ちゃんは…せんとーきょーってのだから大丈夫って…にゃーちゃんが言ってたの…」
「それは…大丈夫じゃないと思うわよ…」
にゃーちゃんが大丈夫って言ってたから大丈夫なの。
チコはにゃん吉を信じきっていた。
「危険すぎる!今すぐに応援を出すべきだ!」
未だに粘ろうとするグラッド。
このおじちゃんしつこい…
「むー…言うことを聞かない時に…お兄ちゃんからの伝言があるの…」
チコは最終手段をとった。
「お兄ちゃんは…今回に限りオトギの名にかけて…あの狼はどうにかする…っていってた…」
「「なっ!?」」
それだけ言い切るとふわりと飛び上がり、もう用はないとばかりに紡のところへと戻っていった。
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side コア
戦場のど真ん中。狼と狐面が対峙する中、その近くに命懸けの戦場には似つかわしくない、可愛らしい少年がそこに居た。
その少年は、大きな鎌を片手に戦場を駆け回っていた。
鎌を振るたびに首が飛び、赤い血が吹き出る。
今まで冒険者が苦労して倒していたモンスターがチリのように片付けられていった。
「はやく終わらせて、兄ちゃんのとこに戻らなきゃ!」
言いつけを守る為にどんどんと首を飛ばしていった。
その為か、周りで体からシャワーの様に血の雨が吹き出す。周囲に降り注ぐ血の雨の中で戦う仮面を付けた男の子。其処だけ、猟奇的な光景をしていた。
数十分後には、結構な数を刈り取り終わっていた。仲間が次々に首を刎ねられていく恐怖からか、コアのいる所は空白地帯となっていた。
よし!早く兄ちゃんのとこに戻ろー!
言いつけを守った事を褒めてもらう為、コアは紡の元に戻ろうとする。
その時…
「俺たちもあの狼を討伐に向かうぞ!」
兄ちゃんの邪魔をする一団を見つけた。
遠くでは楽しそうに死闘を繰り広げている兄ちゃん。とても笑顔で戦ってる…
ダメ!あんな楽しそうなとこを邪魔させない!
コアはその集団へと飛んでいく。
「兄ちゃんの邪魔しちゃダメ!」
牽制のために地面へと鎌を振り下ろした。
「「「危なっ!」」」
急な攻撃に一団がギョッとした顔で固まっている。
ふう…よかった。
「兄ちゃんの邪魔しないようにね!」
コアはそれだけを言い立ち去ろうとする。
「待て小僧。此方に攻撃しておいてそれはないんじゃないか?」
うー…めんどくさい…早くにいちゃんのとこ行きたいのに。
「知らないよー。僕は兄ちゃんの戦闘の邪魔を誰にもさせないようにしてるだけだもん」
少しふてくされながら答える。
「その兄ちゃんってのは、彼処で戦ってる狐面のことだろ?俺たちはそれを助けに行こうとしてるんだがな」
「ダメ!誰にも邪魔させるなって約束なんだ!」
せっかく楽しそうに戦ってるの邪魔しちゃダメだし…
それにこの人達通したら多分犬死するだけだと思うしねー。
「はぁ…あの狐面も冒険者だろ?そんな独断は認められない。俺たちも冒険者として戦わせてもらう」
あれ??もしかして…
「おじちゃん達冒険者なの?」
「ああ、俺たちは冒険者だ」
冒険者達はカードを見せながら答える。
そっか…おじちゃん達は冒険者だったんだ。それならよかった…
「だったらよかったー!兄ちゃんは冒険者ギルドってとこと敵対してるから」
「「「「は?」」」」
まさかの返答に冒険者の一団は呆ける。
このおじちゃん達が行かないように色々考えてたけど、良かったー!冒険者なら敵じゃんか!
コアはおじちゃん達へと鎌を向ける。
「ちょっと待て待て待て!敵対!?あんな化け物みたいな狼と一人で渡り合ってる奴とギルドは敵対してるのか!?」
「うん!兄ちゃんがギルドマスターって人に確認してたもん!」
冒険者集団から「マジか…」という幾つもの驚愕が上がる。
「それで、おじちゃん達どうするの?あの、ギルドマスターって人と違って優しそうだから此処で引き返すなら僕はなにもしないよー?」
鎌をギラリと輝かせながら問いかける。
「わかった引かせてもらう。此処で消耗した上であの化け物狼と戦おうとは思えないしな」
「そっかー!よかった。おじちゃん達の首を刎ねずに済んで」
言いながら満面の笑みを浮かべる少年に冒険者集団はとてつもない恐怖を感じた。
よかったよかったー。これで完了だねー。あ、そうだ!
「おじちゃん達、僕これから兄ちゃんのとこに行くから、此処に誰も来ないように皆んなに言ってもらえない?」
「わかった…言っておく…」
うんうん!完璧だねー!
それじゃ、兄ちゃんのとこに向かおっかな!
「おじちゃん達よろしくねー!じゃあバイバイ!」
手を振りながら去って行くコア。それに律儀に手を振り返す冒険者達。その顔は引きつった笑顔をしており、コアが視界から消えるまでずっと手を振り続けていた。




