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海堂翔二の事件ノート~神奈川県警捜査一課の息子~  作者: ぽち
第三章 神隠し殺人事件
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第15章 生い立ち⑤

 救急車を手配して、慎太郎と伊佐美は拓也と一緒に病院へと向かった。

 医者に診てもらい診断した結果、栄養失調である事が分かった。更に慎太郎達が見つけた拓也の痣や背中の傷を見せると医者は顔をしかめた。その瞬間、拓也は目を覚ました。

 「気が付いたかい?」医者が声をかけると、拓也は驚いて後ろに身を引いた。

 「お医者さんだよ。怖がらなくていい。」医者の声を聞いて慎太郎と伊佐美も拓也の部屋へと顔を出した。

 「このおじさん達は、君が具合悪くて倒れていたところを助けてくれたんだよ。」医者が説明すると、慎太郎達もにこりと優しい顔をして、拓也に声をかけた。

 「大丈夫かい?どこか痛いところはないかい?」だが、拓也は不安そうにきょろきょろと医者と慎太郎と伊佐美の顔を交互に見ながら不安そうに目を動かすだけだった。

「安藤拓也君だね?あ、このランドセルの鞄の横の名札を見たんだ。今、お家の人に連絡をしたからね。」医者が言うと、拓也が目を見開きガッと医者の腕を掴んだ。

 「だ、ダメです・・・ひ、一人で帰れます・・・い、家に連絡しないで・・・!!」必死に話す拓也の姿を見て、慎太郎は嫌な予感を感じた。この何者にも怯えている表情に不安を感じたのだ。拓也の体が異常なほどに震えていた事も、慎太郎は見逃さなかった。

 (父親か・・・母親か・・・どっちだ!?いや、どちらからもされている可能性がある・・・。)この時点で、医者も慎太郎も伊佐美も分かっていた。

 ・・・彼は虐待されている・・・と。

 「この体の怪我はどうしたのかな?」慎太郎が質問した。

 「こ、転びました・・・。」拓也はおどおどしながら答えた。

 「どこで転んだのかな?」

 「え・・と、学校とか・・・公園とか・・・遊んでいるうちに・・・。」拓也は下を向いて小さい声で答えた。

 「誰かに・・・叩かれたりとかされていない?」この質問を投げかけた瞬間、拓也の右手の人差し指がピクッと動いた。慎太郎は、もう一度拓也を見た。そして、拓也はもう一度答えた。

 「・・・転びました・・・。」声が震えているのが分かった。

 すると、病室の外から大きな足音が聞こえてきた。その足音がこちらに近づいてくるのが分かった。拓也はその足音を聞いた瞬間、完全に体を硬直させた。

 バンと大きな音を立てて病室に入ってきたのは、髪留めで髪を団子にしてまとめている黒髪の女性だった。拓也の母親、佳奈だった。

 「あ、拓也君のお母さんですか?」医者が声をかけた瞬間、佳奈は周りに慎太郎達がいるのにも関わらず拓也の元へ真っ直ぐに行き、拓也の前まで来た瞬間に、平手打ちで拓也の顔を殴った。

 「このクソガキ!!」殴られたと同時に拓也は倒れこんだ。

 「なっ・・・・!?」あまりの突然の出来事に慎太郎達も言葉を失い、硬直した。

 佳奈は拓也の胸倉を掴み、平手打ちで拓也の両頬をバシバシ叩いた。

 「何回私達に迷惑をかけりゃ気が済むんだよ!?本当クズだね!!」

 「ちょ、ちょっとお母さん・・・!!」医者もさすがに驚き、止めようとした瞬間、真っ先に体を動かしたのは慎太郎だった。

 「やめろあんた!!自分が何しているのか分かっているのか!?」慎太郎は佳奈の両腕を捻り、身動きが出来ないように押さえた。

 「何だいあんたたちは!?」佳奈は慎太郎を睨みつけた。

 「警察だ!!俺達の前でこの子に暴行することは許さん!!」慎太郎は更に佳奈を睨み返し、吠えた。警察という言葉を聞いたからか、佳奈は動きを止めた。

 佳奈は一応落ち着いたのか、周りを見渡した。慎太郎をはじめとする、伊佐美や医者が疑心暗鬼の目で自分を見ている事に気づいた。

 最初に声をかけたのは医者だった。

 「お母さん、拓也君はこの暑い中冬用のトレーナーを着ていました。他に、シャツとか薄手の服を着せてあげて頂けませんか?

 今日は夏のように暑い日です。熱中症になってしまっては拓也君の体調に障りますので・・・。」医者がそう言うと、佳奈は今度は医者を睨みつけた。

 「知らないよ!!こいつが勝手に着た服を何で私が管理してあげなきゃいけないんだい!?」その言葉に慎太郎はカチンときて我慢が出来なくなり間に入って母親に怒鳴りつけた。

 「母親なんだから当然だろう!!あんた・・・さっきから拓也君に愛情のかけらも見せていないじゃないか!!

