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VRMMO日記  作者: あずれ
8/53

2日目―5

すいません

今週も2話構成で

多分来週も…

来週までじゃないかな、多分

「よっしゃ!祭りだ~!」

「うぉ~!!!」


ブレイブが飛び出して行く。

それに合わせて、周りのプレイヤーも雄叫びを上げながら殺到する。


「さて〈エンチャント:アーマー〉。メープルちゃん回復よろしく!」


そんなプレイヤーを横目に、俺は防御力上昇の魔法を掛ける。

〈エンチャント:アーマー〉は〈バフ:ディフェンス〉と同じように防御力を上昇させる。

バフと重ね掛けが可能で、上昇率はバフより大きい。

但し消費魔力が多く、効果時間が短いというデメリットがある。

この効果時間が問題で、戦闘をしながらの維持がなかなかに面倒だ。

だから俺がタンクになって防御に専念し、維持をするスタイルを取っている。


「俺だって仕事するぜ~!」


魂の叫びに合わせて、リザードマンジェネラルの剣を装備した大鎚で弾く。

リザードマンファイターと一緒に走り寄ってきたリザードマンジェネラルだったが、俺のところに辿り着いたのはジェネラルとファイター1匹だけだった。

4匹のファイターは、3匹をウチのメンバーが、1匹を集まってきたプレイヤーがそれぞれ辿り着く前に倒していた。

残った1匹のファイターも、すぐに集まったプレイヤーに倒される。


その瞬間、ジェネラルの周りにまたもリザードマンファイターが現れた。


「お~、今度は多いな。10匹くらいか?」

「スカウトも混ざってるわね。」


ブレイブとカラスさんが、なんの焦りも無く呑気にそんな会話をしている。


「なんか一杯出ましたよ!?どうなってるんですか!?」


メープルちゃんはまだパニック中みたいだ。


この次々と呼び出される取り巻きこそが、フィールドボスとしてのリザードマンジェネラルの特殊能力だ。

コイツはリザードマンファイターとスカウトを、とにかく呼び出しまくる。

この能力のために、適正レベル以上に狩り辛くなっている。


目の前ではプレイヤー20人くらいとリザードマン10匹くらいの大乱闘が展開されている。

それを横目に、俺はひたすらジェネラルの攻撃を捌き続ける。

と言っても、レベル52しかなく戦闘スキルもまともに取ってない俺に、レベル60のリザードマンジェネラルの攻撃を捌ききれる訳がなく。

どっちかと言うと、まともに捌けたのは初撃だけだったり。

あとは直撃を避けてる程度で、ほとんどの攻撃を食らっている。

バフとエンチャントのお陰で、直撃さえ避けてれば、大したダメージにはならないんだけど、流石にずっと食らい続けていれば体力は減っていく。


でも体力が減り続けてるのは俺だけじゃない。

集まってきたプレイヤーのうち5人が、リザードマンジェネラルを攻撃している。

ジェネラルはずっと俺をターゲットにしているから、後ろから攻撃し放題だ。

ただそんなにレベルが高く無いんだろう。

5人がかりでも、倒すのにはもうちょっと掛かりそうだ。

あんまり早く倒されても困るんだけどね。

それにリザードマンジェネラルは5人の攻撃で体力を減らし続けるが、俺はそうじゃない。


「ペッパーさん〈ヒーリング〉です!もう何がなんだか!」


メープルちゃんは混乱しながらも、しっかり体力管理が出来てるみたいだ。

俺の体力がある程度減ると、その都度回復してくれる。

というか、メープルちゃんの動きを気にしていたら、どうやら回復してるのは俺だけじゃない。

ブレイブの回復もしてるし、たまに他のプレイヤーも回復してるみたいだ。

本当に混乱してるんだろうか?

