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華麗なる職人芸

利根川河川敷脇のアパートは

名ばかりで殺風景な住まいだった。

木下サーカスよろしく巨大な蜘蛛が一発芸を披露してくれたり、

かなしばり等、飽きる事はありませんでした。

そう、河川敷ですから、夏は花火大会、冬は凧揚げの大会が有りました。

近くには利根川を渡る、渡し船もありました。


と、そんな事を楽しんでばかりは居られませんでした。

学業に甘えは有りません。

あっと云う間の学生生活でした。

と云うのも矢張り、

学生生活よりも、実社会の方は比べようが無い程、

インパクトに溢れた日々でした。

学校は二年の修学期間でしたが、

それからが長い長い日々でした。

何かのご縁でしょうか、

友人と一緒に湯島、妻恋坂近くの印刷会社のデザイン室にお世話に成りました。


驚きました。

この会社には一杯神様が居ました。

その頃の印刷会社は

凸版、凹版、オフセット印刷とありましたが、

オフセット印刷は未だ未だ成長過程に有りました。

当時(この言葉は余り使いたく無いですが)は

写植機と云うものが興隆期でした。

その便利極まり無い機械を操作しているオペレータさんは

有る意味で、殿様商売みたいな専門職でした。

特に技術に長けたオペレータは仕事の流れを仕切っていました。

文字打ちの神様、

そして、此の機械は光学器械で未だ未開発のエリアが有りました。

罫線(細い線)表組や、図形は作る事が出来ません。

それで、印刷物の表や図形は、版下屋さんの仕事でした。

どちらが下請けか知りませんが、仕事を良く理解し、流れをリード

している方が、仕切り者でしょうね。

で、

デザイナー学校出たての小僧っ子は、版下屋さんの下に当面着く事に

なっていました。

何にも知らないんですから。

この版下屋さんの親分さんは、線引きの神様、

髪の毛よりも細い罫線を

スイスイスラスラと細く長く引けるんです。

文字は、写植機で打ち込んだ印画紙を矢張り、神業で切り貼りする神様

瞬間芸です。

随分と驚かされました。

また、印刷物のグラデーションは、「ブラシ屋さん」という商売があって、

新車の広告の写真を、美人の写真、食品の写真をより際立たせる秘技を持ち

あわせて居るので、名人は引く手数多。

そんな職人の華麗なる世界を目の当たりにさせられたと云う訳です。

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