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VRMMO日記  作者: あずれ
6/53

2日目-3

あれ?

意外と週2…いや、やめておこう。

調子に乗るのは良くない。

毎週日曜日に更新してます。

「さて、それじゃとりあえず、浜辺に行きますか」


あれからメープルちゃんとギルドメンバーで雑談をして親睦を深め、とりあえず浜辺でパーティー狩りをしてみようと言うことになった。

砂漠での死闘は無事回避された!

これはメープルちゃんのレベルに合わせたからだけど、大人しく浜辺に決まったのにはもう一つ理由がある。

普段なら「砂漠でも大丈夫じゃないか?」とかイケイケなことを言う人が黙っていたからだ。

そう、狩りに関してはいつもグイグイなカラスさんが、狩場の話に口を挟んで来なかったのだ。

というか、もう話とか全然聞いてないし。

ずっとベアさんに付きっきりだし。

たまに普段では見れない、とっても可愛い笑顔が漏れていた。

笑顔が漏れては、慌てていつものキリッとした顔に戻る、というのを繰り返していた。

まさかとは思っていたが、あの声は悲鳴ではなく、カラスさんの歓喜の声だったみたいだ。




「浜辺ってどんなところなんですか?」


浜辺に向かって歩いていると、メープルちゃんが浜辺について聞いてきた。


「この街から歩いて行けるところなんだけど。通称リザ浜辺って呼ばれてる適正レベル50くらいの狩場で、稼ぎが良いんだ。」

「レベル50ですか…。」


今から行く浜辺はリザ浜辺と呼ばれていて、その名の通りリザードマンがメインで出てくる。

このリザードマンは生態系変化の影響を受けず、常に浜辺にいる。

確か、浜辺周辺はシーリザードマンと呼ばれる種族に占領される設定だった気がする。

浜辺を進んでいくと、シーリザードマンの巣というダンジョンがあったはずだ。


「レベル50となると、ベアさんには無理ですね。おいで、ベアさん。」

「あっ…。」


メープルちゃんが呼ぶと、ずっとカラスさんが抱いていたベアさんがメープルちゃんの足元に来る。

カラスさんがとても切ない顔をしている。

というか、切ないどころじゃない。

今にも泣きそうな、絶望的な顔をしている…。


「あっ、あの、すみません。流石にレベル1のベアさんでは無理なので…。」


メープルちゃんがとても申し訳なさそうな顔をする。


「いや…大丈夫だ。いや、大丈夫も何も、私は何も言っていないわ。」


カラスさんがいつもの表情に戻る。

いや、確かに何も言ってないんだけど、あの表情は雄弁に語ってたし…。


「ベアさん戻って。」

「ああぁ…。」


メープルちゃんがそう言うと、ベアさんはカラスさんに手を振りながら消えて行った。

ただのぬいぐるみに戻って、イベントリに仕舞われたんだろう。

そしてカラスさんはベアさんに手を伸ばした姿で、とてもとても悲しそうな顔をしている。

今にも泣き出しそうだ。


「コホン。」


あ、カラスさんが咳払いをして、元の表情に戻った。

う~ん。

なんだかカラスさんが可愛く…いやいや、可哀想になってきた。

っていっても、流石にレベル1のベアさんはなぁ。


「メープルちゃん、昨日のシロとクロは?」

「あ~、シロとクロなら大丈夫そうですけど、皆さんの邪魔になっちゃうんじゃ無いですかね?」


とりあえずカラスさんの為にも提案してみたけど、邪魔に、ねぇ。

確かにどれくらい連携が取れるのかわかんないけど…。


「まぁ、大丈夫じゃねぇか?ウチのメンバーなら、上手くやれんだろ。」

「そうよ、『AOD』のメンバーともあろうものが、連携が取れない訳が無いわ!そんなヤツは私が叩き斬ってくれる!」


ブレイブのフォローに、カラスさんが全力で乗っかる。

いや、ギルドメンバーを叩き斬るのはやめて欲しいけど。

カラスさんはベアさんみたいな、ぬいぐるみを期待してるんだろうか?