判断が良すぎる気がする。

そしてシロは飼い主(メープルちゃん)の混乱なんてどこ吹く風で、最初からカラスさんとリザードマンファイターを狩りまくっている。

テイム便利だな…。




それからリザードマンジェネラルが取り巻きを呼び出すこと3回。

俺が攻撃を捌き続けていたリザードマンジェネラルが、ついに倒れた。


「ジェネラル終了~!」


俺がそう宣言するのとほぼ同時に、最後のリザードマンファイターをカラスさんが倒した。


「これで祭りも終わりね。」

「祭りも終了~!皆さんお疲れ様でした!」


カラスさんの言葉を受けて、俺が祭りの終わりを告げる。


「お疲れ様でした!ありがとうございました!」

「おつ~、ありがと~!」

「ありがとうございました!結構稼げたな。」

「ヒールもありでした!」


周りから大量のお礼の言葉を掛けられ、一気に喧騒に包まれる。


「ほいほい、お疲れ様。こっちも助かったよ。ありがと~!」


俺もお礼を返して、お祭りは解散となった。




「結局アレはなんだったんですか?」

「お祭り騒ぎだったでしょ?」

「確かにお祭りみたいでしたけど…。」


祭りも終わり帰路に着きながら、メープルちゃんとそんな話をする。


「実はアレがフィールドボスとしてのリザードマンジェネラルの特殊能力なんだけどね…。」


俺はメープルちゃんに祭りの種明かしをすることにした。




フィールドボスとしてのリザードマンジェネラルの特殊能力は、取り巻きを何度も呼び出す能力だ。

取り巻きを全滅させても、リザードマンジェネラルが生きている限り、何度も呼び直す。

最初それが判明したとき、これで無限に狩り続けられるんじゃね?

と話題になった。

そしてそれにチャレンジするヤツがいた。

壁役がジェネラルを抑え続けて、他のメンバーで取り巻きを狩り続けたのだ。

結果として、無限狩りは流石に無理だった。

10回前後呼び出したところで、それ以上呼び出さなくなったのだ。

その代わり判ったことがあった。

一度に呼び出す数は、周りにいるプレイヤーに依存していた。

1パーティー6人で討伐すると、最大6匹までしか呼び出さないのに対して、無限狩りをしようと30人ほど集めたときは、最大30匹よびだしたそうだ。

これでまた沸き立った。

100人集めて10回呼び出せば、狩りまくれるじゃん!

って感じで。

まぁこれも、最大30匹程度までだったわけだけど。

それでも一時は、大手ギルドが30人集めて貼り付く自体になった。


まぁ、それも長くは続かなかった。

最大手ギルドのギルドマスターが、


「こんな面白いコンテンツを高レベルユーザーが独占してるのは楽しくない!」


と宣言し、壁役がリザードマンジェネラルを止めて、周りのプレイヤーを巻き込むさっきの『祭り』を始めたのだ。

それにお祭り好きなギルドが乗っかって、祭り狩りが定着していった。




「そして高レベルギルドはもっと上の狩場に行くようになって、最近では高レベルパーティーが見つけると祭りをすることが多くなったんだ。今でもギルド狩りをしてる人もいるけど、べったり貼り付いて、ってのはほとんど無くなったんだよ。」

「なるほど、それでさっきの祭りですか。」


メープルちゃんはやっと理解したと、ポンッと手を打つ。


「あれ?でもそれなら、リザードマンジェネラルは最後まで攻撃せずに、一杯呼ばせた方が良いんじゃないですか?」


まぁ、当然の疑問だろう。

10回くらい呼び出すなら、限界まで呼び出させた方が一杯狩れる。


「祭りを始めたギルドマスターがね、『祭りにルールなんていらねぇ、楽しんだヤツの勝ちだ!ジェネラルからレアを狙いたいヤツはジェネラルを殴れば良い。いっぱい狩りたいヤツは雑魚狩りまくれ!』ってね。それで好きに殴ることになってるんだ。」

