表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMO日記  作者: あずれ
4/53

2日目-1

なんか早く書けたので…。

日曜日に更新と補記したその日に、日曜日の分とは別に投稿してみます。

ペース乱すなって?

「はぁ…。俺もカワイコちゃんナンパしたい…。」


机につっぷして、そんかコトをボヤく。

いや、俺がじゃない。

俺はそんなアホなコトは言わない。

ボヤいたのは俺の目の前に座る冴えない男。

悪友の相沢(あいざわ)結城(ゆうき)、昨日俺にログイン連絡をしてきた、同じギルド『AOD』のメンバー『ブレイブ』だ。

結城って名前で『ブレイブ』ってキャラ名は安直過ぎると思わないか?

その点俺のキャラ名は捻りが効いている。


そんなコトより。

冴えない、と言ったが、あれは嘘だ。

誠に遺憾だが、コイツに冴えない、という言葉は当てはまらない。

何故ならコイツは、非常に誠に遺憾だが、所謂イケメンだ。

しかもかなりの。

身長は優に180cmを越えていて、スポーツをやっている人間特有の引き締まった身体。

そして何より、嫌味の無い、どこまでも爽やかなイケメン。

それが相沢結城だ。


まぁでも、そんな隙の無いルックスだが、隙だらけの発言が多い。

さっきのようなアホな発言も珍しくない。

というか、どこまでもいつも通りな昼休みだ。

少し唐突な感じはしたが、発言はいつも通りなので軽くスルーすることにした。


「おぉ結城!そんな辛そうな顔をして、一体どうしたって言うんだい!?」


…俺はスルーした。

スルーしたが、釣られるヤツがいた。

俺の斜め前に座るもう一人の悪友、高山(たかやま)哲史(まさし)だ。

コイツがギルド『AOD』の名付け親、キャラクターネーム『テツ』だ。

『さとし』の『哲』から『テツ』らしい。

コイツも安直な…と言いたいが、コイツの場合は普段のニックネームもテツだから、そんなもんだろう。

コイツは結城と違って、身長が160cmくらいしかない。

そしてそれほど筋肉も付いていない。

ちょっと小さいが平凡な体型だ。

ただし、童顔で整った顔立ちをしている。

守ってあげたい系のルックスで、お姉さま方に非常に人気がある。


っていうか、なんか芝居がかった反応だな。

外国人の通販みたいな。

…なんか嫌な予感がする。


「聞いてくれよテツ。俺昨日見ちゃったんだよ。」

「一体何を見たって言うんだい?結城。」

「それがさ、知ってる顔のヤツが凄い可愛い子と歩いてたんだよ。」


いや、演技があからさま過ぎだろ…。


「それは誰だったんだい?」

「良く見る顔なんだけど、名前が思い出せなくて…。確か調味料みたいな名前だったような…。」

「いや、明らかに俺のコトだろ!」

「「そうだ!お前だ!!」」


ついつい突っ込んだら、俺のツッコミの倍の勢いで、二人から怒鳴られた。


「その通り。君のことだよ、ペッパー君。詳しく聴かせて貰おうじゃないか。一体いつ、どこであなん可愛い子をナンパした?」

「そうそう。しっかり詳しく教えてよ。僕も凄く興味があるな。」


結城が只でさえデカイ体を乗り出して食い付いてくる。

哲史の方は穏やかな微笑みを浮かべながら、優しそうに諭してくる。

だけど俺は知っている。

哲史の優しそうな笑顔に騙されちゃいけない。

アイツは笑顔のままで、どこまでも追い詰めてくるヤツだ。


「っていうか、ナンパなんかしてねぇし。」

「そんなハズは無い!ナンパじゃないなら、あんな可愛い子と出会う機会なんてないはずだ!あんな可愛い子がお前に声を掛けてくるハズがない!」


…酷くね?

確かに俺は結城ほどイケメンじゃ無いが。

それでも酷くね?

