僕は君の自信材料
ブンッ、ブンッと空気を切る音が近くでする。
「ここでいいよ」
三歩後ろについてきていた従者から受け取る。タオルとおぼんにのせられた冷たい飲み物。背の高い木の間を抜けると、大きく開いた場所に出た。息を吸う。明るく明るく。
「エディッ!」
ぴくっと細い肩がふるえて、振り向いた。
「休憩にしない?」
そう言うと、僕の弟は口を大きくあけて笑った。
「頑張ってるね」
「うん!」
褒められることが嬉しいのか、エディスはこういうといつも笑って頷いた。でも、今日は少し違った。
「うん……でもね」
「でも?」
そう言ってうつむいた頭を撫でる。
「先生に全然成長してないって怒られちゃった。いつまでも、先生に勝てないから…」
呆れた。エディスは僕よりももっと小さい、子どもの中の子どもなのに、大きな熊みたいな大人の男にそんなこと言われてるだなんて。勝てないなんて当たり前なのに。少しずつ強くなっていけばいいんだよって言おうとした。だけど、
「ねえ、僕は強くなれると思う?」
そんなの、求めてなかった。だからやめた。その代わりに笑顔で、君が安心できるような笑顔で、
「勿論!」
僕は君の自信になることに決めた。




