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序章

 中学3年生の春。翔二は修学旅行にて北海道へ行っていた。

 旭山動物園、北海道大学・函館の五稜郭見学など、北海道の旅行を満喫していた。

 だが、翔二は2日目の日に札幌に住んでいる小学生時代の友人、高田良平の家を訪れようと向かっている途中、班の仲間である安藤拓也・石川優奈・鬼灯和也とはぐれてしまった。

 携帯電話で3人に連絡を取ろうとするが、携帯を鞄にしまいこんでいるのか、全く電話に出てくれなかった。

 「マジかよ・・・。」翔二はため息をついた。3人の誰かから連絡がくるのを待ち、札幌の住宅街をさまよっていた。そんな時、住宅付近である家から、女性の凄まじい叫び声が響いた。翔二は驚いて後ろを振り向いた。

 「やめてぇ!!来ないでぇ!!」女性は叫びながら逃げている様子だった。

こんな叫び声が町中に響き渡っているのにも関わらず、家1軒からも人が驚いて顔を出す人間がいなかった。

 「ぐえぇ・・・。」やがて女性の叫び声は聞こえなくなった。翔二は叫び声のあった家を見つけた。窓からのぞくと、黒髪で長髪の男が日本刀で女性の心臓を突き刺しているところを目の当たりにした。

 「・・・・・!?」翔二は初めて人が殺される現場を目撃し、言葉を失った。女性を刺している男は笑っている。女性の隣には男性は血まみれで倒れていた。

 翔二は急いで携帯を取り出したものの、手が震えて一一〇番が押せなかった。そんな時、男性と女性を襲っている男が、翔二の方へと目を向けた。目が合った瞬間、翔二の体は完全に凍りついた。男の目はまるで獣―・・・。人間の目ではない。翔二はそう思った。

 その目が翔二に恐怖を与え、体を完全に硬直させた。数分経った後、その男が家から出て行ったのを確認しやっとの思いで体が動いた。翔二は家に入り、血まみれの男性と女性の顔を確認した途端、言葉を失った。

 (おじさん・・・おばさん!?)殺された男性と女性は今回、家を訪れようと思っていた友人の両親だったのだ。翔二はすぐに救急車を呼んだが、搬送先の病院で死亡が確認された事を翔二はまだ知らなかった。


 警察にも通報した翔二はその後事情聴取を受けるため、北海道警察に連れられた。自分は犯人を見た、犯人は長髪で黒髪の男で、右目に火傷の跡があり、良平の両親を刀で殺害していた。男は右利きだった。そして、黒い着物を着ていた。まるで、時代劇みたいな恰好をしていたと。

 翔二の“右目に火傷の男”と聞いて北海道警察の刑事達はきょとんとしていた。まるで自分の話が信じられないとでも思っているようだった。そんな時、自分がいる取調室のドアが開いた。入ってきたのは、神奈川県警本部で捜査一課の刑事である自分の父、海堂慎太郎だった。

 「親父・・・!!」翔二は神奈川県にいるはずの父が、急に来て驚いている様子だった。

 「翔二、現場の状態を全て話せ。」翔二は慎太郎に言われた通り、全て話した。話し終えると、慎太郎は顔をしかめつつもゆっくりうなずき、「分かった」とだけ答えた。

 「親父、俺どうすれば・・・!?おじさんとおばさんは!?」翔二は聞いたが慎太郎は答えなかった。答えなかった事で良平の両親がどうなったか翔二は予想がついた。

 「翔二、担任の中村先生には俺から連絡を取った。北海道警察まで迎えに来てくれるようだから、それまでここで待たせてもらいなさい。俺は神奈川に戻る。」慎太郎はそう言ってその場を離れた。

 翔二は担任が迎えにくるまで慎太郎の部下の千田刑事と一緒に北海道警察で待っていた。と、その時、ドアが急に開いた。振り向くとそこには殺された被害者の息子で翔二の幼馴染の高田良平が翔二を睨んで立っていた。

 「良平・・・ごめん。俺、おじさん達が襲われていたのに、何も出来なかった・・・ごめん。」翔二は頭を下げた。だが、次の瞬間、良平は翔二の胸倉をつかみ、翔二の顔を殴った。

 「!!??」翔二は驚いてその場で座り込んでしまった。千田はすぐさま良平を抑えた。

 「何で・・・何で親父とお袋を殺した!?」良平の言葉に翔二は驚きを隠せなかった。

 「違う!!良平君!!翔二君は君のお父さんとお母さんを殺してない!!」そう言いながら千田は良平を抑えたが良平は千田に抑えられても翔二に殴りこもうという姿勢をやめなかった。

 「お・・・俺は殺してない!!信じてくれ良平!!」翔二は必死に訴えたが、良平は聞く耳を持たなかった。

 「お前が殺したんだ!!お前が殺したんだ!!殺してやる!!殺してやる!!」良平はそう言いながら叫び声をあげた。今にも翔二を殺しに行く勢いだった為、他の警官達が良平を抑え込んだ。そしてそのまま良平は部屋から出されてしまった。

 「な・・・何で・・・?」翔二はあまりの出来事に驚き、その場で座り込んでしまった。そんな翔二に千田は翔二の目を見て話した。

 「ごめんな翔二君・・・。良平君はご両親の変わり果てた姿を見て混乱しているんだ・・・。」そんな言葉に翔二はいてもたってもいられなくなり、千田に掴み掛った。

 「俺は殺してないよ!!俺は殺してないよ!!俺言っただろ!?右目に火傷の男が良平のおじさんとおばさんを殺したんだって!!」千田は翔二を抱きしめた。

 「分かっているよ翔二君・・・、分かっているから・・・。」

 「分かってないよ・・・みんな俺の事分かってないよ・・・。」翔二はその場で泣き崩れてしまった。


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