あけましておめでとう
「シトラス、お餅っ、お餅ー!」
「はいはい、分かりましたから大人しくしていてください」
パタパタと自分の後ろを付いてくるエドワードをシトラスが邪魔がって手で追い払う。
「エドワード」
そこにギールが早歩きで来る。
「なにさ」
「なんか、お客さん。燕尾服っぽいのを着た……」
「嘘! 早いよ、キリーッ」
大慌てでエドワードが自分の部屋へと駆けて行く。
「キリー?」
「ああ、貴方は知らないんでしたね」
首を傾げたギールにシトラスが苦笑する。
「キリガネさんはエドワードの執事です」
「ああ、それでああいう服装なのか」
二人が話している間に、エドワードが部屋から出てきた。手にはカッチリとした、黒く四角い鞄とコートを持っている。
「僕、帰るから! 仲良くねっ」
「え、ええ!?」
「僕も、明日には実家の方に帰省しますよ」
「シトラスまで!?」
エドワードがもぞもぞとコートを着ようとする。
「エドワード様、そんなにお急ぎになられなくても良いですよ」
そのコートを背後から奪った。
「私はどこにも行きませんから」
ぶわっと背後に薔薇か何か咲きそうな笑顔。正直、眩しい。ギールが一歩後ろに下がった。
「キリー!」
どすっとエドワードがタックル気味に、抱きついた。
「勝手にお邪魔してしまい、すみません」
「いえ、いいんですよ。こちらこそエドワードの支度が遅くなってしまいすみません」
その背中をぽんぽんとする。
「これ、皆さんでどうぞ」
「いつもありがとうございます」
「あっ、おせち?」
「ええ。そうですよ」
キリガネがシトラスに手渡した袋をエドワードがじっと見る。
「エドワード様の分はちゃんとお屋敷に残してありますよ」
「わあいっ!」
ぴょんとエドワードが跳ぶ。
「さ、そろそろ行かなくては」
「はーい」
エドワードにコートを着せ、シトラス達に一礼する。
「じゃあねっ」
キリガネの腕をしっかりと掴んでこっちにエドワードが手を振る。
「エドワード、しっかり子どもだね!」
ドアが閉まった後、2人同時に笑い出す。
「ふふっ、さ、では朝食にしましょうか」
「そうだね」
「あ、おせち料理を食べなくてはいけませんね」
シトラスがお茶を淹れ、ギールがご飯をよそう。
「エディスと俺だけじゃ、食べきれないしね」
「そうですね」
くすりと、また笑い合う。
「今年も宜しくお願いします」
「はい、こちらこそ」




