特殊な力
レザードはまず、ネロの家に招待された。
「悪いがここに長居するつもりは無い」
突然の発言にネロが答える
「脱走したばかりで疲れているだろう。それにどこにいくつもりだ。今の世界は魔法使いには危険だということは分かっているだろ。」
「危険なのは分かっている。城に忘れ物があってな。」
「おいおい、どこに行くかと思えば敵の城か。さっきまでその城の敵に追われてたのにか。」
まさか、ネロからそんな皮肉が来るとは思わなかった。そう指摘されるとレザードは反論できなかった。
「村長のところへ来てもらう。」
「待て、その前に俺の手に付いているリングをはずしてくれ。どういう分けだかこれが付いて
いると魔法が使えないんだ。」
と、レザードは両手首を見せた。石のブレスレットのようなものが手首にはめてある。
「これは魔封石だな。これが付いていると魔力が出せなくなり魔法が使えなくなる。おそらく
政府が魔法を使われると厄介だから付けたんだろう。」
とネロが言うと、手から小さい光が出て、光がリングを砕いた。
「さあ、村長の下へ行こう。」
椅子に座っている村長と、身の回りの世話をすると思われる若い男が二人いた。村長は結構年をとっていて椅子から立てないままだそうだ。村長の部屋へ付いた二人は村長に今までの出来事を話した。
「ふむ、ところでおぬしの魔法のタイプは何だ?」
「実はタイプとかよく分からないんです。」
「なるほど、昔魔法使いには龍が宿っていると言われていた。だが、言われていただけではな
く実際に宿っていた。しかし、今の魔法使いに龍が宿っているのは極わずかだと言われている。この村には約120人の魔法使いが住んでいるが龍が宿っている魔法使いは私と私の息子のネロだ。」
レザードは唖然とした。ネロは村長の息子で龍が宿っていた。
「私と私の息子の龍は一般に『龍眼』と呼ばれている。この能力は通常では見えないものが見
える能力だ、心の中でさえ。だが、この力を使うと大量の体力を消費する。訓練されていなければ少し使っただけで立って歩けなくなるほどになる。だからいざというときにしか使わんのだ。」
レザードが言った。
「へぇ、このネロがそんな偉大な能力の使い手だったとは・・・ところで、その能力を俺に話して何になる。まさか魔法をろくに使えない俺がその龍の宿主だとかな」
レザードは笑いながら言った。すると村長が
「そのまさかだ。おぬしのような年頃で魔法を使えないはずが無い。お前はわしらのように生まれながらの魔法使いだ。才能のある人間が努力してなった魔法使いとはわけが違う。おそらく、おぬしは龍拳と呼ばれる龍を持っているとわしは思う。その力は数ある龍の中で最も強い、恐ろしいほどに。魔法が使えないといったのはその龍拳のせいじゃ。」
レザードは反発した。
「おいおい、龍を持ってるってことは強いんじゃないのかよ。」
村長はむっとした。
「人の話しは最後まで聞け。その龍拳の能力とは、相手の力を吸収し自分の力にすることだ。だから魔法が使えないんじゃない。使える魔法が無いんだ。おそらく今までに使った魔法は何かの拍子に吸収した魔法だろう。だが訓練してないためにその魔法は逃げてしまったんだろうな。しばらくはここで訓練するといい。」
こうしてレザードは魔法を得ながら訓練することになった。