 それに・・・拓也君の体に痣や傷がかなりの数あったぞ!?あれは何だ!?まさか・・・あんた・・・この子に虐・・・!!」

 「海堂警部補!!」自分が母親に怒鳴りつける前に自分の言葉を止める声が聞こえた。その声を聞き、慎太郎は喋るのを止めた。

 「だめだ・・・。」振り向くと伊佐美が首を横に振り、これ以上喋るなという仕草をした。慎太郎は上司の指示に反発する事は出来ず、言葉を止めた。

 「何が言いたいのかしら?」佳奈が慎太郎を睨んだ。

 「拓也君の体に痣や傷が所々にありました。本人は転んだとおっしゃっているんですが・・・何かご存知ありませんか?」伊佐美が慎太郎の代わりに答えた。

 「本人が転んだって言ってんだから転んだんでしょ?」佳奈は冷たく言い放った。

 「もう帰るわ。拓也!!来な!!」佳奈は怒りをあらわにしながら音を立てて廊下を歩いて行った。部屋を出る時に、拓也はちらりと慎太郎を見た。思わず、慎太郎は拓也の手を引き止めようとした。だが、手は届かず、バタンと病室の部屋が閉まった瞬間、慎太郎は悔しい顔をした。すぐに行動に出たのは、伊佐美だ。

 「先生・・・拓也君の住所、分かりましたか?」

 「はい。カルテ取りましたから。」

 「お借りして宜しいでしょうか?児童相談所に連絡します。」

*

 慎太郎は直帰するよう伊佐美に指示された。横須賀市の自殺案件の事件は伊佐美が見てくることになった。

 慎太郎も帰らせてもらう事にした。こんな状態では自殺で決まっている案件だとは言え、一応遺体を見たいと思っていても拓也の件が頭の中でちらついて捜査どころではないと慎太郎自身も思ったのだ。

