ギルドで騒動異世界で
飛行を手に入れたことにより移動速度は更に上昇していた。障害物や、時間のかかる戦闘もない。今までにない程、順調に進んでいき森の出口へとたどり着く。
「これから門へと向かう、魔導書の中に入っていてくれ」
二匹を魔導書へと仕舞うと門に向かって歩みを進める。
検問所では以前と同じく若い兵士とラークが立っていた。
ラークがこちらに気づき手を振ってくる。
「おう、久しぶりだな」
「そうだな、ほらギルドカードだ。通ってもいいか?」
そこの奴が絡んでくる前に急いでいかないとな。
「うむ、問題なし。通っていいぞ」
前回絡んできた若い兵士がこちらを睨みつけていたのでめんどくささを感じ、足早にその場を離れていく。
町に入ると以前と変わらずなかなかの賑わいで多くの人が行き来している。
先ずは金を手に入れるか…
今まで貯めまくった魔石を換金するべく冒険者ギルドへと向かっていく。
ギルドでは以前の時間より早かったためか人は少なく、昼前から酔っ払っている何組かのパーティの様な集団しかいなかった。
受付は冒険者が少ないせいか2箇所しか空いてなく、前回態度の悪かった受付嬢の場所のみ空いていた。
しょうがない。あの受付嬢は嫌だが、彼処に行くか。
露骨に嫌そうな顔で、受付へ向かう。
「おはようございます。本日はどのようなご予定でしょうか」
「魔石の売却をしたいのだが」
「ギルドカードと売却する魔石の提出をお願いいたします」
俺はギルドカードと大量の魔石が入った袋を差し出す。
「…この大量の魔石はどうされたのですか?これなんて稀少なブラッドグリズリーの魔石ですよ」
「俺がモンスターを倒して手に入れたんだが」
本当はフォルとにゃん吉と一緒にだけどな。
「それは嘘ですね。貴方のような登録されてから一度も依頼を受けに来ないような新人に倒せる質ではありません。」
あ?なんだこいつ。
「正直に言っているんだがな」
「そうですか、そこまで虚偽の報告をなされるのであればこちらもそれなりの対応をさせて頂きます」
はぁ…面倒になってきたな。
「もういいや、売らないからその魔石の袋を返してくれ」
「これは窃盗の疑いが有りますので没収させて頂きます」
おい、それはやりすぎだろ。
「窃盗って俺からあんたが盗もうとしてんじゃねぇかよ」
この一言が琴線に触れたのか受付嬢が叫び出す。
「ギルドの受付嬢を侮辱するなんて失礼な!」
そのヒステリックな声は、広いギルド内でも、平然とに響き渡っていった。
その叫びが聞こえたのか軽く酔った冒険者が絡んでくる。
「おう、坊主なにサーニャさんに絡んでるんだよ」
ふうん、この受付嬢サーニャっていうのか。
「ボイドさん。この方がレベル19でありながらブラッドグリズリーを倒したとか言っているんです」
あーあ、この女。個人情報を言いやがったな。
レベルなどは、その人の実力を表すもの。冒険者ギルドの受付嬢がそれをバラしちゃいかんだろ。
「おい坊主、かっこつけるのもいいがギルドへの虚偽報告は認められないぞ」
レベルが分かったからかニヤニヤしながら言ってくる。
今のうちにこいつのステータス見とくか。
【名前】 ボイド
【種族】 人間種
【職業】戦士
【性別】男
【年齢】27歳
【レベル】31
【体力】260/260
【魔力】110/110
【攻撃】130
【防御】105
【俊敏】81
【運】20
【スキル】剣術LV3 回避LV2 体術LV2
微妙…なんだよこいつそこまで強くないんだな。
「ボイドさんありがとうございます。この方に魔石窃盗の疑いがあるため、魔石の没収をしようとすると、私を泥棒扱いするので困ってたんです」
