覚醒
こうして魔法使いを相手に初めての戦闘を開始した。
開始早々やはりレザードは負けぎみだった。もちろんバノックは魔法を使っていない。しかしバノックは格闘の達人、戦闘経験のないレザードに負けるはずがなかった。そしてレザードはついに倒れてしまった。
「やっぱ勝てるわけねぇよあんなのに。」
「しょうがないさ、だが、嘆いてる暇は無いぞ。休んだらまた訓練だ。」
それからまた村の魔法使いを呼んでは戦わせた。そして、龍拳の使い方もしだいに覚えていき、だいぶ魔法も吸収したようだった。やがてレザードは
「あのときは苦戦したが次は勝てる!」
と、自信ありげに言った。しかし、ネロは
「ずいぶん自信があるようだな。たしかに吸収する魔法にタイプは関係なくどんな魔法も使える。だからといって、そうやすやすと勝てる相手ではないぞ。」
「そんなことは分かっている。けど、負けるとは限らないだろ?」
「まあ、そこまで言うのならいいだろう。呼んでくるから待っていてくれ。」
こうしてレザードは再びバノックと戦うことになった。やがて、バノックがやってきた。
「また戦いのか?まったく懲りない奴だ。それにちょっとは強くなったのか?」
早速バノックは皮肉を言ってきた。ネロは
「結構強くなってるはずですよ。まあ、やってみればわかりますよ」
「それもそうだな。よし、相手してやろう。だが、模擬戦闘ではない、これはセミナーだ。」
こうしてレザードの雪辱戦が始まった。バノックは始まってすぐにレザードが前に戦ったときと別人になっていることに気が付いた。バノックは少し手を抜いてはいるが、相手はまだ魔法は使っていなかった。すると、レザードが魔法を唱えた。
「イグニートジャベリン」
どこからともなく大剣が出てきた。そしてさらに呪文は続く。
「オーディナリーシェイプ」
するとバノックの動きが鈍くなった。レザードは本気で倒そうと大剣を持ち、襲い掛かった。さすがにバノックは危険と感じたようだった。すかさずバノックも呪文を唱える。
「ガードレインフォス」続けて「レデュースパワー」
バノックの体が硬質化し、力が上がったようだった。レザードの一撃がバノックに迫る。だが、呪文によって硬質化したバノックの体には全く効かなかった。しかし二撃目が来るとき、バノックは体に異変が感じられとっさに避けた。一撃目はまともに受けてもはじいたが二撃目は違った。避けきれずに大剣の先が当たった、先が当たっただけなのにも関わらず二の腕が切れた。
“なぜだ!”
しかし、すかさずバノックは反撃した。そのとき自分の体の異変と、なぜ二撃目がはじけなかったかが分かった。相手が硬質化したのだった。
「こ、こいつ俺の力を喰いやがった!」
バノックは見くびっていただけあって、かなり驚いた。驚いたのはバノックだけではなくネロもだった。ネロは思った。
“まさかこれほどまでとは!!”
このときレザードは勝てると確信した。