 「ただいま・・・。」家に帰ると、妻、翔子と息子の翔二が出迎えた。

 「翔二、もう帰ってたのか?」

 「うん。お帰り、パパ。」翔二はおやつのプリンを食べながら玄関まで来ていた。

 「頂き。」さりげなく翔二の持っていたスプーンに口を運んで翔二のプリンを横取りした。翔二は大きく口を開けて驚いた顔をする。

 「お、俺のプリン・・・!!」

 「へへ!!」慎太郎はニヤリと笑い、そのまま家へ上がった。

 「ぷ、プリン泥棒~~!!」翔二が半泣きして頬を膨らませた。

 「もう~どっちも子供なんだから・・・。」妻の翔子が呆れながら慎太郎の鞄を持ち、一緒にタンスがある部屋へと向かって行った。

 「翔子。」着替えをしながら、慎太郎は翔子に声をかけた。

 「悪いが、パソコン・・・貸してくれないか?」

 「いいですよ。インターネットに繋げますか?」

 「あぁ。頼む。」着替えた後、慎太郎と翔子の部屋で慎太郎はパソコンを開き、インターネットである事を調べ始めていた。

 検索内容は、“虐待されている子供の特徴”だった。検索をかけると、内容が沢山ヒットし、出てきたのだ。

 慎太郎はそこで、一つのページのURLをクリックした。インターネットの内容はこのように書かれていた。

 “虐待されている子供の特徴

 一・子供の泣き叫ぶ声が頻繁に聞こえる。

 二・不自然な外傷(痣、打撲、火傷など)が見られる。

 三・平日など、学校にいる時間帯に公園や店などに一人でいる。

 四・極端に粗末、または汚れたままの服を着ている。冬などでは、寒い日でも薄着でいて、夏では分厚いトレーナーなどを着ている。

 五・食事に異常な執着を示す。

 六・夜遅くまで遊んでいたり、コンビニなどで本を読んでいる。

 七・理由もなく、幼稚園、保育園や学校を休みがちである。

 慎太郎はこの内容を見て、どれも拓也に思い当たると思い、頭を抱えた。そして、次に目を通したのは、虐待している親の特徴だ。

 一・子供を怒鳴りつける声が頻繁に聞こえる。

 二・小さい子供を家に残したまま外出する事が多い。

 三・子供の怪我や欠席について、あいまいな説明をする。

 四・子供の話題について、拒否的、無関心である。

 五・子供がけがをしたり、病気になっても医者に診せようとしない。

 六・地域や親族などと交流がなく、孤立している。

 先程の、母親を思い出していた。拓也のあの怯えている姿、そして、拓也が弱っているのにも関わらず、殴り飛ばし、怒鳴り散らすあの母親の言動・・・。異常だと思った。

 この間見たニュースの、大阪の女児虐待死事件を思い出した。

 (こんな悲しい事件・・・二度と起きてはいけないんだ・・・!!俺達警察が気づいた以上・・・何とかしなくては・・・!!)そして、慎太郎は携帯を取り出した。

 「千田君?お願いがあるんだ・・・。生活安全課の戸川課長にちょっと話しておいてほしい案件があるんだ・・・。」部下の千田に、拓也の事を話した。

 (絶対に・・・・助け出してやる・・・!!)慎太郎はそう、固く心に誓った。

*

 後日、慎太郎と伊佐美は拓也を診てくれた主治医の元へと向かった。主治医から呼び出されたのだ。

 「拓也君に・・・何か!?」慎太郎がいち早く主治医に質問した。

 「念の為、拓也君のお腹をレントゲンで診させて頂いたのですが・・・どうやら、あまり消化の良いものを食べているように思えなかったんです。実は、この間も拓也君を見かけて、声をかけたんです。昨日のご飯は何食べたの?と。」

 「な、なんて答えたんですか?」

 「ラーメン・・・と、答えました。」

 「ラーメン・・・?あの母親・・・それなりに飯は食わせているって事ですか?」あの母親がちゃんと拓也にご飯を食べさせているとは慎太郎には到底思えなかった。

 「いえ、多分・・・そのラーメンが問題だと思うんです。」

 「どういう事ですか?」

 「どんなラーメンを食べたの?と、聞きました。カップに入っているラーメンだと答えたんです。まぁ、要するにカップラーメンですよね。昨日は?一昨日は?と、聞いたら全ての日付がラーメンでした。しかもそれも全てカップラーメンです。」

 「・・・何ですって?」慎太郎は顔をしかめた。

 「それだけではありません。ラーメンをどのようにして食べたの?と聞きましたら・・・普通、お湯に入れて、3分待ってから食べるものを・・・何もお湯も入れずにそのままかぶりついて食べている様です。

 下手したら・・・この9年間・・・彼はそれが食事なのかもしれません・・・。」医者のその言葉に慎太郎は絶句した。それで・・・あれだけの身長なのか?あんなにやせ細っているのか?慎太郎は怒りで体を震わせた。

 「これが・・・拓也君のお腹を検査した結果のレントゲンです。一応、お渡ししておきます。」

 「ありがとうございます・・・拝見いたします。

 ・・・先生・・・。拓也君は・・・虐待されている可能性は高いですか?」伊佐美が聞いた。

 「非常に高いです。私からも児童相談所に声をかけておきましたから。」

 「ありがとうございます・・・。」慎太郎と伊佐美は医者に深々と頭を下げた。

 病院を出た後、慎太郎は伊佐美へと顔を向けた。

 「伊佐美課長・・・俺・・・少し出てていいですか?」

 「拓也君の・・・身辺を調べるのかい?」伊佐美が質問すると慎太郎は力強く頷いた。伊佐美は難しい顔をしたが、とりあえず頷き、許可をした。虐待に関しては、判断が難しいという。それに、子供が親をかばって、“虐待されていない”等と言えば、捜査が難しいのだ。だけど、慎太郎は走り出した。絶対に助けると決めたのだから・・・・。

 一方、拓也に関して他にも拓也を気にかけている人物がいた。拓也の担任の佐倉先生だ。職員室で拓也の事で頭を悩ませている。

 「佐倉先生。どうかされたんですか?」他のクラスの先生が聞いてきた。

 「いえ・・・うちのクラスの安藤君が・・・給食中にいない事が多くて・・・どこにいたか聞いても答えてくれなくて・・・。」

 「あぁ・・・あの大人しくて小さい子ですよね?何か・・・噂なんですけど・・・。」

 「何ですか?」

 「安藤君って、お父さんが不倫して出来た子供らしいです。だから・・・お母さんとかにちゃんと愛情貰っているか心配ですよね・・・?」

 「それ・・・本当ですか!?」佐倉先生は驚きを隠せなかった。

 「う、噂です・・・!!安藤君の近所の人たちがそう噂しているんですよ・・・。」

 「そんな・・・・。」佐倉先生はますます拓也が心配になった。

 放課後、校門前に立って、佐倉先生は生徒一人一人に“さようなら”と挨拶運動をした。この学校では先生が週番制で先生一人一人が、朝と放課後に挨拶運動をする為に、校門前に立って生徒に挨拶をするのだ。

