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無邪気な貴方の言葉は
「美味しーい!」
「そうですか?」
「うんっ、シトラスの料理はいつでも美味しいけど、今日のはいっそう美味しい」
赤ワインをベースにしたソースにじっくり煮込んだ牛肉を口にしたエドワードがにっこりと笑う。
名高い貴族の当主になる者として、食事中にこんな風ににこにこと笑って、素直な感想を言っていてはいけない。そうは思うが、彼のこの姿が好きなので、注意することはしない。家にいる時くらいはゆっくりと好きなように食べてもいいだろう。
「それは良かったです」
「うん。僕、シトラスの料理はキリーのと同じくらい好きだよ」
心底嬉しそうな顔をしたエドワードに言われた言葉が突き刺さる。またですか……。
「エドワード、あまりキリガネさんと比べないで頂きたいのですが……」
「え? あ、あーそう、だね。ごめん、気を付けるよ」
「はい、そうしてください」
割と、貴方のその言葉は私に辛く感じられるものなのですから。




