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さよならはホームで!  作者: 小林つばさ
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カウンターにて

「人生、お疲れ様でした。あなたは今日を持って他界されました。」


 目の前にホテルのフロントさんような制服を着た黒髪の女性が映り込む。

ここはどこ?今さっきまで何していたんだっけ?頭を整理しようと記憶を辿る。

そうだ、孝典のご両親に会いに駅に向かうところで・・・。そこで記憶は途切れていた。


 辺りを見渡すと、大きな駅の窓口ようだ。私の住んでいる最寄りの駅は窓口などない。では、ここはどこなのか。

 目の前に視線を戻すと、無表情の女性が座っていた。


 今日を持ってタカイしました??


「すみません、どう言う事でしょうか?ここはどこでしょう?」


黒髪の女性は真顔のまま答えた。


「前崎彩子さまは本日の午前10時43分に交通事故で他界されました。他界された方はここで手続きを行って頂きます。まずこちらの書類に必要事項を…」


「待ってください!他界って死んだってことですか?」

そこでようやく「タカイ」が「他界」ということに気づいた。


「さようでございます。死亡された方は、まずここ、現世とあの世をつなぐホームで手続きをとってから列車に乗り、あの世に行っていただくということになります。申し遅れました、わたくし前崎彩子さまの担当をさせていただく、竹本と申します。」

竹本は事務的な口調で答えた。


 私はショックを受けた。どうなっているのだろう。横断歩道を渡っている途中で目の前は真っ暗になった。その時に車に轢かれてしまったということなのか。

死んでしまったら、列車に乗ってあの世に行く?孝典はどうしただろう、ご両親は?買ったばかりであった自分の着ているワンピースは破けているところもない。もちろん怪我らしきところも見当たらなかった。


「すみません、信じられません。」


10分以上も考えて出た言葉はそれだった。本当に信じられない。


「それでしたらこちらのモニターをご覧下さい。」

竹本は壁についていたモニターを指差した。モニターに映像が映し出される。


 そこは意識がなくなった例の横断歩道が監視カメラのようなアングルから映し出されていた。少しすると孝典が走っている姿が映し出された。

 そして自分が走って追いかけるところで白のワゴン車が猛スピードで衝突した。

こんなにも人と車がぶつかると吹っ飛んでしまうのか。そう思うぐらい豪快に自分の体が吹っ飛んだ。そのあと孝典があわてて何か叫びながら体を揺さぶっていた。辺りに人だかりができはじめたところで映像が切り替わった。


そこにはよくドラマで観るような霊安室で孝典が真っ青になった自分を揺さぶりながら何か叫んでいた。

そこで映像が切れる。


「信じていただけたでしょうか?」


信じるしかなかった。私は死んでしまったようだ。


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