「それは聞き捨てならねぇなあ」
サーニャに頼られて嬉しいのか、ボイドは調子に乗っていた。
なんだよこいつら、俺は魔石を返して欲しいだけなのになぁ
「ほら坊主、俺はD級だ。怪我する前に素直に謝って魔石置いて帰れ。」
「はぁ…なに?お前ら二人でそんなに俺から魔石を盗みたいのか?」
「「!?」」
限界を超えた俺は気を使って話すのをやめた。
「二人掛かりでランクが下の奴から奪おうとするなんて盗賊かよ」
呆れたまま話し続ける。
「このくそガキがザコの分際で!ザコは言うこと聞いときゃいいんだよ!」
「もういいです。ボイドさんこの方を叩き出してください」
「はぁ…それはギルドとしての判断ということでいいんだな?」
俺は言質を取りにかかる。
「勿論です。貴方みたいな低級の相手をするほど私は暇ではありませんので、ボイドさんお願いします」
「坊主、覚悟はいいな」
ボイドは俺に剣を向け振り下ろしてくる。
「はぁ…どうなろうと文句言うなよ」
軽く呟くと俺は木刀を抜き構えた。
「うぉおお!」ボイドが俺に向かい剣を振り下ろす。
俺はそれに合わせるように避け、木刀で剣の腹を全力で叩く。バキッ……「「は?」」
剣が叩き折れた。
それを見てボイドとサーニャが固まっている。
よし、上手くできたな。
狙い通り、紡は上手く剣を叩き折れたことに素直に喜んでいた。
後はこいつらだな。笑いながら声をかける。
「で?ザコは言うこと聞いていればいいだっけ?なら俺の言うことをお前らは聞いてもらわないといけないな」
こう見えて紡はキレていた。普通に対応して居たら窃盗犯扱いをされ、個人情報をばら撒かれ、最後は暴力で叩きだそうとする。
だが、まだここまではまだ耐えられた。
『ザコは言うこと聞いていればいいんだよ』この一言で崩壊していった。
ギリギリまで耐えていた精神が崩れ去り無意識に周囲へと威圧を放つ。
それは時が経つにつれどんどん強くなっていく。
周りも止めに入るつもりだったのか俺に近付いていたが、威圧が強くなるにつれ後退していく。
遂に威圧に耐えきれなくなったのか、ボイドは床に膝をつき、サーニャも限界がきたのかカウンターの上で泡を吹いて気絶していた。
(だるいな…)
紡はこの惨状に嫌気がさしていた。
静寂に包まれるギルドホール内…
「おい!何があった!」
急に横の階段から大声が聞こえてくる。
俺がそちらに目線を移すと、そこに居たのはスラリと細い手足に痩せた体、長く横に伸びた耳、所謂エルフと呼ばれる者だった
鮮やかな薄い金色のような髪に整った顔立ち、流石幻想の存在エルフ。途轍もない美人である。
周りの集団から「ギルドマスター…」という呟きが聞こえる。
ふうん、こいつがギルドマスターか。
【名前】 カレナ フィード
【種族】 エルフ種
【職業】精霊術師
【性別】女
【年齢】195歳
【レベル】102
【体力】604/604
【魔力】10400/10400
【攻撃】910
【防御】725
【俊敏】1060
【運】157
【スキル】弓術LV8 魔力操作LV9 気配察知LV5 隠匿LV4
【特殊スキル】 精霊魔法
【称号】ギルドマスター 精霊の友 貧乳
そのエルフが俺の威圧を感じ取ったのか睨みつけながら近づいてくる。
「おい、この騒ぎはお前の仕業か?場合によってはギルド追放処分になるぞ」
「ああ、構わない。元から辞めるつもりだ」
俺は今回のことで辞めることを決めていた。
「何だと?理由は何だ?」
「魔石を売りにきただけで窃盗犯扱いされ、本人の了承もとらず、その魔石を没収、最後は周りの冒険者に頼み叩きだそうとしてきた訳だが」
