祝いと疲れに乾杯を
「飲んでっか、クソガキ」
どっかと隣に座った男を半眼で俺は見つめた。
男が手に持ったウイスキーの色が、一瞬、濃く見えた。
「なんで俺の横に座るんだよ」
「俺の勝手だ」
一人で飲むのがコイツだろうに。どうしてまた、この頑固頭の少佐は俺の隣に来るかなー。
「あー、マズイ」
「なら飲むなよ」
コイツは酒にすら文句を言うのか。
「お前、なに飲んでんだよ」
「は?」
眉間の皺のいった顔で半分睨み付けられがちに見られ、腰を引く。
「だから、それ。ワインか?」
「ざーんねん。生憎、下戸なもんでね。シャンメリーだよ」
「えらく時期はずれなもん飲んでんだな」
「アルコールのないもんはこれだけだとよ」
今日は大きな魔物の巣を討伐した後の打ち上げ会みたいなもんだ。だからコイツと会うのは分かっていたが、なんで会話をしなければいけない。第一、コイツはいっつも一人で、しかめっ面で酒を飲んでるくせに。
「一体なんの用だよ」
「あ? あーあれだな、指揮官殿、お疲れ様でした! ってやつ?」
「嘘こくな。しばくぞ」
そんなタマじゃねえだろ、お前は。
「後、疲れた」
「そりゃ皆一緒だ」
「だからちょっと枕にでもなってもらおうかと」
「そうかよ。って、はあ!?」
ごろっといきなり膝の上に頭を乗せられ、エディスは声を上げる。
「何で俺なんだよ!!」
「どう考えてもお前が一番柔らかいだろ。うるさいから静かにしろ。目立つぞ」
こんっとシャンメリーの入ったグラスを叩かれ。シャンメリーの泡を見ていたら、少しどうでもよくなったというか、言っても聞かないだろうと思い。
「この大騒ぎが終わるまでだからな」
戦闘後の上、酒が入った他の軍人に絡まれないように、少しは気を使っているんだと言い聞かせて。シャンメリーをまた、喉に流し込んだ。