 ふと、拓也が歩いているのが目に留まった。拓也は、他の生徒よりもちろん一年生より一回りも小さいのだ。すぐ、分かった。

 「拓也君、さようなら。」佐倉先生は拓也に声をかけ、手を振った。だが、拓也は小さく頭を下げ、足早に去って行った。そんな拓也を見て、佐倉先生は大きくため息をついた。

 (全然・・・気を許してくれないな・・・。私って教師に向いていないのかな・・・?)一人で勝手に落ち込んだ。その時、後ろから声をかけられた。

 「あの、横須賀北小学校の先生ですか?」

 「え!?」急に声をかけられ、驚いて後ろを振り向くと、スーツを着た長身の男性が自分に声をかけてきたのだ。

 「安藤拓也君をご存知ですか?」

 「た、拓也君は・・・私のクラスの生徒です・・・。」

 「そうですか・・・。あの、拓也君は普段、どんな生徒さんですか?」

 男性が急に拓也の事を聞いてきたものだから、まさか誘拐の視察かと思い、佐倉先生は警戒した。すると、警戒されている事に気づいたのか、男性はにこりと笑った。

 「あぁ、申し訳ない。怪しい者ではございません。私、こういう者です。」そう言って男性は名刺を先に渡し、その後に警察手帳も見せた。

 「け、警察の方!?た、拓也君が・・・何か・・・!?」佐倉先生はテレビ以外に警察手帳を見るのが初めてで困惑した。

 「神奈川県警、海堂と申します。実は・・・拓也君について調べているんです。彼は、先生から見てどんな生徒さんですか?」

 「ど、どうして・・・拓也君を調べているんですか?彼が何をしたというんですか?」

 「違うんです・・・拓也君が何かをしたというよりは・・・何かをされていると思っております。先生は、拓也君の親御さんにお会いしたことがありますか?」慎太郎の質問に佐倉先生ははっとした。

 「い、一年生の時からあまりお会いしたことがございません・・・。授業参観にも顔を出すことがないみたいです。大体、お父様に2、3回お会いした事があるくらいです・・・。」

 「先生から見て、拓也君はどんな生徒さんですか?」慎太郎は、もう一度質問した。

 「と、とても・・・大人しい子です。でも・・・それ故に・・・何かにいつも怯えているようなそんな気がしてとても・・放っておけなくて・・・。」

 慎太郎は話すかどうか迷った。この先生に協力をしてもらえば、拓也を救えるかもしれない。だけど・・・自分の間違いだったらこの先生にも迷惑がかかるが・・・だけど・・、慎太郎は間違っていると思ってはいなかった。

 だが、自分の捜査に一般人を巻き込むのも気が引けたのだ。

 だけど・・・拓也を助けたい気持ちの方が強かった。間違っていたら・・・自分が全責任を負おう。そう決心した。

 「拓也君は・・・もしかしたら・・・これは私の推測ですが・・・母親に虐待をされている可能性があるのです・・・。」こんな事、本当は言ってはいけない事だとは分っていた。だけど・・・、この先生に賭けようと慎太郎は思った。

 「え・・・・!?」佐倉先生は言葉を失った。だけど・・・、今までの拓也を思い出すと思い当たる節はいくらでもあった。

 「拓也君を私は救いたいんです・・・。先生が知っている拓也君の事を・・・まずは教えてくれませんか?」慎太郎の真剣な目に先生は大きく頷いた。

 「私も・・・拓也君が他の生徒とは何かが違うと・・・思っていました・・・。どうぞ・・・校舎にお入りください・・・。」佐倉先生は、慎太郎を学校に通した。

*

 実は、拓也の小学校に捜査をする前には伊佐美ではなく、同じく自分の上司である上村と揉めていた。

 「海堂、拓也君の虐待の疑いのある件は手を引け。」上司の言葉に慎太郎は顔をしかめ、反論した。

 「何故ですか?」

 「拓也君自身は転んだと言っているんだろう?本人が訴えない以上俺達が出来る事は何もない。」

 「そんな・・・あの母親は俺達がいるのにも関わらず拓也君をぶん殴ったんですよ!?虐待の疑いは十分にあります!!俺達が気づいた以上、無視する事は出来ません!!!」

 「児童相談所に任せればいいだろう。」

 「児相は・・・どこまで何を調べてくれているんですか?伊佐美課長。」慎太郎は体を伊佐美に向けた。

 「詳しい事は・・私も分からない。一応・・・何か分かったら教えてほしいとは言っているが・・・。」だが、拓也と母親に出会ってから3週間は経っていた。それから連絡は一度も来ていなかった。

 「早く俺達が動かないと最悪の結果になります・・・!!この間の大阪府の児童虐待事件や俺達が担当したゴミ捨て場に遺棄された子供の遺体遺棄事件のような結果は二度とごめんですよ!!」慎太郎は拳を強く握って、怒りを抑えていた。

 「一応、生活安全課の戸川課長に話してあるから・・・。戸川課長もあの母親には苦戦をしているようだけど・・・。」戸川課長は毎日のように拓也の家に出向いているが、母親だけではなく、3人の子供達も拓也の件はしらばっくれるので、全然捜査が進まないのだ。それに、これ以上自分達警察が踏み込みすぎれば最悪の結果になりかねない。