確かに可愛い子から声掛けられたコトなんて無いけど…。


「別にナンパなんてしてねぇって…。林で採集してたら、たまたま林で会ったんだよ。」

「なんでたまたま会っただけで、街まで愉しそうにお話しながら帰ってくる、なんてコトになるのかな?」


哲史があくまでも優しく問い掛けてくる。

言い方は優しいが、コイツは絶対に獲物を見逃さない。

まぁナンパなんてしてないし、別に逃げるつもりも無いが。


「ホントにナンパじゃねぇって。昨日林で採集してたら…。」


と、昨日あったことを説明する。

別に辻バフしてそのまま一緒に街まで帰った、ってだけなんだが。


「しっかり一緒に帰ろうって声掛けてるじゃねぇか!」

「そうだね。いつもは辻バフしたら、そのまま立ち去るよね。なんで見守ってたのかな?」


…あれ?

俺別にナンパしてないよな?


「たまたま特異固体と戦ってたから見てただけだって。一緒に帰ることになったのも、たまたまタイミングがあっただけだろ。」


そうそう。全部たまたまだろ。


「ふ~ん。じゃあ敏男は、()()()()可愛い子に出会って、()()()()辻バフをして、()()()()声を掛けて、()()()()一緒に帰って来たんだね。」

「そうだぞ。たまたま、な」


そう、たまたまだ。哲史の言葉に頷く。

わかってくれたようで、なによりだ。


「でもそれをナンパって言うんじゃ無いかな?」


…あれ?

いや、そんな馬鹿な…。


「あ~あ~。やっぱりナンパかよ!良いな~!決めた!俺も戦闘職なんて辞めて、補助職になろう!辻バフバンザイ!!」


何これ。

なんか雲行き怪しいんだけど…。

このままじゃ押し切られる気がする。

ここは話の流れを変えよう。

そうだ、それが良い。


「結城はそんなコト言ってて良いのか?可愛い幼馴染みの彼女が怒るぞ?」


そうだ。

そいつには彼女がいる。

しかも幼馴染み。

朝迎えに来て、一緒に登校するような、まさに絵に描いたような幼馴染みだ。

まぁ、結城と友達になってからは、俺も一緒に登校してるんだが。


「鈴は彼女じゃねぇって。ただの幼馴染みだ。なんていうか、妹みたいなモンだよ。」


さっきまでの勢いはなくなり、結城はヤレヤレといった感じでそんなコトを言う。

結城は何故か幼馴染み、一宮(いちみや)(りん)と付き合っていることを認めない。

だが言い訳までがテンプレとあっては、説得力はゼロだ。


「そうそう。結城きは一宮さんがいるじゃない。仕方無いから、ここは僕が回復職になるよ。」

「いや、何が『仕方無い』んだよ!大体お前にも『会長』がいるだろ!」


仕方無いの意味がわからん。

そして哲史にも彼女がいる。

『会長』と呼ばれる、一つ上の先輩にして、この学校一番と名高い(たちばな)(みやび)先輩だ。


「ねぇ敏男、それ本気で言ってるの?」


哲史はこれまた、ヤレヤレみたいな表情で、そんなコトを言ってくる。

コイツも何故か会長と付き合っていることを認めない。

俺なら、あんな美人と付き合えたら、言いふらしたいくらいなんだが。


「本気でも何も、付き合って無いのに毎日会いに来るとか無いだろ。毎日委員会の用事があるわけじゃ無いんだろ?」

「そ~なんだけどさ~。」


哲史はそう言って溜め息をつく。

やっぱりそうなんじゃねぇか!


