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『僕がいた過去 君が生きる未来。』SS  作者: 結月てでぃ


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記憶の川

「レイヴェン様」

 きゅっと手を握ると、前を歩く愛しい人が振り向いてくださった。レイヴェン様の美しい瞳に私が映り、それに私の胸が脈を打つ。

「なんですか? レイディ」

 私の顔を覗きこみ、微笑んでくださると、つい口に手を当てて見とれてしまう。整ったレイヴェン様のお顔は宮殿にあるどの美青年の彫像よりも、この国に住むどの殿方よりも遥かに麗しいのですから……仕方のないことですわよね。

「レイヴェン様の故郷…東部はどのような場所なのですか? もしよろしければ教えていただけませんか?」

 私が失礼なことを言ってしまっても、レイヴェン様は微笑んでくださる。その優しさにまた、私の胸が痛みを訴えてきました。どうしましょう……レイヴェン様と一緒にいますと、私、病気にかかってしまいそうですわ。

「東部も、同じですよ」

 え、と顔を上げましたら、レイヴェン様は可愛らしく苦笑して、

「私が田舎者だからそう思うのかもしれませんが、あそこも此処も、同じように思えるのです」

 端整な顔立ちが、遠い地を想って、美しい意瞳が故郷を見るようにふっと柔らかくなる。

「東にいた頃は、ユゥラ川を見ては中央に行くことを夢見ていました。ああ、この川の先に中央があるのだと、そう思い続けていました」

 一刻も早く、レイディに会いたくて、と言われ、私は泣きそうになってしまいましたわ。だって、レイヴェン様はいつも私が欲しいと思っている言葉をくださるものですから。

「レイヴェン様、私…その」

「いつか見に行きましょう。レイディと、私の2人で」

 ね、と首を傾げられ、私ははい、と微笑む。


 2人でユゥラ川を見ましたのは、それから少しした頃でしたわ。

 そう、私がレイヴェン様のことをレイヴェンと、レイヴェン様が私のことをレイアーラと呼び合うようになった頃のことでしたのよ。その時のユゥラ川の澄んだブルーの水色を、私は今でもはっきりと覚えていますの。


 今ぞ知る みもすそ河の 流れには 波の下にも 都ありとは  二位尼

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