 「それに・・・拓也君自身が“自分は虐待されている”と決して言わないんだ。その証言さえ、それか虐待されているという実際の証拠が見つかれば逮捕状も請求できるんだが・・・。」上村が言った。そこで、慎太郎は眉毛をピクリと動かした。

 「分かりました。じゃあ・・・通報を貰えば俺達は動けますよね?」

 「・・・何する気だ?海堂。」上村が顔をしかめた。

 「今、神奈川では殺人事件、入ってませんね?じゃあ、行ってきます。」

 「はぁっ!?おい、こら海堂!!待たんかい!!」上村の制止を聞くことなく、慎太郎は刑事課から出て行った。

 「やれやれ・・・。」伊佐美も苦笑した。

 (拓也君が転んだと言っている?自分は虐待されていますと言える子供はどのくらいいると思っているんだ!?ほとんどの子供が言えるわけがない!!

 それだったら・・・状況証拠じゃなくて、虐待されているという実際の通報を貰えるように俺が捜査をすればいいんだ!!)そう思った慎太郎が行きついた先が、拓也の小学校だったのだ。そして・・・佐倉先生を見つけたのだった。

 職員室に入り、来客対応をする応接室へと慎太郎は通された。担任の佐倉先生が、校長先生と教頭先生を呼んできた。

 「拓也君が・・・何か?」校長が聞いた。

 「拓也君は学校ではとても大人しい子だと伺いました。校長先生や教頭先生から見ても、そうですか?」慎太郎は即座に質問した。

 「そうですね・・・。挨拶運動というものを毎日やっていますが、彼だけ挨拶の声が小さくて・・・クラスでも・・・いつも一人でいます・・・。」続いて佐倉先生だ。慎太郎は頷いた。

 「先程、えぇと・・・担任の先生・・・。」

 「あ、佐倉です。」慎太郎へ自己紹介するのを佐倉先生は忘れていた為、すぐに名乗り出た。

 「すみません。佐倉先生は先程、拓也君は他の生徒とは何かが違うとおっしゃっていましたね?どの辺が違うとお思いですか?

 他の生徒よりも極端に大人しい感じですか?」

 「そ、そうです。ただ・・・それだけではありません・・・。常に何かにおびえているような・・・そんな感じがします。」佐倉先生の言葉に慎太郎はピクリと眉毛を動かした。

 前に調べた時、更に詳しく調べた結果、虐待されている子供の特徴に“怖がる”や、“怯える”等の記載もあったのだ。

 「先生は、拓也君の父親にお会いした事があるんですよね?どんな感じでしたか?」

 「本当に・・2回か3回位なんですけど・・・がっしりした体型の方ですが、優しそうなお父様でした・・・。」

 「・・・そうですか・・・。」慎太郎はとりあえず、メモをした。

 「あのー・・拓也君が・・・何か?」未だに事態を飲み込めない校長が質問してきた。さすがに、校長や教頭にも拓也が虐待されているかもしれないとは言えないので、慎太郎は即座に立ち上がった。

 「いえ、もう大丈夫です。ありがとうございました。」学校を出て行った。その時、佐倉先生も校門の所まで慎太郎を送って行った。

 「あー先生!!彼氏ー?」途中、廊下を歩いていたクラブ活動が終わり、教室に戻るような生徒が佐倉先生を冷やかした。

 「違います!!」佐倉先生がそう言って慎太郎も苦笑をして、学校内を出て行った。

 校門まで来た後、慎太郎は振り向き、佐倉先生に先程渡した名刺の事について伝えた。

 「先程渡した名刺・・・私の携帯電話が入っております。もし、拓也君の件で分かる事があればすぐに連絡ください。」

 「じゃ、じゃあ・・・私も電話番号お伝えします!!そうすれば・・・ラインも出来ますし!!」

 「助かります!!ありがとうございます。」こうして、2人は連絡先を交換したのだ。これが、拓也の虐待早期発見に繋がる事をお互い信じた。そして、その思いが通じたのか、事態は大きく変化していくのだった。

*

 それから2日経った。拓也が教室に向かって行こうとするところを佐倉先生は見つけ、拓也に声をかけた。

 「拓也君!!おはよう・・・。」拓也を見た瞬間、佐倉先生は驚いた。今日も夏のように暑い日だった。拓也は髪の毛まで汗だくで、着ているトレーナーも汗で濡れていた。

 「拓也君!!脱ごう!!」拓也が嫌がるのをこれ以上聞いていられなかった。拓也の顔は真っ赤だった。トレーナーを脱がせるとそれ以外何も着ていなく、体中、痣や傷だらけだった。佐倉先生はそれを見て、絶句した。

