いい左ストレートを君に
「むー」
「人の背後でむーむー言うな。どうかしたのか」
「痛い」
「あぁ?」
ぐるっと椅子に乗ったまま回る。
するとぶかぶかの白衣を特別仕様の軍服の上に着たエディスが。そいつは周りの目が煩かったのかなぜかわざわざ反対方向のここまで来ていた。そして人の背後でなにかの資料を製作していた。確かにここは俺専用の研究室だから俺しかいないけどなぁ。
「おら、目に悪い女顔! 何が痛ぇんだ」
「女顔って言うなよ。目が痛いんだよ。ゴミでも入ったかなー」
「目ぇ?」
「いっ!」
ぐいっと顔を無理矢理引っ張って上から目を覗きこむ。
「あー、こりゃゴミじゃねえなー」
「じゃあなんだよ」
「睫毛。女かお前は。無駄に長いから目に入るんだよ」
男にしては……や、普通の女より大分長いか。細かくて長い睫毛が一本、くるりと内側に巻かれていて、目に入っていた。
「んなに痛いのか」
「ん……痛い」
こすろうとする手を強く掴む。痛さに涙ぐんでいる上司を見、あまり苛めるとキレられるかと思い、
「ほら、取ってやるよ」
「ありが――」
「すみませーん、こっちにエディーいませんか? 家に資料置き忘れ……」
「うわっ、わ!」
「へ?」
盛大な悲鳴を上げて、エディスが隣を全速力で横切って行く。
「……なにした」
「いや、睫毛戻しただけ」
「にしてはやけに左頬が赤いですけど」