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「帰る家を貰ったの。すごく嬉しい!」

 そう言って笑うデューの頭をシルベリアは撫でる。よほど嬉しいのだろう。素直な彼女をそのまま表したような笑顔が眩しい。

「良かったな」

「うん!」

 ごろごろと猫のように懐いてくる女から目を離す。

 シルベリアは、故郷が欲しいという要求に家を与えるという答えを見いだせなかった。自分にとっての故郷とは、土地ではなく人だからだ。

 どこに行っても、必ずその人のいる所に帰ってくる。心を置いていける人。それを故郷と言わずして、なんと言うのだろう。

 土地など、家など、およそ心の残るものではない。中央にも、かつて家族と住んでいたボロ屋敷にも、なんの未練もなく郷里心もなかった。

「シルベリアもありがとう。美味しかった!」

 好きな料理を出す店を故郷と呼んでもいいだろう。そんなものに縛られるなんて嫌だった。

「そうか」

 空虚だからこそ、自分はシュウを愛せる。デューもいつか誰か一人を愛し、妻となり、母となるだろう。本当の故郷はその時にでも見つかるはずだ。

 あんな風に、誰が出入りしようとも表情を変えない家で満足してはいけない。あれは、故郷という言葉を殺された人間だけが住む屋敷なのだから。

シルベリアとデュー:「家」

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