 「拓也君・・・この傷・・・何?」質問したが、拓也は慎太郎達に言ったままの答えを佐倉先生に言った。

 「転びました・・・。」

 「転んだだけでこんなに痣や傷が出てこないよ!!ねぇ、拓也君・・・お母さんに何かされていない!?」思わず大きな声で言ってしまった。“お母さん”という言葉に拓也はビクッと体を強張らせた。

 拓也はブルブルと顔を横に振り、トレーナーを着直して、走って教室に行ってしまった。

 「拓也君!!」佐倉先生は確信した。

 (だめだ・・・これ以上・・・何もしないなんて・・・出来ない・・・!!)慎太郎の言葉を思い出した。

 “拓也君は・・・虐待されているかもしれません・・・。”

 自分が動こう。佐倉先生はそう決意した。

 一方、慎太郎は横須賀市内の児童相談所に訪れていた。拓也の件を聞きに来た。

 「安藤拓也君ですね・・・。あれから何回も母親に接触を試みているのですが・・・私たちの顔を見た瞬間に怒鳴り散らして物凄い剣幕で何人も追い返されてしまって・・・。

 これ以上捜査をすればするほど・・・私たちは拓也君の方に大きな危害が加わりそうで・・・。」完全に職員は萎縮してしまったそうだ。無理もない。拓也の件以外にも虐待の相談は年中対応しているという。話が進まない拓也だけに対応が出来なくなっていたと話している。

 「・・・・。」児童相談所のその態度に慎太郎は少し眉間に皺を寄せた顔で職員を睨んだ。

 言いたい事は分かるが、何だか態度が投げやりに見えた。

 「分かりました。そちらが忙しいのであれば私が動きますので。」

 「え?」そう言ってさっさと立ち去った慎太郎を見て、職員の人間はしまったと思った。だが、慎太郎は速足で立ち去ってしまった為、慎太郎を引き留める事は出来なかった。

 慎太郎は、施設内を歩いていると、確かに沢山の電話が鳴っているのには気づいていた。これが全て、虐待の相談なのか・・・。それに虐待以外でも相談を受け付けていると一度テレビでも見た事があるような・・・。

 職員がこれ程対応に追われているのであれば、やはり自分が動こう。こういう時、児童相談所と警察が連携しなくてはと思った。

 一度、拓也に児童相談所から質問の紙を渡していると聞いていた。その紙も一切返ってきていないようだ。母親に見つかって捨てられたのか、あるいは、母親に見つかる前に自分で捨てたのかどうかは分からない。

 自分の体中の怪我を全て“転んだ”事にしている児童だ。親をかばっていてそう言っているのか、親にそう答える様に言われたのか・・・。どちらにしろ、慎太郎の心は決まっていた。

 俺が動かなきゃ。気づいた俺が助けなきゃ。そう思った次の瞬間、携帯が鳴った。部下の千田からだった。

 『横浜市で女性の変死体が発見されました。殺しかもしれません。横浜署の所轄から応援です。』

 (マジか・・・。)慎太郎は車に戻り、指定された横浜市へと向かう事にした。

 だが、実際に横浜へ向かうと、鑑識からは足を滑らせて階段から落ちてしまったという、事故死と判断された。慎太郎も遺体を見て、服の乱れなどが不自然でないか確認し、結局のところ事故死との事になった。慎太郎はこのまま千田と共に神奈川県警本部へと戻る事になった。時刻は14時を過ぎた頃だった。

*

 拓也の担任の佐倉先生は、拓也の実家へと向かっていた。拓也の怪我が本当に母親からの虐待のせいか、確かめる為だ。勝手な行動だとは分かっていた。もし、違っていたら、学校が訴えられかねない事も分かっていた。

 だけど、佐倉先生は拓也のあの異常なほどの怯え方にずっと違和感を持っていたのも事実だ。あの時、慎太郎に会っていなかったら、自分は拓也の心の傷に気づかないまま教師を続ける事になり、しまいには最悪の事態になっていたかもしれない。

 今回、自分が動くことによって、何かが変わるか・・・、それとも、最悪自分の勘違いで拓也の親に恥をかかせてしまうかもしれない。それでも・・・大切な教え子が傷ついていると知った以上、自分も教師だ。子供が好きで、教師になったのに・・・その子供を救えなかったら、教師失格だ。そう、思っているのだ。

 横須賀市の5丁目。赤い屋根の大きな家だった。

 (拓也くんちって・・・結構大きいのね・・・!!)初めて拓也の家に来た。拓也の学校には家庭訪問をする習慣がなかったのだ。

 (拓也君のお父さんって、私と同じ小学校の教師よね?こんないい家に住めるのね・・・。お母さんだって専業主婦でしょ?)そんな事を思いながら、先生は呼び鈴を鳴らした。

 『・・・・はい。』インターホンのマイクから、母親の声がした。

 「あの、拓也君の担任の佐倉です。」

 『・・・何の用ですか?』

 「拓也君について・・・伺いたい事がありまして・・・。」そう言うと、佳奈は“お待ちください”と言い、一旦、呼び出しの受話器を切った。すると、庭から母親が出てくるのを見た。母親は庭の側にある小さな物置小屋へと行き、ドンドンドンと大きな音を立てて、ノックした。