「ジェネラルを巣まで狩りに行ける高レベルなら良いけど、そうじゃない浜辺適正レベルの人に目の前のボスを殴るな、は可哀想だしね。」

「誰かがそのルールを無視してボス殴った、なんて揉めるのは、お祭りっぽくないじゃないですか。」


俺の説明に、テツとみゃ~ちゃんが補足してくれる。


「あ~、確かにそうですね。お祭りは楽しまないと!」


メープルちゃんも解ってくれたみたいだ。


「まぁそれに、実際10回呼び出すまで戦い続けるとなると、あの辺適正レベルのユーザーにはキツいしね。」

「あ~それそれ、今回20匹呼ばれたときには、何人か脱落すると思いましたが、一人も脱落しませんでしたね。メープルさんは良い腕してますね。」

「脱落?」


みゃ~ちゃんの言葉に、メープルちゃんは新たな疑問が沸いたみたいだ。


「リザードマンが呼び出されたとき、壁役とパーティー組んでる高レベルパーティーがガンガン倒していって、他のプレイヤーはちょっとずつ倒して行くじゃん?」

「そうですね。皆さん凄い勢いで倒していって、いました。」


まぁ、ウチのメンバーは規格外ばっかりだしな…。


「でも流石に20匹とか呼ばれると殲滅が間に合わなくて、他のプレイヤーが相手をするリザードマンが多くなるんだ。」

「そして普段からあの辺で狩りをしてる人が、一騎にそんなに相手に出来る訳が無くて、やられちゃう人も出てくるのよ。」


後を引き継いだカラスさんの言う通り、つまりはそういうことだ。

あの辺で狩りをしている人には、なんなら2匹くらいまでが限界で、3匹以上はアイテムやアーツを使ってやっと、なんて人もザラにいる。

そんな人が連戦で戦い続けて、アイテムも魔力も保つ訳がない。


「あ~それでやられちゃったり、帰還するのが脱落ですか。」

「そ~いうこと。」


それが今回は脱落者ゼロだった。

大概何人かはいるもんだが。


「後ろから見てたけど、メープルさん凄かったよ。あれだけの人数がいるなかで、的確にヒールしてたし。確かに腕が良いよ。」

「あの人数をカバーするなんて、普段ソロとは思えないわね。」


後ろから魔法を撃ちまくっていたテツが、そんなことを言う。

カラスさんも同意したところを見ると、きっとホントに全員をカバーしてたんだろう。

確かにメープルちゃんが他のプレイヤーをヒールしてるのは知ってたけど、しっかり全体をカバーしてたのか。


「いえいえ、私は全然攻撃せずに、本当にヒールをしていただけなので。あんな速度で倒していく皆さんの方が凄いですよ。」


褒められて恥ずかしかったのか、メープルちゃんは頬を赤くてわたわたと手を振る。


「確かにメープルちゃんは回復に専念してたけど。それは役割分担じゃん。実際良いヒールだったぜ!すげ~助かった。」


そりゃ猪突猛進なブレイブからすれば、回復役がいるのは嬉しい限りだろう。

ブレイブはカラスさんと違って、全回避みたいな動きは出来ないし。

そもそもまともに回避せずに殴りに行くし。


「それに攻撃してなかったと言うけど、あなたのシロは良く働いていたわ。とても良い動きしてたわよ。ねぇ?」


カラスさんがそういうと、シロがワンッ!と鳴いた。

あれ?

昨日シロもクロも、基本的に俺の言葉には反応しなかったような…。

カラスさんとは早くも判り合えたのだろうか。


「そうですね。いっぱい倒しましたよね~。」


みゃ~ちゃんの問い掛けに、シロがまたワンワンッ!と応えた。

あれ?

もしかして俺が嫌われてるのか?

いや違う。俺はシロとクロに話し掛けてはいない。

昨日は同調してくれなかっただけだ。

俺も話し掛けたら、返事をしてくれるに違いない。

とりあえず試すのは辞めておこう。


「いや~、テイムがあんな強いとは思わなかったぜ。こりゃ運営の言葉も嘘では無さそうだな。」

「そうだね。このままシロもメープルさんも育てば、その辺のプレイヤーより強くなりそうだね。」


ブレイブもテツもシロはかなり強いという認識のようだ。

確かにテイムがあそこまで戦えるとは思わなかった。

カラスさんと一緒で、ほとんど回避してたし。


「あああれはペッパーさんのバフが強かったからで…でも、ありがとうございます…。」

「まぁ、あのバフで戦える時点で、結構凄いんだけどね。」


みんなから褒められたメープルちゃんは真っ赤になりながら、それでも最後は嬉しそうに笑っていた。

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