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そして聖女は旋風〈タビュロ〉と化す  作者: 天宮暁
第五章 聖魔再戦

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 その場に居合わせたものが、一斉にたたらを踏んだ。

 動いている最中だった者はその勢いのまま地面に投げ出され、立っていた者は急に突き飛ばされたような格好でバランスを崩し、あるいはその場で転んでいた。

 魔王の使役する魔物も例外ではない。単眼鬼たちがよろめき、凄まじい衝撃とともに尻餅をついている。

 シアを初めとする実戦派の魔錠官はさすがに転倒するような無様は見せていないが、防衛隊の隊列は巨大な何かに薙ぎ倒されでもしたかのように、同じ方向に倒れていた。

 魔王ですら、わずかに腰を落として突如働いた「力」を受け流している様子だった。

 その場で影響のなかったのは、宙を飛ぶ魔蜂くらいだろうか。

 白熱した戦場が急激に白け、敵味方を問わず戸惑ったような顔で周囲を見回している。

「魔錠術による斥力……っ?」

 その感覚は、魔錠術による斥力に似ていた。だが、魔錠を解放する鍵語は聞こえなかったし、そのそぶりを見せていた者もいない。

 そもそも、これだけ広範囲、無差別に斥力を与えることなど、それこそ魔王ででもなければ不可能だろう。

 では、魔王がやったのか?

(……違う。魔力なんて感じなかった!)

 こんなことをやろうとすれば膨大な魔力が必要となる。魔王ならばそれを隠す術を持っていてもおかしくはないが、この局面で魔力の隠蔽に魔力を割く意味は全くない。それに、魔王自身にもこの「斥力」は働いていたようだった。いや、そもそもこの場にいる全員を転倒させる程度のことのために、これほどの魔力を使う意味がない。

 しかし……では、何が起きた?

「く……、いったい、何が……?」

 よろめき立ち上がるシアの前に、一台の魔錠二輪(ポートバイ)が割り込んだ。

 その魔錠二輪の背から飛び降りたのは、

「く、クラフト……!? それに――」

「待たせたな。でも、おまえが悪いんだぞ。何の相談もなしにこんなこと始めるか、普通?」

「申し訳ありません、シア。こちらの方が、分のよい賭けに思えたものですから」

「テレサまで……! じ、じゃあ、封印装置は――!」

「悪いな、シア。公転ジャイロの封印装置は停めさせてもらった」

「あ、あんた……! 自分が何をしたかわかってるの!? 魔王を封印する絶好の機会だったのに……!」

 シアが掴みかからんばかりの形相で食ってかかる。

「大丈夫だ、シア。俺はついに見つけたんだ。魔王を倒す方法をな」

 クラフトは自信満々に言ってのけ、広場に佇む魔王へと向き直った。

「――さあ、第二次聖魔決戦の始まりだ!」

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