 「あんたの担任が来てるよ!!とっとと出な!!」佳奈の言葉遣いに驚きを隠せなかった。子供に対して、こんな言い方をする母親を初めて見た。その時、佐倉先生は同僚の教師から言われた言葉を思い出した。

 “安藤君ってお父さんが不倫して出来た子供らしいです・・・。”

 佐倉先生は、思わず冷や汗をかいた。

 その後、すぐに拓也も物置小屋から出てきて、母親の佳奈と一緒に佐倉先生の前まで来たのだ。

 「・・・先生?」拓也が母親の後ろに隠れながら怯えた表情で自分を見ていた。

 「こ、こんにちは、拓也君。」

 「・・・こんにちは・・・。」挨拶は返してくれたものの、拓也の目はこう訴えているように見えた。

 “・・・何で来たんだ”

 「・・・何の用です?」佳奈が面倒くさそうに話を切り出した。後ろに隠れて自分のスカートの裾を掴む拓也の膝を先生に分からないように蹴りを入れながら。

 「あの・・・拓也君・・・他にお洋服はないのでしょうか?御覧の通り、今日は夏のように暑い日です。5月も中旬になると・・夏が近づいてくるんです。

 拓也君はいつも冬用のトレーナーを着ています。何か、他に薄手の服を着せてあげてくださいませんか?」

 「何でそんな事、先生に言われなきゃいけないの?」佳奈が睨みを利かして声を荒げた。

 「ふ、不快に思われたのなら謝ります。でも、私もお母様の大事なお子さんをお預かりしている以上、心配なんです。」

 「別に大事じゃないわよ。」

 「・・・え?」思わず、先生は聞き返した。

 「もういい?ほら、来な!!」拓也の細い腕を強引に掴み、引っ張った。

 「早く帰って!!」先生に向かって佳奈は吠えた。先生は一回、拓也を気にしながら家の玄関から出て行った。ドアが閉まると同時に拓也へ顔を振り向いた。拓也の顔は、表情がない顔で黙って佐倉先生を見ていた。そのまま、ドアは閉まわれてしまった。

 佐倉先生は、このまま帰ってはだめだと直感的に判断した。庭へ回るとリビングが見えた。木陰に隠れながら庭から中を覗き込んだ。すると次の瞬間、佳奈の怒鳴り声が響き渡った。

 「学校の教師が来るなんて、あんたチクったのかい!?」

 「ち、チクってません・・・何も言ってません!!」

 佐倉先生は家の中を覗くと、拓也が母親、佳奈に両頬を往復で殴られ、腹を踏みつけられる暴行行為を受けている現場を見てしまった。

 「・・・・・・・・!!」思わず言葉を失い、先生は固まってしまった。だが、すぐに慎太郎の言葉を思い出した。

 “拓也君は・・・虐待されているかもしれません・・・。”

 慎太郎の読みは当たっていたのだと確信した。その瞬間、佐倉先生はバレないように必死に動画を回した。この動画を、慎太郎のラインに送ろうと考えた。

 佳奈がちょうど、怒鳴り散らし、何十回にわたり、拓也に暴行している姿は約10分も続いていた。そして、拓也が動かなくなると、暴行行為を止めたかと思いきや、拓也の髪の毛を鷲掴みにして、そのまま引きずりどこかへと連れて行った。

 佐倉先生はその間に動画を急いで、慎太郎のラインに送り、メッセージも送った。

 “海堂さん!!助けてください・・・私の教え子を・・・助けて下さい!!

 殺されてしまいます!!“

*

 本部に戻り、慎太郎は書類をまとめていた。そんな時でも、慎太郎は拓也の事が気がかりで仕方がなかった。

 カップに入ったコーヒーを一口飲んでみたものの、落ち着かなかった。そんな中、自分の携帯のバイブ音が鳴っている事に気づいた。

 慎太郎は携帯を取り出すと、ラインが入っていた。相手は、拓也の担任の佐倉先生だ。何か進捗状況が分かったのかと思うと、すぐに開いた。ラインのメッセージを読み、送られてきた動画を見て、慎太郎はすぐさま、上司の伊佐美の元へと向かった。

 「い、伊佐美課長・・・・!!これはもう・・・通報と受けて宜しいですよね!?」慎太郎は、伊佐美に佐倉先生から貰った動画とラインのメッセージを見せた。周りにいた刑事課の刑事達も慎太郎の周りに集まり、一緒に動画を見て驚愕していた。

