苺
「苺、食べるー?」
ノックをしてから入ってきたギールの手にはボールが持たれていた。
「季節はずれだな」
ペンを走らせる手を止めて、エディスが振り向いた。
「はい」
少し大きめの苺を口の中に放り込む。
「ん、美味しい」
咀嚼した後で、エディスが笑んだ。
「果物の甘さはいいんだ?」
「許せる範囲だからな」
エディスは外見に似合わず、甘い物が大の苦手だ。どうもあの、作った甘さが嫌らしい。
「はい、もう一つ」
苺も、練乳なしで食べる。
「大きいな」
「うん、まあね」
シトラスが大きいのだけ分けて渡してくれたんだけど、ね。
「あーっ」
別に食べさせても、恥ずかしがらずに大人しく食べる。自分の手でつかむと果汁で汚れてしまうから、なのかな。なんだかその姿が少し可笑しくて、
「んぐ!?」
つい、したくなった。
「おっまえ、なにすんだ!」
「あ、やっぱりダメだった?」
「当たり前だろ! う、甘っ」
じろりと睨んでくるのに苦笑し、もう一つ苺を口の中に放り込む。
「甘い?」
「甘いだけだ」
そう言う唇を舐めて、君の言う味をよく知って、
「うん、甘いだけだね」
俺は笑った。