この時点で辞める理由になるだろうな。
「なっ…!?おいそこのお前それは本当の話か?」
近くに居た冒険者に声をかける。
「あ…あぁ、見てたがそいつのいう通りです」
この女の勢いに負け壁際に居た冒険者が正直に答えた。
「そうか、これ以上騒ぎにしたくない。ボイドとサーニャそれとそこの奴は上について来てくれ」
「いや、俺はもうギルドカードを渡して出て行きたいんだが」
「後から事情聴取でギルドから呼び出されるよりはマシだろ?」
マジか、後からもう一回ここに来るとか絶対嫌やな。しゃーない行くか…
「わかったついて行く」
俺はそのエルフの後ろをついて行った。
着いたのは二階の広い個室、その部屋の椅子へと別れて座る。
「それじゃあ聞かせてもらおうか」
ギルドマスターがサーニャとボイドを叩き起こすと話が始まる。
「俺から話すことはもう無いがな。コイツらが俺から魔石を奪い取ろうとし、言い返すと暴力を振るってきた。それだけだ」
「ふむ。サーニャ、それは本当か?」
サーニャは真っ青な顔で答える。
「この方がブラッドグリズリーの魔石を持ってこられまして、ランクFということもあり窃盗の疑いで没収しようとしました」
「それで、ボイドは?」
「サーニャちゃんが受付で叫んでるのが聞こえてきたんで助けに入ったんでさぁ。そしたらこの坊主が俺らの事を盗賊扱いしたんでちょいと説教しようとしたんでさぁ」
悪びれもなくボイドは答える。
「それで俺が切りかかってくる此奴の剣をたたき折ってるところにあんたが来たってわけだ」
「そうか、ボイド。ギルド追放と2段階降格どちらか選べ」
おっ、結構厳しい処分だな。
予想外の言葉にボイドは憤りながら反論する。
「何で俺が処分を受けなきゃならないんだよ!窃盗犯である此奴が受けるべきだろ!」
「お前は馬鹿か?お前の振り下ろしに合わせて剣を叩き折れる技術とそれを行えるステータスを持っているんだぞ。実力は最低でもCランク、高くてBランクくらいの実力があるわ。これならブラッドベアを倒したのも実力だ」
「うっ…」
ボイドは言い淀む。
その後ギルマスに選択を迫られたボイドは降格を選択した。だが、その決定に納得できないのか俺を睨みつけながら部屋から出て行った。
「次はサーニャの処分だ。証拠もなく冒険者を窃盗犯と疑い、魔石を強制に没収しようとし、止められるとボイドを嗾しかけ叩きだそうとした。これに間違いはないか?」
「はい…」
「そうか、残念だ。お前をクビにする」
サーニャは崩れ落ち静かに泣き出した。
「ちょっと待て」
俺の制止に二人は振り向く。
「どうかしたか?もしかしてサーニャの減刑でも言い出すのか?」
サーニャは上目遣いでこちらを見上げる。
「この女がクビになろうが俺はどうでもいい、それよりも今回の件ギルドとして責任はとらないのか?」
どうでもいい宣言に二人は固まる。
いち早く復活したギルマスが答える。
「今回はサーニャの独断で行われた事だからなギルドは責任は負わない」
成る程な。だが残念だ
「残念ながら俺はギルドとしての対応かこの女に確認済みだ、独断ではない」
「なっ!本当か?」
青白く虚ろな顔でサーニャは答える。
「はい…答えました…」
「はぁ…魔石の買取にプラスで慰謝料付けとくからそれで良いか?」
そうだな、もうここにくる気もないし、金で解決しておくか。
「ああ、それで良い」
「それでは魔石を査定して金を持ってくるから待っててくれ」
部屋の中にはすすり泣くサーニャと俺だけが残り気まずい雰囲気だけがその場に流れていた。




