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咲かねばならん

「はーい、演習も今日でおしまいです。最後まで怪我のないように気を付けて、頑張って下さいねっ」

 まるで小学生の運動会の始まりを告げる女教師のよう。そんなおっとりとした口調で話す男に、疲れなど感じさせないハリのある声を叫び返す。

「では、そろそろ始めましょう」

 準備は整いましたか? と目の下に赤と青で色分けした隊の隊長に訊ね、整ったことを知ってから、手を上げる。

【黒の印を持って此処に戦神の陣を引く!

 歌えよ 人

 舞えよ 人

 封陣開縛!】

 トリエランディアを中心に、すうっと霧のようなものが出てき、瞬きをする間に全員を包み込む。風が吹いた後、最後尾の兵の後ろまで、霧が広がり、壁へと形を変えた。この中で戦闘訓練をしているので、何かない限り誰も入って来ちゃいけませんよーという目印だ。

「戦闘を開始せよ」


「ど? 今年の新入りは」

 机の上に桜色のカップが置かれる。ありがとう、と言いながら顔を上げると、飛踊がにこっと笑んだ。

「今年も豊作だよ。ただ、少し守備が苦手な人が多いみたいだけれど」

 演習に参加した軍人全員のアドバイスをまとめた手紙を書く手を止め、カップに手を伸ばす。ふうふうと息をかけて、少し冷ましてから緑茶を口に含む。

「僕も一日指導しっぱなしで疲れちゃったかな」

 腕の下をくぐって中に入って来た飛踊が、そろえた膝の上に座る。こてんと胸に頭を預けてきた。

 心の底の底まで自分のことを信頼していることを伝えてくるような様子に、ほわっと冷たく凍っていた心が解けていくのを感じる。

「明日は二人で公園にでも行こうか」

「うん」


散るために 咲いてくれたか桜花 散るこそものの見事なりけり   増田利男

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