 「すぐに、生活安全課の戸川課長に連絡する。」

 「お、俺も行きます!!絶対に助けたいです・・・この子の事!!」慎太郎と伊佐美は戸川に了承を得たうえで、安藤家の捜査に立ち会う事になった。

 慎太郎はすぐにラインの電話で佐倉先生と連絡を取り合った。

 「通報、ありがとうございました。すぐに向かいますので、先生は母親に見つからないところに隠れていて下さい。」

 『海堂さん・・・お願い・・・拓也君を・・・拓也君を助けてください!!』

 「命に代えても絶対に助けます!!今、向かっていますので。」そう言って、1回電話を切り、慎太郎達はパトカーのサイレンを鳴らしながら、拓也の自宅へと車を走らせた。

 生活安全課の上長が裁判所に通告し、虐待の疑いがある家を捜査させてほしいとの事で捜索差押許可状の発行の手続きをすでに取っていたのだ。

 どんなに母親に接触しても、あの母親が怒鳴り散らすしかしなかった為やむを得ず、令状請求をしたという。

 慎太郎は心臓が口から出てくるような思いでいっぱいだった。もし、間に合わず拓也が変わり果てた姿で見つかったら?また、悲しい事件が増えないか心配だった。拓也が無事でいてくれることを願っていた。それはきっと担任の佐倉先生もそう思っているはずだ。

 彼女から送られてきたラインにこう書かれていた。

 『海堂さんに言われて私も拓也君の今までの姿を思い出してもっと心配になり、拓也君の家に家庭訪問をさせて頂きました。

 お母さんの態度が他の児童のお母さんの態度とあまりにも違っていて。そして、帰ろうとした時に、お母さんの怒鳴り声がすごい聞こえて・・・。窓から見ると・・・拝見してくださった動画の通りです・・・。

 帰る前に拓也君に睨まれました・・・。きっと、彼はこう思っていたに違いありません・・・。

 “・・・何で来たんだ”と。

 きっと拓也君は私を恨んでいます・・・。』それを読んだ慎太郎はすぐに返信した。

 『いえ、今はそうかもしれませんが必ず拓也君は先生を感謝する日が来ますよ。大丈夫です!!俺達警察が必ず助けます!!

 待っていてください!!』とりあえず、こう送るしかなかった。

 そして・・・午後、16時半過ぎだっただろうか・・・。拓也の家に到着した。家のすぐ近くの脇の道路で先生が隠れて待っていた。

 「海堂さん・・・!!」先生は慎太郎の姿を見た途端、緊張していた心が解かれたのか、涙をボロボロこぼし始めた。

 「私の後ろにいるあの刑事に話をしてくれませんか?証言です。私たちは拓也君の家へ行きますので。」慎太郎が告げると佐倉先生は体を震わせ涙を流しながら、頷いて傍に来た警官と共に車へと乗った。

 「慎ちゃん、こっちは準備できたよ。」生活安全課の戸川課長が言った。

 「宜しくお願い致します。」そう言って、慎太郎、戸川課長、伊佐美課長の他、2名ほど拓也の家の門まで行き、戸川課長が呼び鈴を鳴らそうとしたその時、佳奈が出て来た。

 「何だい、あんたたち・・・。」見知らぬ男達が自分の家の前にいた中、2人ばかり見覚えのある男を見つけて佳奈は不快な顔をした。

 「令状です。」戸川課長が令状を佳奈に見せつける。

 「は?」

 「あなたが末っ子の拓也君に虐待をしていると通報を受けました。これから拓也君を保護する為、家宅捜索を行います。」そう言って、戸川課長を始めとして慎太郎達も一斉に安藤家に入って行った。

 「は!?な、何を勝手に・・・!!」佳奈が怒鳴ろうとも慎太郎達は気にも留めず、家の中へ入って行った。

 リビング、2階の子供達の部屋、佳奈と裕也の寝室、トイレ、庭、庭にある小さな物置小屋(拓也の部屋)を探していた結果、風呂場から声がかけられた。

 「拓也君、発見です!!風呂場にいます!!背中から出血しております!!何か止血できるものをお願いします!!救急車はこれから俺が呼びます!!」その声を聞いた慎太郎は、すぐさま、風呂場へと駆け寄った。

 風呂場へ行くと、背中から血を流してうつ伏せになって倒れている拓也の姿があった。

 「・・・・拓也君・・・!!」慎太郎は悲惨な拓也の姿に言葉を失った。

 「まだ、意識はあります!!」拓也を見つけた刑事が言った。慎太郎は拓也の止血を手伝った。手伝いながら母親を睨みつけた。

 「安藤佳奈・・・拓也君に対する暴行容疑・・・すなわち、傷害容疑で現行犯逮捕する。」慎太郎が言うと、側にいた刑事達が佳奈の両手に手錠をかけた。

 佳奈はちっと舌打ちをした。


 第16章に続く。

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