始まりは牛
私は目を瞑っていた。ここが何処かとか、今が何日の何時とか、そんなことは分からない。ただ酷く眠かった。
ふと、暖かな風を頬に感じた。
なんと言うことはない、ただの風だ。…ただ、私の曖昧な記憶だと今の時期は秋冬物の服が欲しくなってきた頃だと思っていたのだけど……。
…まあ、いいか。寒くないに越したことはない。だから、もう少しこのまま眠っていよう……――――
「モォオオーーー!!!」
「…ぅおっ!?な、何々っなんなの……っ!!?」
ガバッと急に起き上がると頭がクラッとした。
…ダメだ、急に身体を起こしたから視界が定まらないしフラフラする…。
「モォオオーー!!」
「うっ!だからいったい何よ………………って牛?」
次第に鮮明になってきた視界には牛がいた。それは確かに牛だった。
「何で………牛?………………というか、これ本当に牛かな……?」
その牛の額には何故か一本のユニコーンのような鋭い角が生えていた。私の知る限り、こんな牛はいない。常識的に考えて牛の角は二本で、こんな額のど真ん中に生えているものではない。
「…ぅうあっ!!しかもよく見たら一頭だけじゃないじゃないぃ…!」
そう、その牛…モーモーさんは、たった一頭だったわけではなく大量にいた。……………………私を囲むようにして。
「え………?何で私を囲んでるのよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」
隠してても直ぐにバレるので今正直に言います、私重度の先端恐怖症なんです。シャープペンの先とか書類の角ですら目の前に持ってこられるとすごく怖いんです!はい、だから…だから助けてください神様仏様ぁああああぁああああぁああああぁああああ!!!