一緒に狩りをするんだから、流石にぬいぐるみのままってわけでは無いと思うけど…。


「まぁ、ああ言ってるし大丈夫じゃないかな?」

「そうそう。僕もテイム見てみたいし。」

「私も興味あります。テイムで戦ってる人って、あまり見ませんし。」


テツとみゃ~ちゃんも興味があるみたいだ。

みんな良いって言ってるし、実際ウチのメンバーならなんとかするだろう。


「そうですか?ありがとうございます。それじゃシロだけ。おいで、シロ。」

「うわぁ~…!」


メープルちゃんがそう言うと、傍らに真っ白な犬が現れた。

もちろんぬいぐるみではなく、昨日と同じホワイト・ハウンドだ。

今気が付いたけど、モンスターとして出てくるときほど怖い顔はしてないんだな。

今はまさに飼い犬、といった感じの、飼い主に甘えるような顔をしている。

そしてそのシロを見たカラスさんは、今までに見たことのない、とても良い笑顔をしている。

どうやらぬいぐるみじゃなくても良かったようだ。

まぁ、ぬいぐるみじゃなくても、もふもふした可愛い犬だしね。


「さ、触っても良いかしら?」

「はい。大丈夫ですよ。」


どうやら繕うのはやめたらしい。

カラスさんが笑顔のまま、シロを撫で回している。

シロもされるがままで、とても大人しい。

最早元々モンスターだったとは思えない。

そしてカラスさんは普段の凛々しい姿が見る影もなく、とても可愛い。

カラスさんにこんなに可愛い一面があったとは。


「カラスさんそろそろ狩場着くんで、準備を…。」


そう声をかけると、カラスさんはビクッ!と撫でる手を止める。


「そ、そうね。準備をして狩りを始めましょうか。」


ぎこちない動きで立ち上がり、いつもの表情に戻る。

あぁ、繕うのを止めたんじゃなくて、我慢出来なかったのか…。




「とりあえず、〈パーティーバフ:アタック〉、〈パーティーバフ:ディフェンス〉」


パーティーバフを使って、みんなの攻撃力と防御力を上げる。

パーティー全員を強化するバフだ。

通常の一人に使うバフより消費魔力は多いけど、パーティー6人に一人一人掛けるよりは消費が少ない。


「あとはテツとメープルちゃんはマナストリームだけで良い?」

「良いよ~。」

「はい。お願いします。」

「んじゃ、〈バフ:マナストリーム〉」


俺とテツ、メープルちゃんにそれぞれマナストリームを掛ける。


「ブレイブはいらないよな?カラスさんはアジで、みゃ~ちゃんはどうする?」

「俺は大丈夫だ。」

「頼んだわ。」

「私はデックスでお願いします~。」

「はいよ。〈バフ:アジリティー〉と、〈バフ:デクスタリティー〉」


カラスさんに素早さを上げるバフを、みゃ~ちゃんに器用さを上げるバフをそれぞれ掛ける。


「そんじゃ、狩りを始めますか。」


みんなにバフを掛け終わったところで、狩りの始めを合図する。


この後は俺はぶっちゃけ暇だ。

この狩場だと、殆ど俺に出番は無い。

っと…。


「ちょっと待った。忘れてたわ。〈バフ:アタック〉、〈バフ:アジリティー〉」

「ワンワンッ!」


シロにもちゃんとバフを掛けないとね。

どうやらテイムには、パーティーバフが適用されないみたいだ。

とりあえずアタックは掛けておく。

昨日の戦闘を見る限り、ディフェンスは無くても大丈夫だろう。

っていうか、もう殆ど魔力残ってないし。


そう。

俺に出番が無いっていうか、そもそも最初のバフで殆ど魔力が無くなる。

マナストリームを掛けているから、ちょっと待てば回復するけど、それまで大して出来ることもない。

まぁ、やることも無いんだけど。


最初に出会ったのは、リザードマンファイター3匹だった。

この浜辺では、一番ベーシックなモンスターだ。


「よっしゃ!行くぜ!!」


そう言ってブレイブが飛び出す。

そういやブレイブは『スプリガン』という、物理攻撃力特化な種族で、物理攻撃力特化な脳筋パラメーターだ。

そして戦い方も猪突猛進な、もう真っ向から脳筋だ。

そしてそんなブレイブがたどり着く前に、リザードマンファイターに斬りかかる影がある。

カラスさんだ。

この人の動きはいつ見ても良くわからない。

ブレイブと違って、いつの間にかモンスターに斬りかかっている。

しかも大概ブレイブより先に。


「フッ…。」


