副騎士団長
マキシマス視点です
自慢ではないが、俺は16歳という史上最年少の若さで騎士団に入団した。
神童と持て囃され出世街道を突き進み、今じゃハルベルグという結構大きな街で副騎士団長を務めさせていただいている。
「ナイトレイ副団長!」
「ん?どうした、ヴォルテール?」
ああ、俺の名前はマキシマス・ナイトレイだ。
親しい奴等にはマックスと呼ばれている。……なんだか餓鬼っぽくて俺はあまり気に入っていないのだがな…。
「レオナルド騎士団長がお呼びです。至急騎士団長室に参られるようにとのことです。」
「ああ、了解した。」
俺は、ヴォルテールを下げると直ぐに副団長室を出た。レオナルド騎士団長は時間にあまり拘らない方だが、何か重要な事があるかもしれないので少し早足で廊下を急ぐ。
レオナルド騎士団長…か。あの人のことは未だによく分からない。一見するとただの街の飲んだくれにしか見えないのだが、ああ見えて結構な切れ者らしい。昔は剣聖と呼ばれ沢山の戦場で戦果を挙げてきたらしいのだが…。
噂によると、陛下直属の尖鋭が揃うザーバルド騎士団に勧誘されたにもかかわらず直ぐに断ったらしい。いったい何者なんだ、あの方は…。
考え事をしながら廊下を歩いていると、向こうからだらしなく制服を着崩した男がやって来た。同期で第一部隊の隊長のギルバートだ。
「おっ!マックス発見ー!騎士団長が呼んでたぜー?」
「知っている。今から行くところだ。…あとな、仕事場で俺の事をマックスと呼ぶのはあれほど控えろと…」
「んな堅いこと言うなよー!そんなだから未だに童貞のままなんだぜー?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべるギルバートをギリッと睨むと殴りたい衝動を必死で抑え「…関係ないだろ。この節操なしめが」と漸く低く唸るだけに留めた。
すると奴は気にした風でもなく、ハハハと朗らかに笑うと馴れ馴れしく俺の肩に腕を回してきた。
「そうカリカリすんなよ、お前は真面目過ぎるだけなんだから!騎士団長室に行くんだろ?俺もお前と同じで騎士団長に呼ばれてるから一緒に行こうぜ」
そう言うとギルバートは勝手に進み出して、道すがら俺にちょっかいを出しながら結局二人で仲良く騎士団長室に入るはめになった。
…本当に最悪だが、コイツはこう見えて優秀でいいやつだった。