戦友と言う名の少女 少女と言う名の仲間
「きゃーっ! た、い、さぁーんっ!」
「ぐえっ! ちょ、おま、重いってーの! つか大佐じゃねえし!」
ふふっと、笑って少女が背中から飛び降りる。
「お元気かしら」
くすんっと、蠱惑的に微笑む美少女の肩に、白銀の少年が腕を引っ掛ける。
「んなの見てりゃあ分わかんだろ」
にっと笑って。少女を引き寄せ、耳元で呟く。それに他の人間と違い、動揺するでもなく、桃色の唇に人差し指を当てて少女は考え込む。
「んー困ってたり、とか。よね、よねっ、准将が私のトコに来るのって大抵中央に問題が起こった時よねぇ」
「よく分かってんじゃねえかよ……」
問題点をあっさりと上げられ、美少年がげっそりとした表情を見せる。
「それで、どうしたの。あのお馬鹿さんが動いちゃったぁ?」
「ああ」
「それは、それは本当にお馬鹿さんね」
くすくすと少女が笑う。少年が苦笑を零す。
「あの子をどうしたらいいんだろうな。俺は」
「それはアレが決める事じゃ、ない? まあ、アレは子どもだからねぇ。ちょーっと、ちょぴーっと、だけッ! 可哀想かもねえ」
相変わらず、遠慮なくぐさぐさと痛いところばかりを指す奴だ。
「お坊ちゃまは?」
「家」
「お貴族様は?」
「東」
はあーっと呆れたように息を吐き出した。
「あいかーらず、あいつらはアンタにばーっかりねっ! 聞いてる方がやんなっちゃう!」
「おい!」
「だって、私あいつら、大っ嫌いだもん! 人にばっかり責任なすりつけちゃって、よく見れば簡単に分かるはずなのに全く気付かないで! ……本当、お馬鹿さんよ」
むぎゅっと脇から手を差し入れて抱きしめると少年が恥ずかしそうに頬を掻いた。
「それは……俺から言った事だし、さぁ」
「甘い! アンタは甘すぎ!!」
「んなこたわーってるよ! ちっくしょー、好き勝手言いやがって!」
腕を組んでつまらなさそうにするのに笑い、少女が口を開く。
「それで? 私になにがして欲しい? 言っとくけど、私は高いわよー」
にこにこと両手を差し出す。
「俺に、お前を貸してくれ」
「……そんな簡単な事でいーの? 私だけじゃなくって、一緒でいいの?」
「お前は俺の友達だからな」
にこっと笑って両手をそっと握り締める。
「分かった。じゃあ、友達のために、私は戦うわ」
「ありがとう」
「ううん。その代わり、死なないでね」
「お前もな」
ふんわりと花のように笑い合うと、どちらからともなく手を離した。
「じゃあ、また」
「うん! 中央で会いましょう!」
ぶんっと少女が手を振る。
「エディースッ!! 大好き!」
「恥ずかしい事言うんじゃねーよッ! バーカ!!」
「あー!! 誰が馬鹿よ! この女泣かせー!!」
「誰が女泣かせだ!」
べえっと舌を出して笑う少女に笑いかけ、一、二度手を振る。
「デュー! 任せたぞ」
「もっちろんよー! 我が親愛なる友よー!」