大群 騒動 異世界で 4
side 東門前 グラッド & Sランクパーティ 【荒野の狼】
戦闘が始まり数十分たち、グラッドは指揮をしながら敵に違和感を感じていた。
敵はモンスターである。基本的に統率のとれた行動をとったりなどはしない。
だが、今戦っているオーガは何かしらの意思があるような動きをしている。
ということは…
(この先に統率を取る何かしらがいるってことか…)
溢れ出る森の先、そこにいるであろう道の敵を睨みつけるように見つめていた。
オーガの謎に気づいたのはグラッドだけではなかった。
迫り来るオーガを掻い潜り、モンスターを刈り取っていく集団がそこに居た。
彼らはウェルドの街でここ最近Sランクへと上がった4人パーティであり、【荒野の狼】という名でかなりの実力を持ったパーティであった。
今回の戦いでは、Sランクパーティということもあり、最前線での戦闘を任されておりその名に恥じぬ戦いを繰り広げていた。
「なんかおかしくねぇかこのオーガ達」
通常ではあり得ないオーガ達の動きに剣士のドラットが問いかける。
「ああ、ドラットの言うようにこんなにオーガが統率を取って行動するなんておかしい」
「つまりはだ、ゲイルの言う通りだと、この先にこいつらを指揮する何かしらがいるってことだよな?」
「確実に居るだろうな…」
「そうか…」
リーダーであるゲイルは周りを見渡す。
「この中では俺たちが行くしかないだろうな」
「わ…私も行くのに賛成です!」
「女のサニーが行くって言ってんだ。男である俺が行かないなんて言うわけにゃいかんだろ」
斥候のウィストの一言に男達は頷く。
目的は森の中、勝利のため【荒野の狼】はモンスターの指揮官討伐を目指し行動を始めた。
―――――――――――――
戦場は加速して行く。
現状敵は7000ほどにまで減っており順調に進んでいっている。
ウェルドの死者は50人、負傷者は100人ほどであり、負傷者はポーションで回復させ前線へと復帰を繰り返していく。
このまま順調にいけば勝てる。皆の頭に絶望の戦いの中一筋の光が見えた。
希望がみえるとより一層戦闘は激化していきかなりのスピードで狩りとられていく。
戦闘開始から2時間が経ち、ようやく残り半分に差し掛かった時…
東門側の森の奥から【正義の鉄拳】のリーダーであるクラストが飛び出して来た。
よく見ると左手の肘から先が無くなっており、右腕で抑えながら必死に走っている。
かなりの大怪我に他の冒険者達が助けに入る。
ボロボロになりながらも何かから逃げようとしている。その大怪我を負っているのがSランクとわかると周囲の冒険者は驚く。
治療所へと運ばれながら、クラストは「あの狼には…手を出してはいけない…」と仕切りにボソボソと呟いていた。
無事、クラストが治療所に連れて行かれた後も未だに激戦が繰り広げられている。喧騒が響き渡り至る所で繰り広げられる戦いの中、それは突然現れる。
―――スタッ…
戦場のど真ん中、空から何かが跳び降りてきた。
音もなくおりて来たそれは異様な存在感を放ち周囲の者共の視線を集める。その視線の先、空から跳んで来たのは真っ赤な毛皮の狼であった。
誰かの手を口に咥えて佇んでいる。
その毛並みは美しく輝かしい出で立ちをしており、体からは周囲に振りまくどす黒い魔素を発生させており、その影響か周囲が恐怖に染まり上がる。
突然に現れた、見るからにわかるSSランク越えのモンスターの出現に見えていた希望が折れ去る。
「もうダメだ…」などの呟きが流れ、皆が絶望した顔をしている。
そんな中、心が折れてない者もいた。
その一人…それは戦場にはとても似つかわしくない13歳程の女の子だった。
この現状を払拭するためか、剣を片手に狼へと飛び出していく。
後ろから「っ…!?やめろいくな!!」と、グラッドの制止の声が聞こえている。
少女は振り向きもせずに狼に向け突貫していき、ついには目の前に対峙する。
目の前に向かい狼に対峙する。目の前に来ることで感じるどす黒い魔素に改めて恐怖を感じ、体を震わせながら、必死に対峙する。
「貴方を倒すことができない限り私達に勝利は無い。私の大切な街の為、家族の為、勝たせていただきます」
精神力で恐怖をねじ伏せ剣を狼へと向ける。
それを見つめていた狼がその場から消える。
現れたのは少女の目の前だった。
「きゃっ……!」
撫でるような狼の一撃で少女は数メートル吹き飛ぶ。
意識は失っていなかったようで、ヨロヨロと立ち上がり再度狼に向かい構える。
(折れるわけにはいけない!)
少女の目が強く語っていた。
少女を見ながら狼はまるでおもちゃを見つけたようにニヤリと笑うと追撃を行なっていく。
そこから数発ほど繰り返される狼の遊び。救出に冒険者が来た時には既に満身創痍の状態であった。
血を吐きながらも立ち上がり対峙する少女。足は震え、剣を持つ握力ももう無く、立つだけが精一杯といった面持ちをしている。
狼はもう遊び飽きたとばかりにおもちゃに前足を振り下ろそうとする。
「やめろおおお!!」
グラッドの叫び声と共に少女降ろされる一撃に誰しもが間に合わないと諦めていた。
もう体も動かない。少女自身も死を覚悟しながら攻撃を受け入れていた。
「お父様、お母様。ごめんなさい」
そんな呟きと共に目を瞑る。
…一向に痛みが来ない。待てども来ない攻撃に少女はゆっくりと目を開けた。
そこにいたのは、一般的な服を着込み狐のお面をつけている少年がいた。頭の上には子猫を乗せており、木刀で狼の攻撃を受け止めていた。
その狐が少女へと問いかける
「悪いが、こいつと戦いたい。貰ってもいいか?」
もう声すら出せない少女は最後の力でコクリと頷く。体がふらつき限界が訪れたのか少女の視界は暗闇に飲まれて言った。