「─盛り上がってるところゴメンね。ちょっと良いかな?」


馬鹿なやり取りで盛り上がっていると、後ろから可愛い声が聴こえた。

間違いない。

振り返るまでもなく、この声の主は美人に違いない。

しかも、超絶美少女。

っていうか、振り返らなくても誰だかわかる。


「なにかな?白倉さん。」


そう、哲史が言った名前は、俺が思い浮かべた通りの名前。

振り返った俺の目に飛び込んで来たのは、このグラス一番の美少女の顔。

というか、この学校の美少女ランキング2位と名高い、白倉(しらくら)(かえで)の顔だった。

ちなみにこの学校の美少女ランキング1位は、会長こと橘先輩で、3位はテンプレ幼馴染みこと鈴ちゃんだ。


くそぅ。なんで俺の周りはイケメンばっかりなんだ。

いや、別に悔しくなんて無いが。

くそぅ…。


「橘先輩が高山君に用事だって。」


そう言って白倉さんが指差した先には、教室の入り口に佇む橘先輩がいた。

目があったので、ペコリっと挨拶をしておく。

すると向こうも手を挙げて返してくれた。


「ほらみろ。今日もこうやって、会いに来てるじゃないか。」

「はいはい、そ~だね。」


哲史はそう言って席を立つ。

あんな美人の先輩が訪ねてきて何が不満なのか、哲史はつまらなそうな、今にも溜め息でも付きそうな顔だ。


「そういえばなんだかとっても盛り上がってたみたいだけど、なんの話をしてたの?」

「あぁ、いつも通り大したことじゃ─」

「聞いてくれよ白倉さん!」


白倉さんの問いに俺の言葉を遮って、結城が大きな声で返事をする。

いや、まてなにを…。


「敏男のヤツが昨日、凄い可愛い子をナンパしたんだ!」

「ええっ!佐藤君がナンパ!?」


その瞬間、教室が静まり返る。

というか、俺も言葉が出ない。

…びっくりした。

結城の妄言は予想通り過ぎてびっくりしなかったが。

白倉さんのリアクションに教室中が驚いている。

話を振った結城ですら驚いた顔で固まっている。

あんな大きな声を出すところ、初めて見た。


白倉さんは別に静かな方って訳じゃない。それどころか、普段から明るい、接しやすい方だ。

ただ、あまり大きな声で騒いだりするタイプじゃない。

そんなクラスでダントツに人気のある白倉さんが 、普段上げない大声をあげたのだ。

しかも内容がナンパ。

クラス中が驚くのも頷ける。

っていうか、ナンパ?…ナンパ!

叫んだ内容がヤバすぎる!


「おい結城!適当なコト言ってんなよ!俺はナンパなんてしてねぇ!」


ヤバさに気付いて立ち直った俺が、ちょっとヤケ気味に叫ぶ。


「あ…あぁ、そうだな。」


結城は少し呆然とした感じのまま頷いた。


「えっ…。あぁ、嘘か~。あははっ、驚いちゃった。」


白倉さんは自分が大声を出したことに気付いたのか、赤い顔で苦笑いを浮かべている。

そこでクラスの連中も立ち直ったらしく、なんだ結城のいつもの馬鹿話か…とか言いながら自分達の会話に戻っていく。

なんとかクラス中からナンパ野郎だと思われるのは、回避出来たみたいだ。


「そうだよ、別にナンパとかしてないし。昨日ゲームでね…」


白倉さんに、昨日ゲームで女の子を助けた話をした。

白倉さんはふむふむ、と途中相づちを挟みながら話を聞いてくれた。


「というわけで、別にナンパとかした訳じゃないんだよ。」

「…あ、あぁ、そうなんだね。それはナンパじゃないね。」


白倉さんはわかってくれたみたいだ。

なんか上の空っぽいけど。

ゲームをやらない人にゲームの話しとかしても、そんなに面白くなかったかもしれない。

まぁ、誤解が解ければそれで問題はない。


「それって、なんていうゲームなの?」


あれ?

白倉さんは実はゲームとかやるんだろうか。

興味を持ってくれたのかもしれない。


「『New World Online』っていう、VRのオンラインゲームだよ。俺と結城にテツの三人でやってるんだ。」

「ふ~ん…。そうなんだ…。」


白倉さんはそう言って、席に戻っていった。


あら、聴かれたからこたえたのに、なんだか気のない返事が返ってきた。

別に興味を持ったわけでは無かったのか。

社交辞令的なヤツかもしれない。

ゲームのタイトルを聴くのが、社交辞令になるのかはわからないが。




そんな馬鹿話で昼休みは終わっていった。

途中クラス中から冷たい目で見られる未来が思い浮かんだが、どうやらその未来も回避出来たようだし。

概ねいつも通りの昼休みだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