カラスさんが息を吐く音と共に、手に持った日本刀でリザードマンファイターの一匹を斬りつける。

鎧の隙間に鋭い太刀筋が走る。

いつ見ても惚れ惚れするほど綺麗な太刀筋。

恐ろしく速く的確に鎧の隙間を縫った刃が、リザードマンファイターを深く傷付ける。

とはいえ適正レベルの敵を一撃必殺とは行かず、リザードマンは深く傷付き仰け反ったものの倒せはしなかったみたいだ。

そして日本刀を振り抜いたカラスさんのもとに、残った2匹のリザードマンファイターが飛び掛かる。

ただリザードマンファイターが手に持った剣を振り上げた時には、カラスさんは既にその場から飛び退いていた。


「よっしゃ行くぜ!おオラァァ!!」


カラスさんに注意が向いたリザードマンファイターの片方に、ブレイブが気合いの声とともに両手剣を叩き付ける。

こっちはカラスさんと違い、力一杯上段から降り下ろすだけの簡単な攻撃。

ただし物理攻撃力特化なブレイブの攻撃力は、カラスさんの攻撃よりも重い。

リザードマンファイターも咄嗟に避けたみたいだけど、肩口に鎧を破壊し深々と剣が食い込んでいる。


「それじゃ私はもう片方!」

「うわぁ!出番が無くなる!〈サンダージャベリン〉!」


声と共に俺の後ろから、矢と雷の槍が飛び出す。

みゃ~ちゃんの長弓から放たれた矢は狙いたがわず、最後の無傷だったリザードマンファイターの喉元に突き刺さる。

そしてテツの魔法の槍は、ブレイブの攻撃で傷付いていたリザードマンファイターを見事に倒した。


あ、忘れてたけど、テツは『ニュージェネレーション』という種族だ。

ヒューマンから新たに進化を遂げた人間、らしい。

進化を遂げたと言っても、ヒューマンの上位互換と言うわけでは無く。

ヒューマンより肉体能力は衰えているが、魔法に適した進化を遂げた人間だ。


それにしても珍しい。

普段ならみゃ~ちゃんもカラスさんの攻撃した敵に合わせて、数を減らしに行くのに。

と思ったら、シロがカラスさんの攻撃したリザードマンファイターの首筋に噛み付き、あっさり倒して見せる。

そして残った矢の刺さったリザードマンファイターをカラスさんが斬りつけて、戦闘は一瞬で終わった。

みゃ~ちゃんはシロが攻撃するのが見えてたのか。

初めてとは思えない、見事なコンビネーションだ。


「ふわぁ~…。皆さんとても強いですね。私何も出来ませんでした。」


メープルちゃんは驚いた!という表情で、感嘆の声をあげる。

だよね~。

ウチのメンバーは異常だよね~。


そういや最後になったが、メープルちゃんは『エルフ』だった。

いや、昨日見たときから気付いていたんだが。

エルフは良くある通り、耳が長くて尖っているし。

ちなみに特徴も良くある通り。

力が弱めで器用で魔法が得意。

魔法は『ニュージェネレーション』よりは弱いらしい。

そして知らなかったが、テイムやペットに補正がかかるらしい。

流石はエルフ。

動物と仲が良いということか。

いや、テイムは動物では無いが。

動物みたいなもの…なのだろうか?


「メープルさんも活躍したじゃ無いですか!シロちゃん良い動きでした!」

「その通りだ。シロは良い活躍をしていた。テイムスキルあっての動きでしょう?」


みゃ~ちゃんとカラスさんが、シロの活躍を褒める。


「そうそう。メープルちゃんは働いたよ。それに引き換えウチのギルマス様は流石の高みの見物。」

「そうだね。ギルマス様ともなると、雑魚の相手はギルマスに任せると。」


ブレイブとテツも一緒になって、メープルちゃんの活躍を褒め…あら?

なんか違くね?


「お前ら!俺をイヤなヤツに仕立て上げるな!確かに何もしてねぇが、俺はちゃんとバフを掛けてる!」


まぁ、バフは最初に掛けっぱなしで、さっきの戦闘ではなんもしてねぇが。

でもあんな速度で戦闘が終わったら、出番ねぇって。


「そうだね。バフには感謝してるよ。今の戦いじゃ一番働いて無いけど。」

「そうね。バフのお陰であれだけ楽に戦えてるんだし。感謝してるわ。今の戦いは出番が無かったけど。」

「うが~!」


テツとカラスさんの励まされない励ましに、俺が両手を振り上げる。

それを見たみんなが笑いに包まれる。

メープルちゃんも笑ってるから、まぁ良いとしよう。

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