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VRMMO日記  作者: あずれ
1/53

1日目-1

日記を書こうと思ったのは、ただの思い付きでしかない。

何があったわけじゃなく、本当になんとなく、日記でも書いてみるか~って気になっただけ。

いや、それは嘘だ。

事件があった。

だから日記を書こうと思ったわけではないけれど、今日は大事件が起きた。

今日俺は、信じられない美少女と出会った…。


--------------------


今日もいつもの時間に、俺こと佐藤敏男は「ペッパー」として『new World online』の世界に降り立った。

もちろん異世界に来たわけでもなく、単純にいつも通りゲームにログインしただけだ。

『new World online』通称『nWo』は話題の超大作VRMMOだ。

話題と言っても、やることは在り来たりなファンタジーモノで、剣と魔法でモンスターを倒す!

まぁ、VRMMOが珍しく無くなった今では、それだけで話題にはならないんだが…。

超大作と言うだけあって、それなりに凄いシステムになっている。

凄いシステムについては、追々書いていくとして。

忘れていたけど、「ペッパー」は俺のキャラクターの名前だ。


今日はギルドメンバーがまだ誰もいないようなので、一人でフィールド探索に行くことにした。

俺はソロの時は、低LVの狩場で素材採集をしていることが多い。

というのも、そもそもソロで狩りが出来るほど強いビルドでは無いからだ。

俺のキャラは、所謂バッファー、またはエンチャンターなんて呼ばれるビルドをしている。

味方を強化魔法(バフ)で強化して、敵を弱体魔法(デバフ)で弱くする。

そんな補助魔法メインなビルドをしている俺のキャラは、ソロではあまり強くない。


っと、ここでちょっとこのゲームのシステムについて触れておこうと思う。

このゲームには所謂職業というものが存在しない。だから職業がバッファーなわけではなく、スキルの育て方でバッファーに分類される。

このゲームはスキルを使うと、その系統のスキルが育っていく。

例えば剣を使えば剣スキルが育って、新しい剣スキルを覚える。

弓を使えば弓スキルが育つし、体術スキル、盾スキルなんてのもある。

どの武器を使っていても、ある程度スキルが育つと属性付きのスキルを覚える。

属性付きスキルを使うと、武器スキルとは別に属性スキルも上がるようになる。

これまた例えば、風属性の刀スキル『鎌鼬』で敵を攻撃すると、刀スキルの他に風属性スキルが育っていく。

魔法の場合は攻撃魔法スキル、回復魔法スキル、補助魔法スキルで分かれていて、それプラス属性スキルが育つようになっている。

さて、俺のキャラはというと、言うまでもなく補助魔法スキルをメインに育てている。

メインにというか、ぶっちゃけ補助魔法スキルしかほとんど育っていない。

普通はバッファーと言っても、補助魔法スキルをメインにその他に武器スキル、または攻撃魔法スキルを育てるのが一般的だ。

その方がソロでも狩りが出来るからだ。

そんななか俺はというと、補助魔法スキル以外では生産系スキルを育てている。

最初は俺も攻撃系スキルを育てようと思ったんだが…。

一緒に始めた友達が戦い方が上手すぎて、自分が戦うより補助してた方が良かったんだよね…。

結果徹底的に補助に走ろうと決めて、補助魔法+生産系スキル、というキャラが出来上がった。

だからソロのときはあまり強い狩場には行けず、低LVの狩場で生産に使う素材集めをしていることが多い。

今日は街の近くのちょっとした林で、ザコモンスターと戯れつつ素材採集(草むしり)をすることにした。




しばらく林の探索を続けた結果、現在ここはフォレスト・オークの棲み家になっているらしい。

前に来たときは、植物(プラント)系モンスターがいたのに。

これがこの『nWo』が話題の理由─『生態系変化システム』

プレイヤーが狩りをすることで、ポップするモンスターが変わっていくのだ。

最近ではどうやら狩りをしなくても、徐々に変わっていくらしいことがわかっている。

このゲーム製作者曰く、


「最近はネットを使っての情報伝達が速く、ドキドキする冒険はアップデートから長くても数週間しかない。冒険とはもっとドキドキするものであるべき!」


だそうな。

そして俺もそう思う。

そういったプレイヤーから人気を博し、『nWo』は一気に話題作となった。

なんせ同じ場所で狩りをしてても、いつ新しいモンスターと出会うかわからない。

先行している高LVプレイヤーが探索した後のフィールドでも、新しいモンスターと出会うかも知れない。

これほどドキドキするMMOが今までにあっただろうか。

またこのシステムは、今までのMMOが抱えてきた、一部の狩場だけがやたらとこみ合うという問題も解消した。

なんせ、経験値効率の良いモンスターがいる、良いレアを出すモンスターがいるなんてウワサが流れた日には、一週間もすればそのモンスターは狩り尽くされて、違うモンスターに変わるのだ。

一部の狩場に引きこもる意味が無かった。

そしてこのシステムは、生産好きなプレイヤーにも大いにウケた。

新しいモンスターが見つかる度に新しい素材が増え、新しいものが生産出来るのだ。

生産出来るものがどれだけあるのか、もう既に誰にもわからない状況だ。




「そして汎用素材をドロップするプラント系モンスターは、見事に絶滅したのです。ってか。」


俺はフォレスト・オークを倒しながら、そんな独り言を呟く。

なんか変だとは思ってたんだ。

前来たときは、ここの林もっと人いたし。

どうやら汎用素材を出すために、金策に向くプラント系モンスターは狩り尽くされてしまったらしい。

そしてこのLV帯の森では良くポップする上に、大して旨味のないフォレスト・オークになった今、この林は完全に過疎っている、と。


「まぁ、俺は素材採集(草むしり)に来ただけだから、空いてる方が良いんだけどね~」


って、一人なのになんで俺は言い訳みたいなコトを言ってるんだ。

元々本当に採集目的だし、別に悔しくなんて無いし。

って、だから俺は誰に言い訳を…。

なんてモヤモヤしながら、各種薬の汎用素材になる『大葉薬草』を採集する。


さっきから何度もフォレスト・オークを倒しちゃいるけど、特にレアドロップなんかも無く。

たまにファング・ベアって名前の牙の生えた熊も出てくるけど、こっちも大したドロップは無く。

大したドロップは無いけど、ファング・ベアってどれくらいメジャーなモンスターなんだろ?

倒す度に『熊の牙』が手に入ってるから、レアなドロップでは無いんだろうけど。

存在自体がレアな場合もあるから、このゲームは油断ならない。

これで一攫千金!

だったら良いな~。


なんて考えてたら、悲鳴が聴こえた…ような気がした。

気のせいかも?って思ってたら、

「シロ、クロ、頑張って!!」

なんて威勢の良い女の子の声が聴こえてきた。

どうやら気のせいなんてことも無いようだ。

声の感じからして、そこまでは遠くなさそうだ。

今まで誰とも出会わなかったこともあり、ちょっと覗いてみることにした。

-別に女の子の声だったからなんてこと、ちょっとしかないし。

小走りになりながら、声のした方を目指す。




急に視界が開けた。

どうやらちょっとした広場になっているらしい。

そこには美少女が─が…。

白い二本足で立つ豚がいた…。

いや、悪口とかじゃ無いよ?

そんな酷いこといわないよ?

本当に二本足で立つ豚がいただけで。

さっきまで倒していたフォレスト・オークがまさに二本足で立つ豚なんだが、色は緑色だ。

多少濃さに違いはあっても、全部緑色だった。

でも今見つけたのは真っ白だ。

名前はフォレスト・オークと表示されている。

─突然変異個体。

きっとあれは突然変異個体だろう。

これもまた『生態系変化システム』の特徴だ。

稀に突然変異個体といわれる、所謂レアモンスターがポップするのだ。

見た目がちょっと違って、強さとドロップが変化する。

強さは必ず強くなる訳じゃなくて、弱い個体になることもある。

あの個体は…

と、観察していたら、一匹の黒い犬が白い(フォレスト・オーク)に飛びかかった。

特異フォレスト・オークがその攻撃を避ける。

その拍子に、フォレスト・オークの向こう側に女の子が見えた。

…良かった、ちゃんと女の子がいた。

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